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    COMOYAMA

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    COMOYAMA

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    はだかのべ様があらわれた!

    ##小説

    窓から陽が差し込む中、湯船に浸かる。

    「うわー気持ちいい」

    ソロモンの大きなひとりごとが響く。ゆうべ遅くにアジトに戻り、先ほどのそのそ起きだして、石造りの浴槽に自分で湯をためた。なんだか一人暮らしをしていた頃を思い出す。あのときは仕事帰りに川で適当に水浴びして済ませたりもしたな、なんてのんびりしていると、

    「テメェ、起きてこねえと思ったら。朝風呂とは良い身分じゃねえか」

    ぎょっとした。目隠しのカーテンの向こうに人影があった。

    「ゆうべ遅かったから。ゆっくりしたいんだよ」

    不機嫌な声色に、今すぐカーテンをめくられるのではと身構えたが、人影はふんと鼻を鳴らして離れていった。様子を見に来ただけか、とホッとしたのも束の間。

    「俺様も入るぞ」
    「えっ?」
    「テメェが背中流せ」
    「はあ?!」

    カーテンが乱暴にめくられ、裸のベリトが現れた。どぼんと飛沫が上がり、わはは、と湯気の中でこの大人は楽しそうだ。

    「待てって!ほんとに意味がわからないんだけど!」
    「何がだよ」
    「俺はゆっくりしたいって言ったろ!」
    「聞いたぜ」
    「聞いてそれ?!」

    ベリトの横暴ぶりには慣れている方だと思っていたが、今回ばかりは頭が痛かった。うなだれるソロモンをよそに、ベリトは窓の方を向いてくつろいでいる。悪くねえ、とご機嫌だ。

    「ほらはやくしろ」
    「わかったって…」

    (まあ、あっち、向いてるなら…)

    布を絞って、言われるままに目の前の背中を拭う。早く済ませて先に出てしまおう…そんな考えを見透かされないように、落ち着いて仕事をこなした。どうか終わるまで振り向かないでほしかった。


    『テメェは夜見づれえ』


    そう言われたのは数日前の夜だった。小さな明かりがあっても、ベリトと触れ合うときはいつもお互い手探りに近いような状態だ。ベリトの温かな指や手のひらの感触が体中に曲線を描くのは、今思えばこの刺青を辿ろうとしていたのかも知れない。

    気が付かなければよかった、と思ったときには遅かった。考えないようにすればするほど鼓動が速くなって手が震え出す。こんなになっているのを見つかりたくない。これ以上ベリトの背中に触れていられなくて、後で何か言われても良い、逃げてしまおう、と腰を上げようとしたが、

    (…。あれ?)

    なんだか上手くいかない。頭がぼうっとしてきて、まぶたも重い。

    (いけない、のぼせたかも)

    視界が狭くなって完全に閉じられる直前、バシャッと水音がして、気がつけばベリトの顔が目の前にあった。

    「うわ!」
    「勝手に気失ってんじゃねえ」

    こっちを見ているどころか、しっかりと横抱きにされていた。浮いている自分の体に驚いて肩にしがみつくと、肌を通じてほのかに熱が逃げていくのを感じた。少し濡れた青い髪が頬に触れる。

    「世話の焼ける奴だぜ」
    「だ、大丈夫だから下ろしてくれ」

    石の縁に腰掛けるように降ろされ、ソロモンは足だけ湯に浸けている状態になった。不安げに目をぱちぱちさせて、足元に屈むベリトを見ている。

    「もう平気だから」
    「ふーん」
    「ベリト…?」

    ソロモンの片方のかかとを掴んで、伏し目がちに左右から眺める。美術品を手にしているとき、ベリトはよくそんな仕草をする。明るいところで足を出すことなんてあまりないから、刺青で真っ黒なのが珍しいのだろう。されるがままにしていると、今度は足首に歯を立てて噛み付いてきた。

    「な、何してるんだよ」
    「動くんじゃねえよ、もっとよく見せやがれ」

    この感触には覚えがあったが、光景を目の当たりにするのは初めてだった。甘噛みの次は、刺青にそって何度も口づけされ、開かれた口から舌が覗くと、思わずびくんと体が跳ねた。

    「わっ…くすぐったいって…!」

    ぬるぬるが足の指の間まで這いはじめ、涙声で反抗しても、掴まれた足はびくともしない。飽きれば開放されるだろうなんて考えは甘いことを思い知らされる。

    「これ、フォトンの流れが焼き付いた印なんだってな」
    「あ、あぁ…」
    「つまり、これが浮かんでる部分は敏感ってことだ」

    ベリトに触れられている部分がやけに熱くて、じりじりと痺れてくる。それは毒のように、足先から腿、腹へとゾクゾクとせり上がってきて、ソロモンの息づかいをどんどん荒くさせた。

    (これもう…刺青どうこう…関係ない…!)

    必死で声を抑えるソロモンに、とどめのようにベリトが覆いかぶさる。足を開かせて優しく両腕を掴み、真っ赤な頬を流れる涙も舐めとっていく。

    「俺様がどうしたいか分かるな?」

    返事を待たずに唇に触れられる。

    「はぁ…、見つかった時点で、俺の負けだった」
    「早起きはなんとかの得だな」

    ベリトは笑い、つられて笑ったソロモンも観念したように力を抜いた。確かめ合う行為は、湯が冷めてしまっても続いた。
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