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    Elisabethg0328

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    Elisabethg0328

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    ② 仔犬リが枝拾ってはしゃいだら池に落ちたはなし(ヌヴィリオ)

    注意:なんでも許せる方向け
      :ほぼ現パロ

    普段リはいつもの成犬な彼だけどたまにこうして物理的に仔犬になってしまう、というわんこのリの設定。
    ヌさんはこの世界でも審判官だし人じゃ無い。

    いぬかきのこいぬ「ちょっとそこまで」
     そう言って出て行ったリオセスリが戻らない。
     とはいえ時間でいえばまだほんの一時間ほどしか経っていない。ヌヴィレットの執務机の上には殆ど書類は残って居らず、アフタヌーンティーまでに戻る筈の仔犬が帰らない。とはいえ、こちらもあと一時間ほどあるのだが。
     彼が側にいないのは落ち着かない。いくら普段は成犬でも、今だけは仔犬になっているのだ。心配しても仕方が無いだろう。ゆっくり席を立ち上がり、いつもなら彼が昼寝をしているはずの窓の側を見た。それから窓を開けて、テラスへと出る。
     静かな場所で過ごしたいために、広大な土地を所持しているヌヴィレットの見渡す場所殆どが彼の敷地内だ。適度な運動が出来るようにと広く走り回れる土地で、殆ど人と関わらない自然を選んだ。以前、リオセスリを引き取って暫くした頃に家へ強盗が入った事がある。ヌヴィレットを守るために彼が怪我をしたことで、引っ越すことを決めたのだ。セキュリティーが以前とは比べものにならないくらい今は厳しい。何人たりともこの土地へは勝手に足を踏み入れることができないように手配した。安全な箱庭。他者から見れば檻のようにも見えるかもしれない。故に、使わず貯め込んだ金をこういうときに使うべきでは? とかなりの額を入れて買い取った土地だった。お陰で仕事へ行くには少々遠いが、ヌヴィレットは現状とても満足していた。
     森の入り口に、小さな後ろ姿が見えた。機嫌良さそうに尻尾を振って、流れる小川を眺めているらしい。さらさらと流れる川は小さく浅いため、入っても彼の膝ほどしかない。時々手を入れては振って、また手を入れては水を払うように手を振っている。何かを掴もうとしているのか、それともただ手を入れて遊んでいるだけなのかは分からないが、本人は楽しそうだった。
     それから立ち上がり、小川を飛び越える。落ちていた枝を拾い上げては落とし、拾っては落とす。何度か繰り返してぴんと真っ直ぐ伸びた枝を拾った。先が二股に分かれていてそれをくるくる回した。どうやらお眼鏡に適ったらしい。それを持ってまた小川を飛び越えこちらへと戻り、火の光の下へ出てくる。てってって、と効果音でもつきそうな小さな歩幅で走って今度は池の前で止まった。池を囲うように積まれた石の上に乗って、一つ一つ飛び越えて池の周りをぐるぐると回っている。
     器用に走るものだと、彼の運動神経の良さはこの頃からかとヌヴィレットが眺めていれば、ずるりとリオセスリが足を滑らせたのが見えた。
     ばちゃん! と音を立てて池へ落ちるのと、二階テラスからヌヴィレットが飛び降りるのはほぼ同時だった。普通の人間であればやらないだろうが、ヌヴィレットは躊躇いなく下りて難なく着地する。
    「リオセスリ殿!」
     仔犬が落ちた池へと駆け寄る。さほど深くない池だった筈だが、小川よりはずっと深い筈だ。それに、今のリオセスリでは足がつかないだろう。落ちて沈んで、浮き上がってきたリオセスリは仔犬の姿でぱちゃぱちゃと器用に泳いで陸へと上がった。
    「わう」
     ひとつ鳴き声を上げてぶるぶると身体を震わす。水滴がヌヴィレットへ飛んだが、ヌヴィレットがそれを気にした様子は無い。
    「リオセスリ殿、怪我はしていないだろうか」
     心配そうに覗き込むヌヴィレットを見てひとつ首を傾げ、仔犬から人の姿に変わる。
    「おちただけだから、へいき」
    「本当に? ぶつけたり、擦りむいたりしていないか?」
    「どこもなんとも……あ」
    「? やはりどこか怪我を」
     小さな両手を見て、広げたり握ったりして尻尾と耳がしょんぼりとするようにしな垂れた。
    「木、おとしちゃった」
     ヌヴィレットさんみたいにかっこいい木だった、と落ち込む仔犬にヌヴィレットはほっと息を吐いた。それから濡れて冷えてしまいそうな身体を抱き上げて、優しい声でリオセスリを呼んだ。
    「また探せば良い。今度は私も一緒に行ってもいいだろうか」
    「ぬびれっとさんも?」
    「うむ。私にも枝を選んでほしい」
    「、うん!」
     耳がぴんと立って尻尾が揺れる。ついでに足もばたつかせて、今地面へ下ろせば走り出してしまいそうだった。機嫌の戻った仔犬の鼻先にひとつ口付けて、「だが」と言葉を続けた。
    「もうすぐアフタヌーンティーの時間ゆえ、今度にしよう。濡れた身体を乾かさねばまた風邪を引いてしまう」
    「ン」
     ばたついていたリオセスリの足が止まり、大人しくヌヴィレットの服を掴もうとして躊躇う。あ、と小さく声を漏らして濡れた彼自身を見た。
    「先に、共に風呂へ行こう。たまには、明るいうちに入るのも悪くない」
    「うん」
     そう声をかければ、躊躇ったリオセスリがヌヴィレットの服を掴む。それから肩へすりすりと頬を寄せた。ぱたぱたと尻尾を振って、歩くヌヴィレットの足へと当たる。
     玄関のドアを開けて邸宅へと入り、がちゃりとヌヴィレットは鍵を閉めた。

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