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    Elisabethg0328

    @Elisabethg0328

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    Elisabethg0328

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    書き終わらずに続きが思い出せなくなったメイドのリとショタヌさんのパロ

    メイドパロ「君たちの目的は?」

     少年が問いかける。
     美しい銀糸の髪が散らばり、小綺麗な服は薄く汚れてしまっている。
     両手を後ろで縛られて転がされているというのに、それを気にしていない様子を見せた少年に男達は戸惑った。戸惑う、というよりは気味悪がったと言った方が正しいのだろう。
    「お前、この状況を分かっているのか?」
    「君たちに捕らえられている、というのは理解しているつもりだが目的が理解出来ないゆえ……」
     転がったまま首を傾げる少年に男の顔が引きつる。
     少年の表情に怯えも恐怖も無く、純粋な問いかけは少し異常だ。年端もいかない少年にしては酷く落ち着いている。例え慣れていたとしても、こんなにも死に怯えない事があるだろうか。男の手には拳銃が握られているし、狭い部屋の入り口に立つ男の腰にはナイフが携えられている。いつ殺されるかも分からない状況の筈なのに、この子供は一体全体どうしてこんなに平然で居られる?
    「悪いがうちのボスはお前のおとうさんに会いたいのさ」
    「……おとうさん?」
    「この国の最高審判官殿に少しとばかり話があるらしい」
    「ふむ……」
     少年が先ほどより理解出来ないといった表情を見せた。それから興味を失ったのか、はたまた諦めたのか男から視線を外す。
     部屋の中には男が三人。いずれも体格がそれなりに良く、鍛えられている事は一目で分かった。元傭兵か何かだろう。ぼうっとしているように見えて隙も無いが、仲間内で無駄話をしている所を見る限り多少の油断はあるらしい。
     昨日抱いた女はどうだった、あれは、と盛り上がる中で雑音が混じる。少年が顔を上げてじっと入り口を見つめた。ドアは変哲も無く、男達も変わった様子は無い。身体を少しだけ起こし、ずりずりと芋虫のように部屋の隅へと移動する。流石に少年のその行動に男達の視線が集まったが、ようやく恐怖を感じ始めたのかと一人はにたりと笑い、一人は鼻で嗤い、もう一人は興味無さそうに視線を外した。
     小さく身体を丸めて膝に顔を埋めれば、薄く汚れた銀糸が揺れて顔を隠した。
     
     ガシャン。

     機械の重なり擦れる音がして部屋の中に緊張が走る。
     部屋の外から不穏な音が聞こえ、全員が武器を手にした。
     ガシャン、ガシャン。
     ガシャン。
     
     ガシャン。

     音が止む。
     ドアの前で、ドアの向こう側で音が無くなる。声を殺し、通信を試みたが返事は無い。この建物内で待機している男の仲間は何人も居るはずなのに、誰の声もしない。銃声も悲鳴も無かったのに、誰の声もしない通信機はまるで壊れてしまったかのようだった。
     男達が目配せをして合図する。その瞬間、ドアが轟音を立てて吹き飛んだ。木の破片、ネジ、埃を舞わせて、吹き飛んだドアに反応が遅れたのは彼らの腕が、勘が鈍っていた証左だ。先ほどまで少年が居た場所へ壊れたドアが当たって砕ける。それと同時にドアの前に居た男が床へと叩き付けられた。
     グシャ、とめり込み潰れるような音がしてもう一人が壁に吹っ飛ばされる。コンクリートの砕けるような音がして黒い影が動く。
    「な、んっ」
     咄嗟に少年を人質に使おうなどと考えは浮かばなかった。窓の無い部屋で突然入って来た者が少年の関係者だと判断が遅れてしまったのだ。慌てて撃った弾は当たる事無く壁に当たり、黒い影に距離を詰められる。銃を持つ手に衝撃を感じ、あまりの痛みに銃を手放してしまった。はっとして失態に気づいた時には時既に遅く、首を掴まれて身体が宙に浮いた。

    「雇い主は誰だ」

     低く、恐ろしい声が部屋に響く。背筋が凍るような声に引きつった声が出た。
    「大人しく答えた方がいい。今日の俺はあまり気が長くなくてね」
     首から骨の軋む音がして呼吸が出来なくなる。黒い影の正体はメイドだった。随分背が高く、体格のいい……メイド? 一気に理解が追いつかなくなる。目元に傷があり、端正な面立ちをしているメイドは大凡常人ではあり得ない握力と腕力で男達をねじ伏せたのだ。氷の瞳が酷く恐ろしい。その左手にはメイドとして似合うはずの無いナックルを装備している。機械の重なる音がしていたのはそれの音なのだろう。首を掴み上げる手にはそれがない。このメイドは何の補助も無く大の大人、男一人を持ち上げている。

    「リオセスリ殿」

     少年の声にぴくりと反応してメイドの視線が男から外れた。掠れる視界の中で部屋の隅で縮こまっていた少年が顔を上げていた。
    「無事かい? ヌヴィレットさん」
    「膝を少し擦った程度だ。問題ない」
    「ひざを……?」
     リオセスリの視線が少し下がる。少し擦った、と言った膝は赤くなり、血こそ出ていないものの皮が少し剥けていた。ミシ、と右手に力が入って男の呻き声がする。それに、メイドから出た少年の名前は、男達のボスが交渉したい者の名前だった。
    「リオセスリ殿、腕が……痛い」
     小さな身体をよじり、リオセスリを見上げる。その視線にはっとして掴んでいた男をテーブルへと叩き付けた。テーブルが真っ二つに割れてその衝撃に男の意識が一瞬飛びかける。脳が揺さぶられ、ようやく呼吸ができるようになった身体が叩き付けられて上手く呼吸も、起き上がることもできない。
    「悪い、ヌヴィレットさん。今自由にしてやるから」
     リオセスリがヌヴィレットの両手を縛る紐を解く。縛られていた手首は赤くなり、少し痛々しくなっていてリオセスリが顔を歪ませた。服や銀糸が砂埃で汚れていて丁寧な扱いを受けなかったことが分かった。幼い身体を抱き上げて転がっていた椅子を正しく立てる。優しく座らせて、転がったまま呻き声を上げる男へと視線を戻した。
    「リオセスリ殿、彼は私に用があるらしい。正確に言えば彼らの指示者が、ではあるが」
    「ほぉ」
     ぱき、とリオセスリが踏んだテーブルの破片が音を立てる。
    「ひ」
    「ヌヴィレットさん、どうする? あんたの指示に従うが」
    「……特巡隊に、任せるとしよう。予定の時刻を既に過ぎている。君がひと暴れしてくれたお陰で、彼らはすぐ此処へ来るだろう」
     
    「そうかい、じゃあこいつにはちょいと寝てて貰おう、な」


     ▽


     男を拳で沈めた後すぐに駆けつけたのはシュヴルーズたちだった。事情を説明して早々に帰らせて貰い、今はヌヴィレットの私邸へ帰ってきていた。
     シュヴルーズはヌヴィレットとリオセスリの事情を大まかに知っている。
     長年最高審判官を務めているヌヴィレットがどうして少年の姿をしているのか。もちろんシュヴルーズ以外、一部の者にも事情を説明してあるのだが。
     
     ヌヴィレットが少年の姿をしている理由は、リオセスリと眷属契約をしたからだ。本来であれば力の一部をヌヴィレットから分け与えられるだけだった筈が、加減を間違えたらしくごっそりリオセスリへと渡してしまったらしい。分け与えたヌヴィレットの身体は縮み、分け与えられたリオセスリは一週間ほど寝込んでシグウィンの世話になった。うっかり生死を彷徨ったのはここだけの話である。
     今はゆっくり力を返している最中で、本来の姿に戻れるようになってきたのだが省エネ、と称して少年の姿のままでいる。普段は少年のまま、審判の時だけ本来の姿に戻る為か最近では子供がいると勘違いされているらしい。だから今日のような誘拐事件に巻き込まれるのだ。
     
     帰宅して抱えていたヌヴィレットをソファーへと降ろす。膝を擦りむいたと言っていたのを思い出し、跪いて確認する。密かにお風呂で染みそうだと思っていた擦り傷はもう既に完治していてリオセスリは息を吐いた。
    「リオセスリ殿、怪我は?」
    「問題ない、あの程度の連中に遅れを取るとでも?」
    「いや、その点に関しては心配していない。だが……、それは?」
    「……それ?」
     指をさされた場所へ視線を落とせばスカートが裂けていて、じんわりと血も滲んでいる。何処かで引っかけたのだろうか。しまった、と思いながらなんとか誤魔化す方法を探すが、ヌヴィレットを欺けるとは思えなかった。
    「スカートを上げて見せてほしい」
    「たいしたことない」
    「リオセスリ殿」
     咎めるような声に逆らえなくなる。びくりと身体が震えて、躊躇いながらスカートを掴んだ。ゆっくり、ゆっくり布をたくし上げていけばブーツが露わになり、そのまま古傷のある足があらわになった。
     一本、既に傷は塞がっていたが線がついている。それから、真新しい血も付着していた。
    「ヌヴィレットさん、」
     視線が怖くて、顔を伏せたままリオセスリが名前を呼んだ。これは、ほんとうに、平気で、と言い訳を述べる間もなくヌヴィレットが言葉を発した。
    「だめだ」
     はっきりとした、冷たく、強い言葉に言葉を噤む。

    「ゆるさない」

     審判の時に、ヌヴィレットはいつもの、最高審判官としての姿になる。誰もが知っている、この国の上に立つひとの姿に。だから殆どの人は、彼が今こんな幼い姿になっているとは知らないのだ。そして、こんなに意地悪なんてコトも。

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    Elisabethg0328

    DOODLE② 仔犬リが枝拾ってはしゃいだら池に落ちたはなし(ヌヴィリオ)

    注意:なんでも許せる方向け
      :ほぼ現パロ

    普段リはいつもの成犬な彼だけどたまにこうして物理的に仔犬になってしまう、というわんこのリの設定。
    ヌさんはこの世界でも審判官だし人じゃ無い。
    いぬかきのこいぬ「ちょっとそこまで」
     そう言って出て行ったリオセスリが戻らない。
     とはいえ時間でいえばまだほんの一時間ほどしか経っていない。ヌヴィレットの執務机の上には殆ど書類は残って居らず、アフタヌーンティーまでに戻る筈の仔犬が帰らない。とはいえ、こちらもあと一時間ほどあるのだが。
     彼が側にいないのは落ち着かない。いくら普段は成犬でも、今だけは仔犬になっているのだ。心配しても仕方が無いだろう。ゆっくり席を立ち上がり、いつもなら彼が昼寝をしているはずの窓の側を見た。それから窓を開けて、テラスへと出る。
     静かな場所で過ごしたいために、広大な土地を所持しているヌヴィレットの見渡す場所殆どが彼の敷地内だ。適度な運動が出来るようにと広く走り回れる土地で、殆ど人と関わらない自然を選んだ。以前、リオセスリを引き取って暫くした頃に家へ強盗が入った事がある。ヌヴィレットを守るために彼が怪我をしたことで、引っ越すことを決めたのだ。セキュリティーが以前とは比べものにならないくらい今は厳しい。何人たりともこの土地へは勝手に足を踏み入れることができないように手配した。安全な箱庭。他者から見れば檻のようにも見えるかもしれない。故に、使わず貯め込んだ金をこういうときに使うべきでは? とかなりの額を入れて買い取った土地だった。お陰で仕事へ行くには少々遠いが、ヌヴィレットは現状とても満足していた。
    2025