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    sakura9sakurar

    @sakura9sakurar
    ■ワンクッション置きたいものを置く場所でしたが23年7月から全部乗せる場所になりました
    ■絵文字ありがとうございます めちゃくちゃ非常に嬉しいです

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    sakura9sakurar

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    ・漫画版ズウィユディ 「1巻までの知識で読める」を目指しました
    ・本編開始前の時間軸、過去捏造なれそめ捏造本
    └ズが武装組織の襲撃で家族を失った孤児、ユが特異体質を理由に士官学校に半強制的に放り込まれた貧民という設定があります
    └ベ星が戦争に介入して戦争を終わらせることを目的とした機関という設定があります
    ・残虐描写、グロデスク描写、加害・被害・若干いじめ描写を含みます 甘くないです

    【2024/05/04新刊】Sorrows【本文サンプル】 ベルギャー星は、他の星から「弱きを助く剣」と称えられ、その一方では「星を挙げた戦争屋」とも揶揄されていた。

     異なる星同士の、「宇宙戦争」と呼ばれる争いは、つまるところ異なる常識同士の押し付け合いだった。
     何万光年も離れた星々の間において、常識の物差しが一定であることは殆どあり得ない。停戦の勧告を受け入れる常識のない星も、疲弊したら戦いを止めるということができない星も存在している。勝った、あるいは負けたの明確な線引きは宇宙間の戦争には存在しない。
     だからこそ、どちらかが完全に戦闘を続けることができなくなるまで繰り広げられ続ける。どちらかの星が根絶やしになり、殺す対象も墓を作るものも居なくなるまで。
     最大公約数の勝利条件とは、そういうものだ。
     そのような陰惨な戦争がいくつも数多の星々で繰り返された末に、歴史の転換点が生じた。
     「根絶やしにするため」ではなく、「戦いを止めるため」に軍事介入を始める第三者の機関というものが発生し始めたのだ。
     襲撃された側を救助する。一方の星に運び込まれた大型の軍事用兵器を破壊する。戦士たちの戦闘を不可能にする……具体的には、拘束。必要ならば手を折り、同じく足を折り、最終的には戦意そのものを挫く。しかしながら、すすんで殺傷という手段を取るべきではない、というのは彼ら軍事介入機関の矜持だった。
     ベルギャー星は、その、宇宙戦争の終結を目的として軍事介入に名乗りを上げた第三者の機関の一つだった。
     かねてより豊富な軍事資源と技術を有していたその星は、戦いのための部隊機関、及びそこに投入する人材の教育機関を発展させた。
     当初こそ何らかの裏があるにちがいない、或いは莫大な見返りを求めてのものにちがいないと見なされていた。
     だが、ある時は危険きわまる戦地に生身で切り込み、またある時は瓦礫を押しのけながら辛くも瓦礫の下で虐殺を免れていた生存者を救出してきた戦士たちの評判が方々で上がっていくことで、次第に機関は評価を集めていった。
     勿論、それがいい評価のみとは限らない。一部の星からは、なまじ力を持つばかりに喧嘩両成敗を貫くのは戦争を長引かせるだけであると非難されてはいたが、それでも彼らがいればこそ救われた命はこの宇宙に数えきれなかった。そして、戦士当人たちが望んだか否かを問わず、その救われた命の分だけ彼らの働きは次第に支持されていった。

     ある時のベルギャーの戦士達の戦場は、本拠地ベルギャー星からこれまた遠く離れた辺境の星だった。
     森林と農村が大部分を占めるその星は、他の星との交流はといえば、農作物の輸出と保存食品の輸入がせいぜいだ。可住面積も広いとは言えず、同様に人の住む場所もささやかなものだ。たとえるところ、戦争に無縁でしかない農村だ。だが、そうであるがために新興の武装組織に狙われた。表立った政治的な後ろ盾を持たず、有力な自己防衛手段も持ち合わせていない。一方、武装組織が求めるものは戦い続けるための物資、そして拠点だ。つまるところ、隠れ蓑としてこの地はあまりに適し過ぎていたのだ。
     他星団も巻き込んだ大きな戦争ならまだしも、このような小規模な小競り合いであれば、それこそベルギャーをはじめとした第三者機関による軍事介入の手も入りにくい。さらに、武装組織はベルギャー星からの追手を第一に警戒していたらしく、彼らが他の大規模作戦に投入されている間を狙って件の星に襲撃を掛けたのだ。
     大回りでこの田舎星に向かった時には、既にそののどかだったであろう風景は見る影もなく赤々と燃えていた。数少ない民家、そして小さな市場町は場違いなほどに明るすぎるともしびをくべられている。――彼ら外から来たものは知る由もなかったが、そもそも日が落ちて数時間でこの市場は眠りにつく。この市場の商店は民家と一体になっているものがいまだに多い。店主もその家族も眠りについていた中を、襲撃されたのだ。
     店の外から、赤黒い飛沫が地面を黒く濡らしている。品物は飛び散り、乱雑に転がっていた。そして、あきらかに品物ですらないものも時折道端に転がされている。ヒトの死体。寝巻のヒトのそれだ。
     そのおぞましさすら、戦場での暮らしが長い彼らにとってはありふれた光景でしかなかった。感傷を抱くよりも先に、今いる生存者の発見及び救出と、実行犯の拘束。そのように切り替える癖が誰しもついてしまっていた。
     火災の延焼対策を消火班に任せ、真っ白い戦闘服に身を包み、顔を口回り以外すべてマスクで隠した戦士たちは、そのまま市場通りを通り過ぎて郊外へと足を運んだ。
     郊外は大きな家が一つ、荒らされた形跡はないが、家の持ち主が慌てて逃げだしたようで靴や玄関が乱雑に荒れ果てていた。つづいて、その郊外邸宅の裏の森に、人の通った形跡はあるが、先ほどのような火災は発生していない。代わりに、若い男と同じ年代のように見える女、老人の死体が順番に点々と転がっていた。
     どうやら、武装組織が選んだのは目先の資金繰りではなく、この星に住まう罪のない先住民すべての虐殺だったようだ。……森の地面はややぬかるんでいて、そのおかげで老人を通り過ぎてさらに森の奥へ進むような足跡がはっきりと見えた。まだ、彼ら三人の家族がこの奥に逃げ込んで、恐らくどこかに居るのかもしれない。

     白い軍服の大人たちが目にしたものは、まだ幼いように見える金髪の少年だった。……正しくは、金髪の少年が、この戦いを引き起こした武装組織のひとり、その大の大人の手のひらを、ナイフで串刺しにするようにして垂直に地面に縫い付けている。
     そのうえで、手にした身の丈に合わない、大人が扱うような刀で、仰向けの体を切り刻みつくした姿だった。被害者の服は確かに件の武装組織が武力抗争時に使っている防刃チョッキだが、その顔は直視すら難しいほどに切り裂かれ、原形をとどめていない。
     それに、すでに固まり始めた大量の血が、刀にも少年にも、地面と一つになってしまったそれらにもべったりとこびりついている。その血で汚された少年の髪は、赤にも茶にも黒にも見えてしまうようだった。つまり、そのくらいの血を浴びるようなことが起こったということで。
     いかに、数々の戦場に送り込まれてはその争いを終結へ導いてきたベルギャー星直轄の戦争介入機関の人間と言えど、この光景には思わず動きを止めた。
     目の前に居るのは、奇跡的にもこの大虐殺を生き延びることができた小さな子供だ。 
     それは、これ以上なく喜ばしい事であるはずなのに、誰も、「大丈夫か」とも、「もう怖い思いをしないで済むぞ」とも発することができなかった。その言葉は、守られる立場の者に掛けられるべきものだ。
     では、この目の前にいる少年は、果たして。この過剰なまでの傷を敵にもたらしたものは、異常な存在は、果たして、守っていい存在なのか。

    「……どうして、」

     戦士たちが戸惑っていた一瞬、その間を切り抜いたように目の前の少年が一言、ぽつりとつぶやいた。そうして何かを言いかけた瞬間、血のこびりついた死体の上に、彼の体が急激に支えをなくして崩れた。
     いかに異様な光景、それを作り出した張本人とはいえ、その体は小さくいまだ発達途上だ。疲労は限界に達していたらしい。
     ――どうして。その言葉の先、彼が何を言いたかったのか。想像に難くなかった。大人たちはみな、言葉を失う。
     夫婦と老人が一人、ここに来るまでの道中で惨たらしく殺されていたのだ。子供が一人この山中まで迷い込んでしまったというより、一家族での逃走すらも許されなかったという方が自然な見え方というものだ。
     この狂気のような殺傷の跡が物語るものは、理不尽への報復だった。一夜にして家も故郷も奪われたという理不尽への報復。

     あの、見たこともないような明るくおおきな、禍々しいともしび。全てが燃えていく夜を、少年は今でも覚えている。
     十数年月日が流れ、あの惨劇がこの広い宇宙ではさして珍しくもないということを知ってしまってなお、しっかりと、心の深い奥底からその在り方を濁らせている。





    「聞いたか?この士官学校の特別講師だってよ」
    「ああ、あの新しい隊長だろ?学校卒業して二年しか経ってない筈なのにもう隊長ってのも凄いけど、行政から特別講師の指名だなんて……」

     騒がしいのは苦手だ。
     それだけではなく、無秩序かつ人を値踏みするかのような会話がそこかしこで飛び交うのが気に食わない。同じ騒がしさなら、戦場の阿鼻叫喚の方がよほど落ち着けるというものだ。
     目の前に平和そのもののような光景があるのにもかかわらず戦場を思ってしまうのは、命を奪う側ではなく助ける側であるという立場の上でよろしくないのだろう。しかし、二年ぶりにこの士官学校に戻ってきたズウィージョウにとっては、事実としてここは落ち着かないのだから困りものだった。
     表情の死んだ顔とただただ早々と通り過ぎるためだけの大股早歩きで、校舎の長い渡り廊下を通り過ぎようとすれば、すれ違う生徒たちは少しばかり顔をしかめ、あるいはぎょっとしたような顔を見せる。
     将来戦場に立つはずの隊長候補たちがこれとは情けないにもほどがある。そう言わんばかりに、ズウィージョウが通り過ぎざまに舌打ちすると、「ひぃっ……」という、これまたなんとも情けない声がにわかに上がった。

     直近の大規模宇宙戦争から帰還したズウィージョウたちを迎え入れたのは、「短期で生徒の実技講習を担当してほしい」という士官学校からの依頼だった。
     第一線で今なお戦い続けている現役の戦士たちが短期、およそ一週間弱とはいえ、士官学校の講師役を担当するというのは、ベルギャー星では実際のところ珍しくはない。実働可能の戦士が多少抜けたところで、その穴を埋められるような、そんな圧倒的な層の厚さがこの機関には存在する。
     そう、別段物珍しいものではないのだ。それなのに、生徒どころか教官、果ては食堂の料理人たち、そして守衛に至るまでが、いつになくどこかそわそわと色めきながらその講師役の話をしている。
     ――まるで、初めて高品質な新しい仕掛けのおもちゃを目にしたかのようだ。そう思えてしまえばこそ、ズウィージョウはいっそう眉をしかめる。が、幸か不幸か、それに気づくものは誰一人としていなかった。元々気難しい顔をしているということも無論ある。が、彼の長く分厚い金の髪は、当人が思う以上に表情も眉間の皺も遠目からは見えなくしてしまうものだった。
     かつての学び舎だろうと言われてしまえばその通りなのだが、こうも好き勝手に噂話をされるのはどうにも居心地が悪い。誰だってそうだろう。誰が聞いているわけでもなく、ズウィージョウは心の中で反論を唱える。

    「……しかも、あのズウィージョウ……さん、だろう?おっかないって有名だぜ。それに……」
    「ああ、この士官学校を出たって聞くけど、もともと正規の入学者じゃないらしい。それも、ベルギャー星じゃなくて、どこかの遠い田舎の生まれだって……」

     居心地が悪い。騒がしい。不愉快だ。
     それは、何も自分の陰口で持ち切りになっているからでもなく、あこがれも親しみも感じられないような声色で自分を語る見ず知らずの声が聞こえるからでもない。それは、ただ心が少し冷えていくだけであって、ざわざわとした不愉快には結び付かない。落ち着かない心の原因にはなりえない。
    「怖い人だけど、かわいそうな人だよな。俺なら耐えられないよ」
    「そうだなあ。噂だけど、」
     耳を塞いでしまいたい。その先は聞きたくない。足音がうるさい。誰の足音か。考えたくもない。
    「当時の武装組織に家族も故郷も全部やられちまって、唯一の生き残りなんだろう?」
     瞬間、どのような鋭く重い斬撃よりもすさまじい痛みを感じたような気がした。
     さりとて、言葉で人の体に裂傷は生まれない。そんな気がした、だけに過ぎないし、これは過剰反応というものだ。そう、言い聞かせた。
     自分の足音がうるさいと感じるのは、無意識のもとで足音を立てているからだ。そのように気づいたのは、その言葉を認識してしまって少し後のことだった。
     憐れまれるくらいなら、噂は噂だと笑い飛ばしていてほしかった。ズウィージョウは、にらみつけてやりたい衝動をひとたび抑えると、口を引き結びそのまま無言で噂好きの男たちの横を通り過ぎた。……横目で一瞬だけみやれば、自分などよりどう贔屓目に見ても年若い輩だった。士官学校の生徒なのだからそうだろうが、それを見ると同時に、こんな子供たちに何を本気になることがあろうか、と、先の不愉快も霧散してしまった。
     年の違いだけで言えば大目に見ても三、四歳差なのだろう。士官学校に通う生徒は年齢の上限こそあれ、誤差というものだ。だが、学校の中に居るものとその外を駆けずり回っている己とでは、見えている世界が違い過ぎる。それこそ、「かつての自分」――あの農園で、家族と共にささやかな営みを為していた頃の自分が、宇宙戦争、抗争、あるいは……あの時体験したような、一方的な虐殺など、想像しえなかったし、どこか遠いものとして見なしてきたように。

     とにかく、他者の言動に起因する、他者への怒りというものがあったとして。それを発露の前に咀嚼して、自分の中で消化させてしまうことは確かによい事だ。
     それなのに、何故か、ズウィージョウの心の底には息苦しいなにかが息づき、そのまま自身の喉からおそろしいものが這い出てしまうかのように感じられた。

     これから午後の座学授業なのだろう。本館棟の講義室に子供たちがまばらに入っていくのが見える。空に昇っている陽の光は高らかで、天気もそれに見合ったかのような晴れやかさだった。それなのに、彼の心境はずっと、騒がしく得体のしれない嵐か、竜巻のようなものが騒ぎ立てているかのようにごうごうとざわつき続けていた。

     本館棟からの渡り廊下の先に配置されている訓練棟は、大きく分かれて三つのエリアに分かれている。基本的な身体能力の訓練を行う室内、障害物・遮蔽物を加味した集団戦のシミュレーションを行う野外、射撃訓練棟だ。ズウィージョウが今回請け負うのは野外の実技シミュレーションだ。非対称の集団戦を見て、そこから実践経験者という視点からのアドバイスを士官学校の責任者からは求められている。
     とはいえ、士官学校の修了とともに初めての戦場を経験し、そこからたかだか二年経ったに過ぎないような若輩の戦士だ。歴戦のそれと言うには経験という点でまだまだ他の先達には劣るということは、ズウィージョウ自身が理解するところではある。だが、その期間ほぼすべてを戦場に身を置き、そして最前線で優れた成果を収めては五体満足の帰還を繰り返してきた。そんな彼を、将来有望な新進気鋭の将として一目置くものは決して少なくはない。今回、彼を野外シミュレーションの特別講師として呼び寄せた士官学校の責任者もその一角ということなのだろう。
     もっとも、ズウィージョウからしてみれば、そんなことに興味など持てるものではなかった。自身の評価など、気にしようものなら先のような陰口が最初に飛び込んでくる。生まれの話も数奇の目でもって食いつかれるのだから、いつしか自分の成果だけを見つめるようになっていった。
     成果だけは、自分を裏切らないし、それは評価より確かなものだった。

     シミュレーション開始まではまだ時間があるが、その準備のために野外訓練場に足を踏み入れる。かつてこの訓練場を使っていた身でもあるので、機材・用具の扱いなどの点では慣れたものではある。だが、授業のための雑務も同時にやらされるなど、元からこの学校に勤務している教官役のような扱いを受けているのはやや納得がいかない。とはいえ、士官学校は政府の庇護下にある教育機関のひとつだ。その要請を断るということは、おなじく政府直属の機関に身を置いている以上はあってはならないことなのだから、こうしてただただ不機嫌をどこかで発露させることなく燻ぶらせることしかできなかった。
     シミュレーション用の機材を運び出す途中、用具室前に足が自然に止まった。人の声が、それも複数人分奥から聞こえてきたからだ。
     ……本来、この時間帯に人はいない筈だ。ましてや、声色からして若い。生徒だろう。

    「……だから、それでは困ると言っている」
    「何言ってんだお前?困らせたいからやってんだろうが。やっぱり頭悪いよな、お前」
    「まあまあ、言ってやるなよ。俺らと比べたら、そりゃあ、ねえ?」
    「特別編入生、だもんな。幼稚園すら出てないような」
     四人分の男の声だ。それも、一人が三人に囲まれて、その状況で、何やらもめている。まだ実技授業の開始どころか集合時間ですらない。集合時間より一〇分以上前の生徒側の集合は認められていない筈なので、叱責するべきなのだろうが、どうも様子が穏やかではないことだけは明らかだった。
    「俺たちも鬼じゃないからさあ。今日のシミュレーション、おとなしく負けてくれっつってんの。これ、燃やされたくないだろ?」
     生徒の一人が、右手で鞄をまさぐったかと思えば、教本の端をつまむようにして持ち上げる。そして左手では、オイルライターを発火させて薄らと本を炙りかけていた。状況から察するに、男三人に囲まれた男子生徒のものなのだろう。
     とはいえ、生徒間の人間関係など教官側が解決するべき話であり、自分のような外部の人間がかかわる話ではない、というのが静観していたズウィージョウの見解だった。彼にとっては、四人まとめてシミュレーション準備の邪魔者でしかない。
    「話し合いをで埒があかぬのであれば、仕方ないな」
     退去を促そうと用務室の扉を開けようとした瞬間、今度は、囲まれた生徒の方が遮るように口を開く。
    「そもそも、人のものを無断で持ち出し燃やそうとするなど規則に反するだろう」
     そして、共通制服のジャケットを雑に脱ぎ置き、シャツの袖を緩やかに捲った。シミュレーション前には実際の戦闘において政府から採用されている素材の制服を別途に着用するので、制服はそれよりは多少は動きづらいということなのだろう。……つまりは、実力行使の宣言に近い。
    「返してもらうぞ」
    「素手でやろうってのか?」
     三人のうちの一人があざ笑う。見れば、小型のナイフを持っていた。
     一人だけでなく、もう一人もご丁寧にアイスピックを持参していたし、先ほどまで教本を燃やそうとしていた真ん中の一人に至っては小型のエアガンを持ち出してきている。いずれも、戦場とシミュレーターにおいては玩具未満の代物であることにかわりはない。だが、それゆえに棟内所持に関して厳重な規則規定が存在しない上にこのように平常の持ち込み持ち出しが可能な、それでいて人体程度なら簡単に傷つけることができる代物だ。
    「流石に、三人がかりでエモノありならこのバケモンにも勝てるだろ」
     真ん中の生徒が、仮にも他人のものである教本を、ふてぶてしくも乱雑に投げ捨てる。それを合図と見なした両側の男が襲い掛かる。
     数的有利と武器を頼りにしてか、ナイフを大振りに上からふりかざすのを見た傍観者は目を伏せた。……当たる、と思ったからではない。この時点で、勝負は決していると見えたからだ。
     アイスピックを手首から弾いてみぞおちに一撃、続いてナイフをかいくぐったかと思えば左からボディに一発。
     倒れこむ前に片手でだらりとした体を引き上げ、投げるときは両手で真正面に力任せに投げ込めば、持ち込んだエアガンも撃ちようがなく。
     元々、二人に抑え込ませた無防備の状態に対して撃つ算段だったのだろう、この時点で彼の戦術とやらは瓦解していたのだが。

     小競り合いを止めるような義理はないが、見るに堪えない茶番もこのあたりが潮時というものだろう。
     ズウィージョウはあらためて用具室の戸を開け、まるで今来ましたとでも言わんばかりにいつもの鋭利な目つきで見渡すようなそぶりを見せた。そうして声色低く「何をしている」とだけ問う。
     案の定、唯一のびてもおらず足が動かせる状況にいたエアガン持ちは、質問には答えられず「ごめんなさい、すみませんでした!」と早口で言葉だけの謝罪を繰り出した。そうして、そのまま彼らをすり抜けてその場を走り去ってしまった。
     あとに残されたのは、容赦ない打撃を受けてうずくまっている不良二人と、先ほどまでいじめを受けているようにしか見えなかった、唯一この場に立っている生徒、それとズウィージョウだ。
    「……分かっていると思うが、私闘も規律違反だ」
    「私闘ではない」
     生徒はジャケットを羽織り直しながら反論と共に振り返る。そこでようやく、ズウィージョウは彼の詳細な外見を認識するに至った。単に、先ほどまで興味がなかったのだ。
     くすんだ薄暗い用務室では、青空のような鮮やかな水色の髪が良く映えて、そこだけが浮いて見えるようだった。振り向きと同時に、大きく開いた裁断鋏の刃のような同じく水色の癖のある上部の毛束がわずかに揺れる。三白眼気味の瞳とシャツの上でもそれとわかる程度には鍛えられている筋肉質の上半身とで分かりにくいが、よく見てみれば顔つきはどこかまだ幼さを残している。
    「遊びだと言って来たのはそもそも向こうだぞ」
     真顔でそんなことをのたまったその少年を目の当たりにして、ズウィージョウの眉間の皺が一つ増えた。
     本気で言っているのかそうでないのか、判別がいまいちつかない。そんな印象の、よく分らない少年だった。





    「……それで、何故ああなった。分かっていると思うが、黙ったままでは帰さん」

     生徒間でいざこざがあろうが、数人が原因不明の怪我でシミュレーション参加が出来なかろうが、一人欠席者が出ようが彼らのためだけに貴重な実技シミュレーションを放棄するわけにはいかない。予定通りシミュレーション授業は行われ、上からの要請通りに無難なアドバイスを二、三言ほど出せば一応期待された仕事分は出来たと言っていいだろう。もとより、ズウィージョウは優秀な戦士であったかもしれないが優秀な教育者というわけではない。もしこれが教育熱心なそれであったならば、ことが起こる前に割ってでも仲裁に入り、例の四人をまとめて和解させようと務めたのだろうが、そんなことをしてくださいと言われた覚えはない。であるならそこは放っておく、というのが彼の方針だった。
     ただ、今回その方針によって割を食う羽目になったのは、何故か寄ってたかって一人を追い詰めていた三人の方だったのだが。あの調子では、少なくとも一週間、それこそズウィージョウがこの学校に滞在している間は訓練自体に来ることもないのだろう。
     重ねるが、生徒間で何があったかなどズウィージョウには全く関心の及ばない事象だ。だが、今後も今回のようなことがあっては本来の業務に差し支えがあるわけで、そこはそれとして原因の所在をはっきりさせておかなければならない。
     加害者側の三人は恐らくもう来ないだろうというのは、被害者だったはずの生徒からしたたかに反撃を受けた傷が深かったからではない。外部からの、それも将来の自分たちの上官になるかもしれない者に、後ろ暗いところと情けないところを見られたのだ。であれば、せめて今だけは顔を合わせるのは控えたくもなろうものだろう、ということだ。
     来ないなら来ないで、いないものとして扱うしかない。いない者に何があったかなどを問いただすことは土台不可能だ。
     そういうわけで、彼らを問いただすことはなく、代わりに本来被害者であるはずの側の水色を呼び出して問い詰めることになった。もしこの図を生徒に入れ込む性質の教官が見ようものなら卒倒しそうだな、と、きわめて他人事のように内心つぶやいた。

    「元々、ソレガシはこのような立派な学校に来られるような生まれではない。ただ、体が人より丈夫で、人より動けるという理由で此処に来られたのだ」
     会話でそれとなくは察しがついていたが。やはりというか、空色の髪のその少年は官僚の息子というわけでも政治家の息子というわけでもなく、本来士官学校とは縁もゆかりもない平民の出だという。
     その境遇には覚えがあった。だが、だから何というわけでもない。ズウィージョウは自身に言い聞かせながら、続きを黙って聞いた。
    「彼らはそれが疎ましいらしい。このようなことはよくある事だ。それに、教官はこれらの……教本を盗んだり、多人数で囲んで乱暴を行っているということを、どうも知らないようだ」
     知らないことはないだろう。見て見ぬふりをしているだけだ。
     思わず出かけた言葉を、ズウィージョウはすんでのところで飲みこんだ。おめでたい頭を持っているのか、こちらを試す発言の一環なのか。十中八九、前者なのだろう。
     士官学校は、戦争介入の人材育成機関ではあるが、同時に次世代の為政者を生むための機関でもある。政府が運営にかかわるということは、形式がどうであれそういうことなのだ。
     当然、優秀な成績をおさめてここを出るということが将来的な成功への礎になりうるというのは、ここの生徒なら多少なりと理解していることだろう。――だから、戦士としての理念よりも先に出世について頭を動かしこざかしい悪知恵を働かせるものも、中にはいる。
     在学時代、ズウィージョウがごまんとみてきた輩だ。
     そのような輩にとっては、その中でも政治にも出世にも、果ては親からの期待にも全くかかわりがないどこぞの馬の骨に、成績優秀者というトロフィーを持っていかれるという状況が一番腹立たしいのだ。そして、「シミュレーションで負けてくれ」という恫喝につながる、というわけだった。

     さて、貶められ、追い詰められることが日常になっている割には、少年の様相には怯えも恐怖感も見られない。かといって、自暴自棄というふうでもなかった。
     ただ、面倒ごとが一つ二つ増えたようなものだというような態度で、そんなことを言ってのけている。こたえているようなそぶりでもないのは、先のトラブル、そしてシミュレーションの様子を見ればこそ合点がいく。……あの様子では、三人どころか、八人がかりであってもこの少年は潰れはしないのだろう。
    「以前からこのようなことがあった……のだろうな。察するところあまりあるとでも言っておくべきか」
    「まあ、そうだな。……ああ、確かにあまり気持ちの良い話ではないな。先生にとっては」
    「やめろ、先生は。どうせ我は数日後にはここを出る。呼び捨てでいい」
     本当に先生として敬おうという気概があるなら言葉遣いの一つも改善しろと言いたいところだが、その育ちを想像するに改善に期待はしない方がいいだろうという気はした。それなりの言葉遣いについての勉強よりも先に、戦場で生きるすべをここで教わった人間が相手だ。
    「そうか?そう言うなら……ズウィージョウは、あまりこういう……それこそ、学校内のこのような小競り合いには無縁だったのだろう?」
     あまりな見当違いの発言。今度こそ、ズウィージョウはあからさまに顔をしかめた。それを見た少年がはて、と頭上に疑問符を浮かべたような顔をしてみせる。その細長い三白眼も、こうなると目つきの悪さ、鋭さもあったものではない。
    「お前は……いや、わざとではないだろうな。少し話して人となりは理解した」
    「む?」
     ズウィージョウはため息交じりにその間抜け面を見遣った。ここまで気の抜けるような会話をした記憶は過去数か月にない。恐らく、彼は噂話だとか、陰口だとか、そういったこととはおよそ無縁な世界の珍しい生き物か何かなのだろう。今は、そう思うことにしたのだった。住む世界が、違い過ぎる。
    「我も在学時代、お前と似たような状況だった。ある事情で特別編入という形で此処に来た。在学中はお前と似たようなことも経験している。……どういう仕打ちを受けたのかも、想像に難くない」
    「何!そうなのか」
     自分の身の上の話など絶対に自分からはしないし、ましてや士官学校に居た頃の思い出話などを、このような初対面の人間に対して語りたがるなどもってのほかだった。今日はどうかしている。それも、つい先ほどまで同じ話題でごまかしようもなくいら立っていたにもかかわらず、だ。
     それでも、今のズウィージョウに、胸中を渦巻くような嵐のざわめきはなく。どちらかといえば、毒を無理やり吐き出したような、あるいは頭痛に対して強い鎮痛薬を服用して、痛みが遠くなっていくとともに意識も閉じていくような、あの不快感の底のわずかな快感に似たもの。
     つまりは、苦しさとともに訪れるような小さな安堵を、何故か感じてしまっていた。
    「お前……いや、もういい。それより、名は」
     ――だから、どうかしているのだ。いちいち覚える気など無い名を尋ねるなど。元々、他人に対する関心の薄さを教官に叱責されることもあったくらいだというのに。
    「おお、そういえば名乗るのを忘れていた。先の授業ではそんな機会はついぞなかったものだから」
     機会がなかったのではなく、意図してそんな暇を与えてこなかっただけだというのに、目の前の少年ときたら、どこまでも前向きにとらえるようだった。そして、あらためて、といった風に、どちらともなく視線を合わせる。
    「ユウディアス。……ユウディアス・ベルギャーだ」
     こちらを覗き込みながら、まっすぐ見つめるひとみ。それは、ともすれば鋭く冷たい印象を与えがちな細長い形をしているのに、そこに添えられた柔らかな笑顔がそれら印象を融解させているように感じられた。
    「……そうか。なら、ユウディアス」
     上流社会の人間ばかりが集まった中で、周囲の誰からも望まれずして戦士として育ち、戦場に立ち、平和を勝ち取る礎となる存在。仲間意識、同族意識と称するにはあまりにほの暗い共通項だ。ズウィージョウは一人自嘲する。
     が、その表面だけの笑みは、彼――ユウディアスには、額面そのままに、つまりはさも理想的な、上に立つ者の優しい微笑みにでも見えるのだろう。それこそ、赤の他人であるところのただの一生徒に過ぎない者の身を案じてくれるかのように。
     それなら、それでいい。
    「生まれや育ちに理不尽な言葉を浴びせるものも居るだろう。言葉だけでなく、今日のような実力行使にも出る。だが、周囲はお前ひとりを助けるためだけに動きはしない。ここは、そういう歪んだ場だ。我が知る頃からずっと」
     ユウディアスはというと、口をしかと結び、じっと発言の主を見つめながらそれを聞いている。それは、頷きも相槌も、まばたきすらも忘れているかのように、微動だにしない姿勢だった。
    「だから、実力を身に着けることだけを考えろ。力は全てだ。お前を助ける標になり、お前を守る盾になるだろう。……結局のところ、我やお前のような存在は、最後に頼れるものは己の力でしかない。それを忘れるな」
    「……!心得た!」
     目の前の少年は、じっと聞いていたかと思えば、言葉が途切れるとともに、その翡翠色の目を瞬かせて快活な返事を繰り出した。
     ズウィージョウはそれを見て、多少面喰いながらも己の生徒時代を思い返す。かつての自分は、このユウディアスほど素直でも単純でも素朴でもなかったと思う。それでも、やることは変わらないのだ。だからこそ、ズウィージョウの助言はあくまでも自分の経験に基づくそれだ。
     自分を侮り、蔑むものを実力でねじ伏せて、恐怖させてでも生き残る。この士官学校という閉鎖された小さな社会においては、そうする他なかった。少なくとも、自分はそうだった。   
     だから、ユウディアスもそうあるべきだと、そうする他ないのだと思っていたのだ。





     ……それにしても、あの時は柄にもないことをしてしまった。たかだか一週間とすこしの縁だというのに、それもここから戦場に戻ればもう会うこともないというのに、まるでいっぱしの講師のような説教など。一体、何をしているというのか。
     後悔しているか否かと言われると、天秤は少しの揺れの果てに前者に傾くのだろう。現在のズウィージョウの心境としては、そんなところだった。
     それにつけても何が複雑かと言えば、あれ以来構内であの目立つ空色を見かけるにつけ、ほんの少しだけ心のどこかが弛緩するような感覚に陥ることだった。そうして、ふと目が合ってしまえば、あの、こちらを正しさそのものであるかのように見なすかのような純粋なまなざしでもって迎え入れられる。そして、それ自体は、――驚くことに――悪い気分はしなかった。

     当初こそ多少のトラブルがあったものの、実技シミュレーションの特別講習が始まって四日ほどが経った。生徒にも教官にも内外の者にも余計な噂話を立てられては、余計な勘繰りをされるというのは変わりはしなかったが、それで別段不快を感じることはそこまでなくなりつつあった。それは、この環境自体に慣れたからであって、ユウディアスというかつての自分と似た境遇の生徒をこの地で見つけられたからでは断じてない。……ない、と思いたい。
     そうでなければ、故郷を焼かれたあの夜からのすべての、自らの生にかかわる年月が、さも不幸せであったかのように感じられてしまうような気がしたのだ。それも、今までの人生で彼に出会わなかったからというただ一点で。
     そんなことを、認めるわけにはいかなかった。

     さて、生徒の集合時間になったが、いつもより訓練棟に集まる彼らの声が少しばかり騒がしい。10代20代そこらの戦士候補たちとはいえ、集団行動のできないようなものはこの学校には居ない筈だ。
     ズウィージョウが訝しみ、騒がしさの元へ歩み寄ると、この四日間、少なくとも一度も見ていない生徒が三人居た。……ズウィージョウはたいして顔も名前も背丈も記憶していなかったのだが、当初にユウディアスを包囲してシミュレーションの件で恫喝していた、例の三人の生徒だった。
     記憶に留めてすらいなかったが、自分がこの数日間授業で見覚えがなく、なおかつ生徒たちが騒がしくするということは、今まで来なかった生徒が来たのだろうと察することはできた。歩み寄って、「担当教官からはしばらく怪我で来られないと聞いていたのだが、もういいのか」と、形式だけ案ずるような言葉を吐き出しておけば、彼らは一様にばつの悪い顔を浮かべた。
    「良かった、来てくれたのだな!」
     そうしていると、奥からこの空気とは場違いに明るい声が背後から聞こえてきた。かと思うと、その声の主はすぐさまにズウィージョウの横を通り過ぎ、彼の視界の下部を遮った。案の定、ユウディアスだ。
     思わず、ズウィージョウはそれを内心訝しむ。何せ、ユウディアスにとっては理不尽な嫌がらせを受けた相手だ。勿論、他の教官も生徒もそれを知らないほど、他人には無関心というわけではないだろう。しかしながら、衆目の手前、それを指摘するようなことも出来かねる。
     そのわずかな逡巡の合間を縫うようにして答えたのは、三人の生徒のうちの一人だった。
    「その、俺、なんて言ったらいいか……処分を受けるところだったってのに、教官たちに掛け合ってくれたって聞いて……」
     申し訳なさそうにそう続けた生徒は、とても目を合わせられないと言った様相だ。ただ、体だけは彼の前に割って入ってきたユウディアスに向けている。
    「ケンカした仲とはいえ、共に学ぶ仲間だからな。居なくなってしまうのはソレガシとしても避けられるなら避けたい」
    「ごめん……ごめん、ユウディアス。もうしない、俺、親にも教官にもすごく怒られて……次はないって……その、だから……」
     異様に委縮する生徒の姿は、年齢にそぐわず、異様に小さく見えた。おそらく、この場に居る誰の目にもそう映っただろう。
     ぽつぽつとつぶやくように謝る彼の肩をユウディアスは軽くたたき、「とにかく、またこれから一緒に頑張ろう」と、いたって笑顔で語りかけた。まるで、先日のことなど何もなかったとでも言うかのようだった。

     ――なるほど、理解はできないが合点は行った。例の一件は思った以上に学校の運営部側で問題となっていたらしい。
     ここに通うような者で、なおかつ実績を必要とする者であるということは、例に漏れず上流の家の出ということも考えられる。それなら、親の影響の手前多少の素行の悪さ程度なら見過ごされてきた面もあるのかもしれない。だが、ただの生徒間の小競り合いならまだしも、成績に関わる部分に対する恐喝・恫喝というのであれば話は別になるのだろう。それは、試験に対する不正と同程度のものとして扱われる。であれば、最悪の場合退学という扱いにもなりうる。
    「……世間話は後でやれ。そこのも、今日から合流でいいな」
     とにかく、被害者当人がこの様子であるのだから外野からは言うことも特になく。その日のシミュレーションも、いつも通り行われる形となった。それも、特に怨恨を残したという雰囲気でもなく、彼ら三人もユウディアスも、協力してシミュレーションにのぞんでいるようだった。
     生徒間のいざこざが終息したことも、誰一人として処分を下されなかったことも、……他ならないユウディアスに、さらなる危害が加えられなかったことも。全て、好ましい事態であるはずだった。
     それなのに、ズウィージョウはどこか判然としない、それでいて薄暗い思いを抱いていた。
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    Replies from the creator

    sakura9sakurar

    DONE・漫画版ズウィユディ 「1巻までの知識で読める」を目指しました
    ・本編開始前の時間軸、過去捏造なれそめ捏造本
    └ズが武装組織の襲撃で家族を失った孤児、ユが特異体質を理由に士官学校に半強制的に放り込まれた貧民という設定があります
    └ベ星が戦争に介入して戦争を終わらせることを目的とした機関という設定があります
    ・残虐描写、グロデスク描写、加害・被害・若干いじめ描写を含みます 甘くないです
    【2024/05/04新刊】Sorrows【本文サンプル】 ベルギャー星は、他の星から「弱きを助く剣」と称えられ、その一方では「星を挙げた戦争屋」とも揶揄されていた。

     異なる星同士の、「宇宙戦争」と呼ばれる争いは、つまるところ異なる常識同士の押し付け合いだった。
     何万光年も離れた星々の間において、常識の物差しが一定であることは殆どあり得ない。停戦の勧告を受け入れる常識のない星も、疲弊したら戦いを止めるということができない星も存在している。勝った、あるいは負けたの明確な線引きは宇宙間の戦争には存在しない。
     だからこそ、どちらかが完全に戦闘を続けることができなくなるまで繰り広げられ続ける。どちらかの星が根絶やしになり、殺す対象も墓を作るものも居なくなるまで。
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