AIのべりすと産イデジェイ(略)
そんなギャップにコロリと転がされた僕は、新しい推し活にたいそう浮かれていた。
まあつまりそういうわけで、僕はジェイド氏に対して結構好意的になっていたのだ。
だからこうして二人きりでも緊張せずに話せるようになったし、彼からのお願いにも応えてあげようという気になった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ええ、どうぞ」
「…………えっ?」
「?どうかされましたか?」
ジェイド氏が首を傾げる。
僕はそれに答えることができなかった。
だって目の前にあるのは僕のベッドだ。
ジェイド氏の部屋にはもっと大きいのがあるだろうけど、なんでわざわざ僕のところに……。
「あの……ここで寝るの?」
「はい」
ジェイド氏は躊躇うことなく答えた。
それからマジカルペンを取り出して一振りすると、手早く布団を敷いてしまう。
「えーっと……」
「さぁ、イデアさん。どうぞ」
「ど、どうして!?」
思わず声を上げると、ジェイド氏はきょとんとした顔になる。
「僕と一緒に寝るのは嫌ですか?」
「そ、そうじゃないんだけど!」
むしろ一緒に寝られるならそれはそれで最高なんですが! 問題は、何故このタイミングなのかということだった。
「えっと、ジェイド氏って確か人魚なんだよね?」
「ええ」
「人間と違って体温低いんだろ?それなのにこんなところで寝たら風邪ひくよ」
「心配してくださっているんですね」
ふわりと微笑むジェイド氏に胸を撃ち抜かれながら、僕は必死に冷静さを装った。
だっておかしいじゃん!拙者みたいな陰キャがジェイド氏と添い寝とか、それなんてギャルゲー展開だよ!!
「大丈夫ですよ。これくらい慣れていますから」
「そうなの……?」
「はい。ですからご安心ください」
「で、でも、もし風邪引いたら大変だし……」
「ではこうしましょう」
ジェイド氏は少し考える素振りを見せると、おもむろに服を脱ぎ始めた。
そして下着姿になると、そのままベッドの中に潜り込む。
「えっ!?ちょっ!!」
「これで寒くありませんね」
そう言って笑うジェイド氏は無邪気そのものだったが、僕にとっては刺激が強すぎた。
「じぇ、じぇ、ジェイド氏!!!」
「おやすみなさい」
それだけ言うとジェイド氏は目を閉じてしまう。
僕は混乱したまま、とりあえず部屋の電気を消した。
「……マジでどういうこと?」
呟きに応えるものはいない。
暗闇の中、聞こえてくるのは規則正しい呼吸音だけだ。……本当に寝ちゃったのかな。
恐る恐る布団に手を入れると、冷たい感触があった。
やっぱり寒いんじゃん……。
でも当人は平気だと言っているし……。
このまま放っておいていいものだろうか。…………いや待て。そもそもこれは夢なのではないのか? そうだ。きっとそうに違いない。
だってこんなイベント起こるはずがないもん。しかし夢にしてはリアルすぎる。というか、ジェイド氏が着ている寝間着も僕のものだし、枕カバーもシーツも僕のものを使っている。……えっ、まさか現実? 嘘でしょ? もしかして僕、ジェイド氏と付き合ってたりする?
「……んっ」……ヤバい。変なこと考えたら勃ちそう。落ち着け僕。素数を数えるんだ。1、3、5、7、11、13……だめだ、余計に興奮してきた。
「……」
駄目元で頬っぺたをつねると普通に痛かった。どうやらここは現実のようだ。
ということは、今ここにいるジェイド氏は本物ということになるのだが……。
「どうしよう……」
いくら考えても結論が出なかった。
僕はジェイド氏のことが好きだけれど、それはあくまで推しているというだけであって、恋人になりたいわけではない。
それに彼はオクタヴィネルの副寮長で、モストロ・ラウンジの副支配人ともなれば、今後ますます忙しくなっていくだろう。そんな中で僕なんかと遊んでいる暇はあるまい。
だからといって、彼を手酷くフるのは気が引けるし……。
「……」……よし決めた。
今日はこの心地よい関係に甘んじよう。
幸いにも僕は明日休みである。夜更かししても問題ない。
せっかくの機会なのだから、このシチュエーションを最大限に楽しまなくてどうする。
そうと決まれば話は早い。
僕はいそいそとベッドに横になった。
「お邪魔します……」
小さく呟いて、そっと隣に滑り込む。
ジェイド氏の身体はひんやりしていた。
「……つめたい」
「んんっ……」
「あっ、ごめん」
つい本音が漏れてしまった。慌てて口を塞ぐが、もう遅い。
「いえ……」
ジェイド氏は眠そうな声で言った。
「イデアさんこそ、あたたかくて気持ち良いですよ」
「そ、そっか……」
「ふぁあ……」
ジェイド氏は大きな欠伸をした。
「すみません。なんだか……急に……」
「うん……わかるよ」
僕だって同じだったから。
「ねぇ、ジェイド氏」
「なんですか?」
「手、繋いでもいい?」
「ええ、もちろん」
ジェイド氏が腕を伸ばしてきたので、その手を掴んで指を絡める。するとジェイド氏もまた握り返してくれた。
「おやすみなさい」
「……おやすみ」
僕はゆっくりと目を閉じる。
やがて意識が遠ざかり、深い眠りへと誘われていった。
「おはようございます、イデアさん」
「……えっ?」
目が覚めると、目の前には美しい顔があった。
しかも裸だった。
「じぇ、ジェイド氏!?」
驚いて飛び起きると、「どうかしましたか?」と言われてしまう。……あれ?僕がおかしいのかな? だってこの状況はどう見ても事後だよね? どうしてそんなに冷静なわけ?
「……えーと、服着たら?」
「ああ、すみません」
ジェイド氏はそう言うなり、ベッドから降りて服を着始める。
その姿を眺めながら、僕は頭を抱えたくなった。……これって、もしかしなくても拙者が襲った感じですかね!? 何やってんの拙者!童貞こじらせ過ぎだろ!!
「……あのさ、昨日のこと覚えてる?」
「はい。あなたと添い寝をしたところまでははっきりと」
「あ、そう……」
「ところで、イデアさんはいつお目覚めに?」
「……結構前だよ。30分くらい前に起きて、それからずっと君のこと見てた」
「そうでしたか。起こしてくださればよかったものを」
「だってよく寝てたし……」
「お気遣いありがとうございます。……それで、僕の寝顔をじっと見ていて何か面白いことはありましたか?」
「えっ?いや別に何も……。ただ、綺麗だなって思っただけ」
「それは光栄ですね。……では朝食にしましょうか」
ジェイド氏はそう言って微笑むと、僕の手を取って部屋を出ていく。
その後、一緒にシャワーを浴びて、二人で仲良く朝ご飯を食べてから、再びベッドに戻ってきた。
「じゃあ、今日は何をする?ゲームでもする?それとも映画観る?」
僕が尋ねると、ジェイド氏は少し困ったような表情を浮かべた。
「実は、お願いしたいことがあるんです」
「……いいけど、何?」
「イデアさんのご両親に会わせてください」
「……えっ?」
予想外過ぎる要望に僕は固まった。
「ど、どういう意味?」
「言葉通りの意味です。僕はあなたと家族になりたい」
「ええっと……」
僕は混乱しながらも、必死に頭を働かせる。
これは夢だろうか。それとも現実?……多分、現実だと思う。だってジェイド氏の瞳がいつも以上にキラキラ輝いているから。
それにしても、いきなりこんなことを言い出すなんて……。もしかして、これが世に聞くプロポーズというやつなのか? だとしたら、どう答えればいいんだろう。
僕としては嬉しいけれど、彼の将来を考えると素直に喜べない。
「イデアさん」
考え込んでいると、ジェイド氏が優しく名前を呼んできた。
そして、そのままぎゅっと抱きしめられる。
「あなたの気持ちはよくわかります。僕も同じことを考えていましたから」
「……そっか」
「ええ」
「ねぇ、ジェイド氏」
「はい」
「……やっぱりダメだ」
「なぜ?」
「君はまだ学生だから」
「そんなの関係ないでしょう」
「あるよ。だって君は副寮長だし、モストロ・ラウンジで働いているし、これからもっと忙しくなっていくと思う。そんな中で僕なんかと付き合っていたら、君の時間を無駄にしてしまう」
「……つまり、僕との交際を断るということですか?」
「うん」
「……そうですか。残念です」
ジェイド氏は小さく呟くと、僕から身体を離す。
そして、寂しげに笑った。
「でも仕方ありませんね」
「えっ?」
「あなたが決めたことです。僕はそれを尊重いたしますよ」
「そ、そうなの?」
「ええ。ただし、条件を付けさせていただきたいのですがよろしいですか?」
「う、うん」
「もし、この先もずっと僕と一緒にいてくださるなら、その時は結婚していただけませんか?」
「けっ!?」
僕は驚きすぎて変な声を出してしまった。
するとジェイド氏はくすりと笑う。
「もちろん、今すぐとは申し上げておりません。まだお互いに知らないことがたくさんありますし、まずは恋人としてお付き合いをさせていただこうと思っています。いかがでしょうか?」
「……」
僕は返事に窮してしまった。……正直、すごく迷っている自分がいる。
だって、彼と結婚できるなんて夢のようだもの。
「……わかった。約束する」
「ありがとうございます」
ジェイド氏は嬉しそうに微笑むと、僕の唇にキスをした。
「では、今日のところはこれで失礼いたします。また明日会いましょう」
彼はそう言うなり立ち上がり、さっさと部屋から出て行ってしまう。……なんだかあっけなく終わってしまったなぁと思いつつ、スマホを見るとメッセージアプリの新着通知が表示されていた。
『イデアさん。愛しています』……どうしよう、ニヤけるんだけど!
***