あの子の埋葬革の焼ける匂いが嫌いだった。
「ゴムがね、じゅわぁって」
焦げ茶色の分厚いそれらは、煙になってジリジリと重たく、肺の中まで入って。
「穴が空いていくんだ」
やがて服に染み付いて、取れなくなっていく。
「面白いよね」
俺は、気に入らなかった。
***
この上司に名前は無い。
背が低く小柄なこの男は、数ヶ月前に、死んだ時と全く変わらない姿で現れた。
「僕はジョンだけど、もうそう呼ばれるべき物じゃないと思う」
つぶらな瞳は、あの日と同じ色をしている。
「エドゥアルド。だから僕はね、もうジョンって呼ばれたくないんだ」
それなのに、
コイツはアイツである事を拒んだ。
「…何故だ?」
「それは………1回、死んじゃったのに、まだ此処に帰ってくるなんて、変でしょ」
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