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    しゃちの

    @schwertwal_52
    僕です。

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    しゃちの

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    アリ鯱暴走エンドの後の話です。

    赤く、死んだ海の前で少女は語る何者かに少女は発見され、病院に運び込まれた。「可哀想に、事件に巻き込まれたそうだ。」
    そんな声が聞こえ、目が覚める……

    「……痛…」
    ずきんと頭が痛む。
    「私…なんで病院に…?」
    「はっ、ユートさんは」
    周りを見渡しても、いつもそばに居てくれるはずの存在は居ない。
    換気のために開けられたと思われる、海が見える窓のカーテンが柔らかく嗤うように揺らいでいた。
    規則的であるはずの漣の音が不規則に聞こえて、それは私を次第に不安にさせた。

    私はナースコールをする。
    「どう致しましたか?」
    「長身の…黒髪の…あ、あの…あ」
    「……まだ混乱されているのですね。無理もありません…後で何か」
    音が頭に入ってこない、視界が歪んでくる。
    「あ…あああ、何か、何か、分か、ら、なくて、」
    ぼんやりとしか思い出せない。彼はどんな容姿だった?どんな声をしていた?
    ゆっくりと考えれば思い出せるはずだが、何かがそれを邪魔している。

    誰かが、思い出させまいとしている?
    大、じなこと、な、のに

    その時、壁にぶつかる大きな波の音が聞こえた。
    「っは…!」
    意識が遠のきかけていた。
    …何を考えていたのだろう。
    気がつけば目の前にナースは居らず、日は頭上にあった。

    「海…」
    窓から海が見え、音が聞こえるということは、そこまで離れていない。

    外に、出てみよう。
    何故か、行かないといけない気がして、海へ向かう。
    その側を足早に、何かを探すように通る。
    堤防があった…気がつくとそこへ足が進む。
    凪いでいて、何も知らない顔をする海。
    「友斗…」
    不意に出た言葉だった____






    「ねえ、こんなおれと居ていいの?」
    彼…は、不安そうな顔で俯いていた。
    「本命の子…居るんじゃないの」
    ベンチの隣に座っているが、段々と彼は自分から向こう側へと離れていく。
    わたくしは、彼の目の前に軽くしゃがみ、目線を合わせ、寄り添って、こう言ってみる。
    「君なら…きっと許されますよ。」
    「そ、うなの、」
    「……ええ」
    肩を震わせそうになっている彼が、どうしてもそんな仕草までも"彼女"に似ていて、わたくしは抱きしめてしまった。






    「"これ"はどうしてもおれのものにはなってくれないんでしょ、ねえ。」

    「もう1人の、おれ」
    「…………」
    暗闇から話しかけてくる「それ」は、私の情緒を掻き乱すようだった。

    ああ、今にも倒れそう。
    堤防から海へ落ちたら楽だろうか
    また、あの人に抱きしめられる感覚を味わえるだろうか
    「どうして」
    「ずっと一緒って言ったじゃん」

    私の知らない間にそんなことがあったんだね
    じゃああなたは今どこにいるの
    「置いていかないでよ」
    やっぱり、漣の音が、私を嘲笑っている気がした。

    堤防の上に倒れ込む。
    コンクリートに倒れ込むのでとても痛いはずだが、不思議と痛くなかった。
    「…?」
    大きな白い…………布?
    ……………いや、これは
    「友斗!!!!!!!!」
    「いるの!?」
    「な、んで出てきて、くれな、いの…………?」
    涙が溢れてきて、前が見えなくなって、
    目の前にある白衣を抱きしめる。
    あの人の香りが、仄かに残っていた。白衣を濡らしてしまう。
    ああ、なんてきみは、
    「ずるい」
    涙で前髪と白衣を濡らしていたら、ポケットに入った紙に気づいた。
    急いで作ったような、雑に切られた、ノートの切れ端のような紙。
    そんな粗雑な紙に、綺麗な字が書いてあった。
    所々、何か、文字が、滲んでいて…
    _______
    ごめんなさい、アリア
    わたくしは君にはもう会えない。
    君を、□付けてしまった。殺□てしまった。

    君は、わ□□□の事を□れて欲しい。
    _______

    ああ、ああ、ほんとどこまでも、お前は!
    「どう…………どう、忘れろって言うの!ふざけないでよ!」
    白衣を地面に叩きつけてしまう。
    水溜まりに映る私の顔は、涙でぐちゃぐちゃな顔だ、こんなの見せられない。
    けれど、今すぐに会いたい、逢いたい。
    どこか近くで革靴の音が聞こえた

    …気がした。
    「置いてかないで…」

    潮風がひりひりとする。



    このまま私は、彼を、探して、探して、探して探して探して探して

    探していた。
    でも、世間は何も知らないと、言うのだ。

    私にとっては裾の余りすぎる白衣を下げた壁を見つめる。

    ああ、いつかこんなことがあったような気がする。それは現実だったかどうか、もはや覚えていないけれど。
    離さないと誓ったのに
    この手から離れてしまった
    ………そういえば…もう1人の、私は…?




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