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    okjk114mara

    @okjk114mara
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    okjk114mara

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    【晴天時雨のこっくりさん】

    ・レオ×祝
    ・大誠×祝要素有り
    ・微ホラー表現有り

    その少年は目前に垂れる濡れた金色の前髪を鬱陶しげに掻き上げた。
    夏の日差しが暑く刺すというのに自分が今いる教室の窓を開けて手を出してみれば、一二三と数える間にずぶ濡れになるくらいの大雨を食らった。

    「…狐の嫁入りがおいでなさった、って感じかな?」

    それは突然の事だった。
    放課後で皆が家路へと向かってる最中、暗雲もなくそれは天から降り注ぎ、殆どの生徒は駆け足で校門を潜っていくのを一人、タイミングを逃した富樫レオだけは教室の窓から見送るように見つめていた。

    「狐が結婚をするのかい?」

    唐突に声が後ろからして振り返る。
    見ればそこには雨にやられたらしい…びしょ濡れの風間祝と思われる少年が教室に来ていた。
    彼はずぶ濡れになった制服のブレザーを脱ぎ、素直な疑問らしい言葉をレオに話しかけている。
    その光景がまるで迷い猫が毛繕いをするような仕草に似ていて、思わずレオは吹き出してからポケットからハンカチを取り出して彼の濡れた頬や頭を撫でた。

    「どうしたの、シュウ?キミはコイビトと一緒に帰ったはずじゃなかったかい?」

    少し意地の悪い言葉に、シュウと呼ばれた少年は恥ずかしげに前髪を掻き上げ呟いた。

    「…逃げられちゃった。」

    それはレオの予想してない反応と言葉だった。
    逃げた?
    あんなに手離さないと豪語していた新堂大誠が?
    いや、これはまた祝の悪い冗談なのだろうか。

    そうして独り混乱しているレオを余所に、彼はポケットから何やら紙を取り出して机に広げ始める。
    あれほど雨にあてられた様子であったにも関わらず、その紙は一滴の水分も含んでいなかった。

    「だからキミが…こっくりさんに付き合っておくれよ。」

    にっこりと微笑むその姿に、レオは1つの可能性を見付けて「はは」と呆れた笑いを浮かべる。
    恐らく逃げたのはこの「こっくりさん」のせいだろう。
    祝が無理矢理誘ったから、断って先に帰ったのかもしれない。
    オカルト好きのレオにとって、こっくりさんは恐怖や嫌悪の対象では無かったが、あの危険察知能力の強い新堂なら、触らぬ神に祟り無しと逃げてしまってもおかしくない事だ。
    …この仮説を立ててレオは独り納得した。

    「こっくりさんかい?…良いけどさ、随分変わった形式だね。」

    彼が置いたそれを、レオは自身の好奇心のまま細部を目にする。
    そこには、こっくりさんならあるはずの鳥居がなかった。
    そして平仮名50音すらなく、あったのは2つの文字だけ。
    「はい」「いいえ」だけだった。

    「シンプルというか簡易的というか…こんなこっくりさん見た事ないけど…。
    あ、まさかキミ、これをやるのに五百円必要だなんてまた言う気かい?」

    そうしてレオが心身ともに身構えるのを他所に、彼は懐から五百円…くらいの大きな金色の丸い鈴を取り出して紙の中央に置いた。

    「…座ったら?」

    お金を要求しない不気味さにレオは少し間をおいて、漸く向かいに座り彼を見つめる。
    ジワジワというセミの音とザーザーとノイズの様な雨音が奇妙な合唱を作り
    彼らのいる教室を騒がしく響き渡らせる。
    日が射している角度の所為だろうか?
    レオの視界に映ったものが意識に告げる。
    祝の顔が白く見え、その眼は反射なのか金色に見えたのだ。

    「じゃあ好きな質問して良いよ。」
    「え?鈴に指を置くとか…しなくていいのかい?」
    「要らないよ。だって…」


    勝 手 に 答 え て く れ る か ら

    ……。
    雨は未だ止まない。
    外の日差しが確かに教室を明るくしてるというのに、何故か…
    先程から違和感が絶えないのだ。
    まるでそれは背後に佇んで、じわりじわりと蜥蜴のように下から上へ這い上がってくる…。そんな不気味で異常なこの空間。
    嗚呼、だけども…

    「…うん、面白そうだね。」

    富樫レオはそれを好奇心で殺した。
    瞳を爛々と輝かせ、新しい玩具を見つけたような笑顔と、けれども絶対にその異に呑まれないと意識する冷静な声色でそう言った。

    「じゃあまずは…こっくりさん…アナタはこっくりさんですか?」

    こっくりさんをやった事のある人間なら最初に言いそうなフレーズをあえて選択する。
    すると、中央にあった鈴は音を立てながらコロコロと文字の上へ転がった。

    『はい。』

    「わぁ、すごいや。一人でに鈴が動くなんて
    スマホで動画撮らせてくれないかい?これなら五百円払っても良いよ。」

    「はい」にころがった鈴をもどしている彼をそっちのけに、レオはいそいそと後ろに置いていた鞄からスマホを取り出して机の横に立て掛けた。

    「録画よし、っと。さて、次は何を聞こうかな…シュウは何か聞かなくて良いの?」

    レオの言葉に、彼は首を横に振る。
    どうやら特にないらしい。

    「…そうか。そうなんだね。
    じゃあ、こっくりさん…」

    一瞬の間。
    雑音と沈黙の中、それは投げられた。

    「新堂は無事に逃げられましたか?」

    再び鈴がコロコロと転がる。
    『はい』だった。

    「…うん。よかった。」

    その結果に心から安堵したのか、レオは一度深いため息をつく。
    そしてまた冷静さを帯びた眼と好奇心から綻ぶ笑みを浮かべて次の言葉を発した。

    「こっくりさん…
    今この席に座っているのは僕とシュウ2人だけですか?」

    またコロコロと鈴が転がる。
    『いいえ』だった。

    その答えにレオは納得したようでニコリと笑みを浮かべたまま追いつめる様に攻める様に次の質問をする。

    「こっくりさん……いや。
    ねぇ、こっくりさん」

    ゆっくりとレオの右手が上がる。
    そしてそれは目前の少年に人差し指を向けた。

    「あなたは、シュウではないですよね?」

    ハッキリとしたその言葉に動じるかのように鈴は転がり…結果が視界に明確となって映った。

    『はい。』

    刹那、教室の空気が変わる。
    獣臭く、生暖かく、それでいてぞわぞわと言いようのない重圧が支配する。

    シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
    シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

    机上の鈴がけたたましく鳴る。
    思わず席を立った其処に、風間祝の顔をしたナニかが身を乗り出してレオを見つめていた。
    まるで懇願と殺意と慈悲が混じったその金色の瞳を向けてソレは言う。

    「どうかトツガセテ…ボクをおよめさんにして?」

    ソノ手が両手を広げてゆっくりとレオに向けられる。

    「およめさんにして、ね…。ニセモノとはいえちょっぴりドキッとしちゃったかな。」

    でもね、と続けてレオは自身の両手を手前に持っていき

    「それは、僕が本物のシュウに言わせるつもりだから」

    パン…と拍手を打った。

    渇いた音が響いて消えたその一瞬。
    全てはまるで無くなっていた。
    晴天から注ぐ雨も机上の紙も金色の鈴も…

    「あ、そうだ録画」

    机の下に落ちてしまっているスマホを急いで拾い上げて確認する。
    録画されていたものは…まるで旧式のテレビの様な砂嵐が入ってしまっていた。

    「うわー…またこのパターンかい?」

    いや、今回はハッキリとしている。
    自分はキツネに化かされたのだ。

    「うーん、追いつめるのが早かったな。もう少し色々聞いてからにすれば良かった。」

    はぁ、と深い後悔と共にため息が出る。
    そう、自分の最初に言った言葉を思い返して、それからの様子をみれば簡単に見破ることができた。

    ひとつは、最初に迂闊にも「おいでなさった」と言ったことで、この教室にアレが入れる許可を与えてしまった事。

    ふたつめは、シュウを絶対離さないと言っていた人間、新堂大誠が、彼を置いて逃げるはずがない。仮にそうなっても一緒に逃げるかそれをしたくない意思をシュウに話して説得なりしただろう。
    つまり、あの危険察知能力が察知したのは「こっくりさん」の儀式そのものに対してではなく、「こっくりさん」自身と対峙していたのだと考えられる。

    みっつめ、鳥居の存在が無かったということ。
    鳥居とは本来、神社などにおいて神域と人間が住む俗界を区画するもの(結界)であり、神域への入口を示すもの。 一種の「門」である。
    これを創造するのは大抵人間であり、怪異には出来ない事だ。
    だからアレは、鳥居を描けない存在…怪異だったのだろう。

    よっつめ、これは恐らくただの蛇足だろうが
    金の鈴というのは清浄な音色で邪念を払うと言われているらしい。
    つまりあの「こっくりさん」は「本音」が聞きたかったのだろう。
    本気で…とつぐつもりで…

    「まさか前回の経験で学んだ事が役に立つなんて思わなかった。」
    「おや?何を学んだというんだい?」

    その声の主はバンッと後ろのロッカーの中から現れた。
    それは…先程まで嫌なほどみた風間祝であった。

    「いやー、ボクを追い回すファンの子達から逃げて隠れていたらついこっくりこっくり…こっくりさんしちゃってね。」
    「ごめんシュウ。今日はもう『こっくりさん』はお腹いっぱいだよ。」

    口元に手を当てて苦笑いするレオに、祝は頭上に「」を浮かべきょとんとしている。
    その様子を見て、レオは祝が「本物」だというのを確信した。

    「そうそう、でパンッて音がして目が覚めたんだけど…何してたんだい?」

    …どうやらあのハズカシイ言葉は聞いてないようだ。
    レオは祝の眼前に自身の掌を向けて、パンッとまた手を叩いて見せる。

    「念魂(ネコ)騙し、っていってね。こうして不意に手を叩いて悪霊を払う呪いだよ」
    「むぅ、急にするなよ。ビックリするじゃないか。」

    目をシパシパしながら言う祝に、レオは悪戯っぽく笑った。

    「いやー…でもアレにとつがれなくて本当に良かったよ。」
    「嫁ぐ?まさかキミ…お嫁に行ってしまうのかい?その歳で…」
    「あー…いや、そっちの嫁ぐじゃないんだよね。」

    ポリポリと頭を⒉3度掻いて、レオは真っ直ぐ祝の方を見る。
    蝉が煩く騒ぐ中で、それは確かに、雑音に混じる事なく祝の耳に入った。


    「人間の魂に取憑(トツ)ぐ方さ。」
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