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    鶴田樹

    @ayanenonoca

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    鶴田樹

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    熱風さんの鶯丸のイラスト(オブラート)のファンアートです!

    見る人を選ぶとおっしゃってましたがバッチリ選ばれました✨✨

    縄師の大包平と縄を受ける鶯丸の話(短いです)

    【へ処何は軆】


    へこずいはちたか

    縄の赤が溶け出していくやうだ、と鶯丸の肌にじわりと朱が差していく様を眺める。

    鶯丸の白い肌は平素あまり温度を持たない。

    彼奴は暑い日も寒い日も変わらず陶器のやうな肌を晒してゐる。

    その肌が今はじつとりとした体温を孕んでいた。

    その様子に大包平は自身の堅物さを雄弁に顕す口を強く引き結ぶ。

    その間にも迷いのない早さで赤い縄が一条、また一条と打たれ、結び目が花のやうに咲き散らされていく。

    鶯丸の自由を奪う縄。

    しかし鶯丸はそのやうなことは一毫も感じてゐない素振りで、ただ大包平のなすが儘に縄を打たれてゐる。

    大包平は嘘を好かぬ性質だ。

    言葉を濁すことも赦せぬ性質だ。

    そんな大包平でも断じて言えぬことがある。

    お前が縄に酔う様が見たいなどと。

    それでも如何ともし難い衝動に苦渋の表情を浮かべながら「縄を受けてくれないか」と乞えば、「なんだ、練習か。いいだろう、付き合うぞ。」と鶯丸はからりと応じた。

    それが、今ではこれだ。

    縄を打ち、背中の結び目に新たな縄を絡ませる。天井の梁の上を通した縄の片側を引けば鶯丸の躯体は針金で形作られた鳥のやうに美しく宙に舞う。

    「苦しくはないか。」

    己の体重を縄に委ねた兄弟に声を掛ければ、「問題ない」と返つてくる。

    宙で一分の隙もない三角形を形取る鶯丸は、まだ今は単なる大包平の作品に過ぎなかった。

    しかしその完成された美の中に熱が籠っていく。

    肌に、唇に、血潮が巡る。

    胸の前で作られた一つの結び目。

    其れが鶯丸の呼吸を伝へる。

    静かに目を閉じてゐる鶯丸の呼吸が

    深く繰り返される息が

    荒く短いものへと変わつていく。

    次第に其れは浅くなり、鶯丸の胡乱な瞳がどろりと溢れて仕舞いそうだった。

    ひゅ、と空気の漏れる音。

    「あ……」

    鶯丸の喉の奥から隠し得ぬ愉悦がまろびでる。

    「あ、あぁ……あああ………!」

    鶯丸のからだの中で、何かが高まり、何かが弾けたやうだった。

    ひくんと大きくひとつ身体を撓らせて、次の瞬間にはすべての力を失った鶯丸の躯体。

    其処にバレリヰナのやうに洗練された先程迄の姿は見えず、最早ぐんにゃりと熱に熔けた飴細工のやうだった。
     
    「鶯、丸」

    声をかければだらしなく弛んでいた口元が薄い笑みを湛える。

    縄に抱かれ、縄に酔う兄弟の嫣然とした美しさに、大包平は思わず息を飲んだ。

    「これが見たかったんだらう?」

    鶯丸の熱に浮かされた瞳が大包平を捉える。

    美しい兄弟の瞳に映ったのもまた、

    慾に囚われた美しい男のかんばせだつた。
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