【かなりあ】「桑名!どうした?こんなところで」
豊前に呼び止められて、僕は祈りから引き戻される。
「ううん、なんでもない」
僕がいた廊下の壁は一見何もないところに見えるけれど、実は隠し扉があって、その先にはある部屋がある。
それは大地が教えてくれたことで、大地と対話できる桑名江以外の刀はここに扉と部屋があることを知らない。
そしてその部屋には、刀塚が祀ってある。
頭の中に敷地内の地図を思い起こせば、そこは政府内のど真ん中に位置し、真裏には鍛刀部屋がある。
地図内においてその部屋は鍛刀用の資材置き場ということになっている。
つまりここにある刀塚は政府が配布する刀の鍛刀に失敗した際に、生まれ損なった刀が祀られる場所。もしくは生まれ落ちた刀がなんらかの都合によってその生をなかったことにされる場所。
ではこの廊下に刀塚へ進む扉がある意味は?刀塚へお参りをする職員のためのもの?それとも…
「あれ?豊前、戦装束だけどどうしたの?」
「おー、今から次のイベントの準備だって。ちっと手伝ってくるわ」
「そうなんだ。そういえば運用部の方が今回は苦戦してたみたいだもんね。新しいイベント、バグなく始められるといいね」
「おう!そんじゃちっと行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
僕はいつもの調子で豊前を送り出した。
その時の僕は知らなかった。
豊前に割り当てられた仕事が、通行手形ありのイベントで正しく生存回復と本丸帰還ができるかどうかのテストだったことを。
そして僕は廊下の扉の意味を知る。
この扉があるのは
豊前くんが帰ってきたか来なかったかはお好みの解釈でどうぞ