「……っぐぬ〜!ずるいぞ!いたずらしてやろうと思ったのにお菓子を持ってるなんて!」
「はは、備えあれば憂いなしってね。看護師長に感謝しないとな」
「シグウィンの入れ知恵かよ!」
「馴染みのカフェの焼き菓子だから味は保証するよ。美味かったら今度ぜひ足を運んでみてくれ」
「……悔しいけど美味そうだ……、ありがとなリオセスリ!旅人、あっち行って食べようぜ!」
常と異なる装い、所謂仮装を身に纏って慌ただしく踵を返した二人を見送り、リオセスリは肩を竦めて息をついた。
「ようやく店仕舞いだ」
お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。一年に一回、子供から大人まで、今日この日のみ罪に問われることのない脅迫が和気藹々と飛び交い、フォンテーヌ廷全体が浮き足立っている。
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