わんどろでかいたやつ気が付いたら、ラヴクラフトは謎の部屋にいた。
謎の部屋だと想っていたが倉庫だった。帝国図書館の倉庫の一つだ。倉庫と言っても空き部屋にものをつめこんでいる。こういうときはドアを開けるのだ。
開かなかったがうち鍵をひねることでドアが開けられた。
「どこ」
本館……? となる。分館だったが声がかかるので、本館だ。ラヴクラフトは迷いやすい。
「ハワード。どうした」
「ナオキ」
「また迷ったのか」
呆れているわけでもなく、微笑まれて言われる。ラヴクラフトにとっては安心する笑み。直木三十五だ。
映画を撮るためにラヴクラフトに声をかけた彼は今ではラヴクラフトの世話をよく焼いてくれる。
「迷いました。どこ」
「本館の地下書庫の倉庫だな」
場所を教えてくれた。
道標。
ラヴクラフトの道標の一つが直木だ。いくつも他に道標はあるけれども、迷ったときに直木は案内してくれる。
「外、出たいです」
「出るぞ」
直木が手を差し出してくれる。ラヴクラフトは手を掴む。壺を抱えたラヴクラフトは彼と共に地下から出る。
「――外」
広々とした室内に敷き詰められた本棚。
帝国図書館本館だ。安心すると腹が鳴った。
「腹。減ったのか」
「減りました」
「食堂か分館で飯を」
「ハワード。ナオキ、ハワードを連れてきてくれたのか」
「地下書庫の倉庫にいたんですよ」
「ポー様」
主であるエドガー・アラン・ポーがいた。探してくれていたらしい。
「腹が減ってるみたいだし、食べるものを」
「焼き芋大会が始まるぞ。落ち葉で焼くものではないが、石焼き芋の機械を借りて作るそうだ」
「……借りるって」
「吉川が借りてきた。落ち葉の焼き芋は美味しいが、まだ落ち葉がないのと火事が怖いからな」
焼き芋大会が始まるらしい。吉川英治が機械を借りてきてくれたそうだ。焼き芋はねちょねちょとホクホクの二種類があるがラヴクラフトはどっちもすきである。
「落ち葉。ある。焼き芋、したい」
「安全な場所を選ばねえとな。まだあとのことになるが」
「いずれ落ち葉は出来る。……芋を食うぞ」
主がいて、兄のような存在もいる。
ラヴクラフトを助けてくれる者たちは他にもたくさんいる。
「ありがとう、ございます」
噛みしめる。ラヴクラフト。案内をしてくれる二人。
彼等はこれから石焼き芋を食べる。