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    汎用斉藤

    成人済のゆるい生き物。
    デジタル絵初心者で練習中。
    ツイッターに上げた二次創作(プリンタニアと青鉄)の再掲が主です。

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    汎用斉藤

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    「箱庭ごはん」(2022年7月23日から開催された、プリンタニアごはんアンソロジーネットプリント企画)に参加登録した小話その1。
    小塩野と小佐藤とコンサルのおはなし。

    ##プリ系

    実りある日々 林檎や、桃缶など。
     ライブラリで見つけた本にはそう書いてあった。
     りんご、ももかん、りんご、ももかん。忘れないように繰り返し口ずさむ。
     ライブラリを出てすぐ駆け出しそうになるけれど、むやみに走らないようコンサルから言われていたので家まで一気に走りたいのを我慢する。
    「転んで怪我したら塩野が痛いのはもちろんですが、私も佐藤も心配しますし、悲しみますよ」
     ようやく友人でいてくれる友人が自分にも出来たのだ。友人が心配してくれるのはちょっぴりうれしい気もするけれど、悲しませたくはないなあと思う。
     そういや少し前にうっかり手を挟んで真っ赤に腫れた時、隣にいた佐藤は白い顔でしばらく硬直していた。あれが心配なのか悲しみだったのかはよくわからなかったけど、あんな表情はあまりさせたくないなと思ったのは覚えている。

     家までの道を早歩きしながら塩野は繰り返し呟く。
    コンサル、さとー、りんご、ももかん。
    「ただいまコンサル!お願いがあるんだけど!」
    「おかえりなさい塩野。随分息を弾ませていますね。走ってきたのですか?」
    「走ってないよ!早歩き!転んでもないよ!」
     それでさ、と塩野は部屋の奥で飲み物を用意しているコンサルに駆け寄った。
    「りんごと桃缶が欲しいんだけど、コンサル用意出来る?」
     まずは落ち着いて、とコンサルが差し出した麦茶に口をつける。
     麦茶より炭酸がいいなと思っていたのに、全力の早歩きで汗ばんでいたのかごくごく飲めてしまう。おいしい。ぷはー、と飲み干してため息をもらすとコンサルがおかわりを注いでくれた。
     二杯目の麦茶を飲みながらライブラリで調べた経緯を説明すると、コンサルは何かを考えているのか表情パネルが僅かに右側に傾いた。
    「桃缶は代わりのものでもいいですか?」
    「桃缶はダメ?」
    「桃缶は桃の皮と種を取り除いてシロップ漬けにしたものを、長期保存を可能にする為に缶詰にしたもので、とても甘いものです。あまり甘くない方がいいでしょう?」
     塩野がこくりと頷くのを見て、コンサルは調理器に物理ハンドを向けた。
    「なら桃のコンポートにしましょう。シロップではなく砂糖で煮たものです。桃缶よりは甘さひかえめですよ」
     調理器にレシピを入力するコンサルに、塩野は思い出したように声を上げた。
    「あとりんご……!」
    「りんごはカットした方が食べやすいですよね。久しぶりにうさぎにします?」
    「する!」
     調理器の前でそわそわしていた塩野が興奮気味に振り向くと、コンサルは既にりんごの皮をくるくると剥きだしていた。何だか楽しそうに見えたから、ちょっと言いづらかったけど。
    「コンサル……皮全部剥いちゃうとうさぎできないよ」
    「……そうですね。すみません塩野、これは夕飯のデザートにしてもいいですか?」
    「もちろんいーよ!」
     

     うなされながら目を開けると、汗を拭ってくれていたのかすぐ側にいたコンサルが呼びかけてきた。
    「佐藤」
    「んー……」
     いらない、というふうに首を振る。
     だって食べたくないのだ。お粥がダメなら猫汁にしますか、とか言うから朝は無理して少し食べたけど、今はお粥も食べたくない。喉は渇くけど何も通る気がしない。
     水だけ受け取るとシェルの入り口に背を向けるように丸くなる佐藤に、コンサルはもう一度声をかけた。
    「佐藤、塩野がお見舞いを持ってきてくれたんです」
    「……お見舞い?」
    「桃とりんごだそうです。せっかくですから一口だけでも食べてみませんか」
     重い体を何とか起こして物理ハンドが持つお盆の上を見ると、半円の白いものがスープにひたされている透明な器と、切り込みの入った赤い皮がついた薄黄色のかけらが並べられた白い器。
     差し出されたフォークで半円の桃を刺す。柔らかい。おそるおそる果肉をかじる。しっとりと冷たくて甘い。熱で渇いた喉と胃が少しずつうるおっていく。
     赤い皮のついたりんごを噛むとしゃく、と音がした。ほのかに甘くてみずみずしい。食欲がなくてお粥のような柔らかいものばかり口にしていたからか、しゃくしゃくとした歯応えが新鮮で気持ち良かった。
    「たくさん食べられましたね」
    「でも半分残ったから……後でまた食べる」
     では残りは冷やしておきましょう、そう言って片付けを始めたコンサルの動きを佐藤はぼんやりと眺めていた。喉と腹が落ち着いたからか、とても眠い。
    「佐藤、眠そうですね。寝る前に薬を飲んでください」
    「ん……」
    「良かったですね。お見舞い来てもらえて」
    「……うん」
    「佐藤の具合はどうなのか、すぐ治るのか塩野はとても心配していました。私は塩野が怪我をした時の佐藤を思い出しましたよ。早く治して、元気になってお礼を言いましょう」
    「……ん……」
     先程まで熱にうなされて眠るのも辛そうだった佐藤が、だいぶ落ち着いたのか穏やかな寝息を立てている。
     心配してくれる友人が出来て良かったですね。差し出された好意を素直に受け取ることが出来るようになりましたね。
    「おやすみなさい、佐藤」


     私の大事な担当人類。
     私は、あなたの心が豊かに育っていくことが嬉しくてなりません。だからあなたの友人と、友人の担当のコンサルに密かに感謝しているのです。
     あなたを心配して、大事に思ってくれて、ありがとう。


      fin.
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