【クラージィ】
仕事上がりにノースディンと待ち合わせると、クラージィはそのまま彼と連れ立って、彼の屋敷で泊まりとなった。明日は休みだった。
日が落ちて、クラージィは一人、目を覚ます。窓を開け、鎧戸を僅かに開けて外を覗くと、しとしとと雨が降っていた。部屋を出ると、ここの住人の白猫が足元に寄ってきた。ひとしきり顔周りを撫でて解放すると、猫はにゃうーんと鳴きながら階段をおりていく。後を追うようにクラージィも寝間着のまま階下におりて、洗面所に向かった。顔を洗って吸血鬼用の鏡を見れば、見慣れた自分のモジャモジャ頭は、湿気を帯びてぼふぼふに膨らんでいる。日本に来て増えたこの現象も、変身能力の応用で出勤用に髪を抑えることも、すっかり慣れた。
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