幸福に漬かる「今年もこの季節がやってきましたなぁ」
「うん」
毎年このくらいの時期になると父さんの遠縁の農家から規格外の梅が送られてくる。その大半はある処理をして送り返すのだけれど、その一部がお礼として手元に残った。
今年も例にもれず大量の段ボールが送られてきて、ぼくと一松兄さんは楽しみ半分面倒半分につなぎの袖をまくる。いつの間にかこの慣習の当番にされたぼくと一松兄さんは、勝手知ったる手つきで早速処理に取りかかった。
まずは竹串を使い梅のヘタを一つ一つ取り除いてゆく。手間は手間だけれどもなかなかどうして地味で妙な面白さがある作業に、ぼくらは暫し没頭した。
しかしそれも三十分もすると集中力が切れてくる。
「はー…。めんど…」
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