これも運命 の中間 気付けば喫茶店の窓から見える景色はすっかり闇に溶け込んでいた。青年との会話は時間を忘れさせるほど楽しかった。趣味が合うというのもあったが、会話のテンポが心地よいのだ。年上の自分がそう思うなら、きっと若者が気を遣った結果だろう。素直に相性が良いと受け取るほど浮かれてはいない。自分の落ち度を認識すると、すこしだけ安心した。
「そろそろ解散しましょうか」
「ああ、もうこんな時間か。このまま夕食でもどうだ?」
「やめておきます。カフェくらいは、という話だったでしょう」
「いいじゃないか。どうせ今日は外食するつもりだ。ひとり寂しく過ごすより、貴方と話しながらの方が絶対良い日として終えられる」
駄目か、と上目遣いで伺われると困る。顔の良さを分かってやっているのだろう。シャリアはあえて彼の肌のきめ細かさを意識した。20歳になったばかりの若者。美人局。絵画販売。壺かも。こんなに美しい青年が自分に心を傾けるはずがない。随分と長居してしまったが、名残惜しい気持ちで別れるくらいが良い思い出には丁度いいのだ。駄目です、と答えて机に置かれた彼のサングラスを手渡した。これ以上問答するつもりはないと示したつもりだった。青年は受け取ったが、説得に応じた様子はなく、むくれている。
3590