お前が悪いんだ、と言われたので、ああ自分が悪いのか、と思った。
ネロの髪と瞳の色は、実の母親とそっくりらしい。お前はあの女によく似ている、と。夜毎うっとり囁いて、粘ついた視線で幼いネロの身体を弄った。父親にいいようにされているネロを、血の繋がらない歳の離れた兄弟は見て見ぬ振りをしていた。興味がないのだ。互いに同じ家に住んでいるだけの他人。ネロとて目の形も肌の色も似つかぬ兄弟にさして関心はなかった。
女のように肩の下まで伸ばした髪。着古した丈の長いシャツ。歪んで骨張った、硬い大人の掌が肌をべたべたと触るのは気持ちが悪かった。けれども、父親が言うには、ネロが悪いらしい。それならば仕方がないか、と、抵抗する気にもならなかった。拒んだところで代わりにやってくるのは暴力だ。痛いのも気持ちが悪いのもどちらも嫌だったが、後者は我慢していれば終わりが訪れる。比べて少しでもマシな方を選んでただひたすら玩具として黙っていた。
5505