Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    g3*.❁

    書いたものをあげるだけ。
    短文多め。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    g3*.❁

    ☆quiet follow

    ガスマリ。2020年マリオンBDネタ。
    別サイトからの転載。

    「…よう」
     軽い足取りで向かったノヴァの研究室のドアを開けると、そこには薔薇の花を飾っているジャックとノヴァ、そしてクラッカーを持ったジャクリーンと、それから──
    「なぜオマエがここにいる…」
     困ったように空笑いをしながらマリオンに挨拶をする、ガストの姿があった。

     *

     本日9月21日はマリオンの誕生日だ。朝からエリオスタワーにはファンから送られてきた誕生日プレゼントが山積みになっており、それをタワー内のスタッフやジャックがせっせとノヴァの研究室に運んでいる姿が他ヒーローたちから目撃されていた。
     なぜ、マリオンの部屋ではなくノヴァの研究室なのか。それは、送られてくるプレゼントのほとんどが薔薇の花とホットケーキミックスの類だからである。
     マリオン自身は公言していないが、街中でパンケーキを食べるマリオンの姿は何度もファンに目撃されており、そこから『マリオンくんはパンケーキが好き!』という憶測(実際、憶測ではなく事実)がファンの間で広まった、ということだ。
     プレゼントに生物は送れないということで最終手段として、ファンはパンケーキの材料を送ってくるのだろうが、マリオンにとっては既製品を送られることよりも、よほど嬉しいプレゼントだった。

    (これだけ材料があれば、今年もノヴァにパンケーキを作ってもらえる…)
     今朝、タワーの入り口で見たプレゼントの山を思い出し、マリオンは僅かに上がった口角を隠すこともせずノヴァたちの待つ研究室へと足を運んだのだった。

     *

    「いやぁ~、なぜって言われても…俺自身もなんでココにいるのかよく分かってなくてだな」
     入室直後は柔らかかったはずのマリオンの表情がどんどん険しいものになっていく。その上ガストの歯切れの悪い返答に、さらにマリオンは顔を大きく顰めた。
    「意味が分からない。用がないならさっさと、」
    「ガストちゃまは、ジャクリーンが呼んだノ~!」
     出て行け。と続くはずだった言葉が足元から聞こえてきた声に遮られる。下を向けばニコニコと見上げてくるジャクリーンが目に入り、マリオンはため息を一つ吐いてから静かにしゃがみこんだ。
    「ジャクリーン…どうしてコイツをここに呼んだんだ?」
    「えっとね、ジャックとプレゼントを運んでいる途中で、ガストちゃまに会ったノ!今日はマリオンちゃまのお誕生日だって伝えたら、お祝いしたいってガストちゃまに言われたカラ、ココに連れてきたノ!」
    「い、いや…!確かにおめでとうくらい言った方がいいかな、とは言ったが、まさかラボに連れてこられるとは思ってもいなくて、」
    「マリオンちゃまも、たくさんの人にお祝いされた方が嬉しいと思って、お招きしたノ!!」
    「…」
    (今日は他人に邪魔されることなく、ノヴァたちとゆっくり過ごすつもりだったのに…)
     2人の会話を聞く限り、ジャクリーンがガストを半ば強制的にココに連れてきたことは安易に想像ができた。ガストにあまり否はないのだろうが、マリオンはココまでノコノコついてきたガストを軽く睨みつけてから、再度小さくため息を吐き、ジャクリーンに向き直った。
    「ジャクリーン…ボクは家族に祝ってもらえるだけで十分なんだ。別に他人から祝われても嬉しくなんてないし何とも思わない」
     その言葉を聞いたガストは、果たしてどう思っただろうか。半強制とはいえ、マリオンを祝うためにここにきたことは間違いない。きっと不快に思っただろう。
     しかし、それは所詮、マリオンの頭の片隅で密かに湧き上がった疑問にすぎない。ガストがどう思ったのか。それはマリオンにとってさほど重要ではないのだ。彼にとって大事なことは、なによりも家族と過ごす時間である。
     別に不快に思われたって構わない。それ以上に貴重な時間を無駄にされた自分の方が不快に思っているんだから。と、これがマリオンの持論だ。
     そんなマリオンの言葉にしばらく黙っていたガストだったが、ははっ、と笑い声が聞こえてきたかと思えば、ジャクリーンの前にしゃがみこむマリオンに笑顔を向けた。
    「…そか。今日はマリオンにとって大切な日だもんな!家族との時間を邪魔して悪かった。俺は大人しく退散するよ」
    「…」
     わざとらしいガストのその笑顔は、どことなく寂しそうで。その身を潜めていた僅かな罪悪感がゆっくりと顔を出してきたことに居た堪れなくて、マリオンは堪らず床へと目を逸らした。
    「ガスト、急に連れてきてしまいスミマセン…部屋まで送りマス」
    「あぁ、いいよ。ジャックもまだ準備が残っているんだろ」
     そんなやりとりが入口から聞こえてくる。プシューとドアが閉まりガストがいなくなったことを確認すると、マリオンはようやく顔をあげ、ソファへと静かに腰掛けた。

    ──誕生日だというのに、気分は最悪だ。早くノヴァの作ったパンケーキが食べたい。

     そう思うのと同時に、マリオンが放った言葉の後に見た、ガストの寂しそうな顔が離れない。
    (っクソ、)
    「マリオン、あんな寂しいこと言っちゃダメだよ~」
     突然触れられた肩にかけられる声。マリオンが反射的に顔を上げれば、ずっと様子を眺めていたノヴァが少し困った顔をしながら微笑みかけてきた。
    「ガストくんも、マリオンを祝いたくてココに来てくれたことは紛れもない事実なんだから」
    「…でも、実際アイツに祝われなかった」
    「その前にマリオンがあんなこと言って追い返しちゃったからでしょ~!」
     やれやれといった様子のノヴァに、マリオンは僅かに唇を尖らせた。どうしてこんな気持ちにならなくてはいけないのか。これも全部ガストのせいだ。膝上で握りこぶしを作りながら若干荒々しい息遣いをするマリオンに、心配そうな顔をしたジャクリーンが、ぽてぽてと膝元へ駆け寄って来た。
    「マリオンちゃま。マリオンちゃまが悲しいお顔なのは…、もしかしてジャクリーンのせい?」
    「っ、違うよ、ジャクリーン。大した用もないくせに、ズカズカとラボまでやってきたアイツが腹立だしいだけ。ジャクリーンが気にすることじゃない」
    「…違うノ。ガストちゃまは、ちゃんと大した用事があってココに来たノ」
    「ん?」
     ジャクリーンの言葉にマリオンはよく分からないと疑問符を浮かべた。あのときガストは、『なんでココにいるのか自分でもよく分かっていない』と、たしかに言っていた。それは間違いない。なのに、用事があって来たとは、一体どういうことなのだろうか。
    「お祝いの言葉を言いに来ただけなんだろ?大した用じゃないじゃないか」
    「ううん。ジャクリーン、ガストちゃまにお願いしたノ。マリオンちゃまにお誕生日のプレゼントをあげてほしいって」
    「プレゼント?でもアイツ、何も持っていなかったと思うけど」
    「ははっ、ガストくんは何も、形あるものをマリオンに送ろうとした訳じゃないよ~」
    「ハイ。ジャックたちじゃ送れないカラ、皆でガストにお願いをしまシタ」
     口々かけられる言葉に、ますます意味が分からない、とマリオンが首を捻る。
    ──形のないプレゼント。そしてそれはジャックの口ぶりを察すると、ガストしかマリオンに送ることができないらしい。
     マリオンは少し考えて見たが、やっぱり何のことか分からない。そもそも、ガストからプレゼントが貰えなくても別に構わないのだから、こんなに悩む必要もないのだ。

    (ジャクリーンも、余計なことをしなくてもいいのに…)

     そういえば、前にも似たような感じでジャクリーンが余計なことをしたことを思い出す。そう、あれはたしか、サウスと同率1位を取ったLOMの後のことで…
    「──あっ」
     そこまで思い出し、マリオンは思わずソファから立ち上がった。そのまま衝動的に入口へ歩き出したが、扉が開いたところでピタリと足を止めた。なぜ、部屋を出て行こうとしたのだろうか。
    (ガストを追いかけようとした?まさか、ボクがそんなこと…)
    「今ならまだ、退室して間もない彼に追いつけると思うよ」
     そんなマリオンの心情を察したのか、それとも思いつきでそう言ったのかは分からない。
     マリオンが振り返れば、ノヴァが笑顔でこちらに手を振っていた。そんなノヴァを見て、マリオンは少し頬を赤らめながら、ふいと入口へと向き直した。
    「…そういえば、ボクもアイツに言いたいことがあったのを思い出した。ジャックたちもパーティの準備が途中だったみたいだし、さっさと用事を済ませてくる」
    「そっか。それじゃ、おれもマリオンのために、パンケーキを焼いて待ってるとするよ〜」
     そうノヴァが言えば、マリオンが小さく笑った気がした。背を向けているためノヴァからじゃ顔は全く見えないが、長年一緒にいれば後ろからでも表情くらい容易く察せる。
    「いってらっしゃい、マリオン」
    「いってらっしゃいナノ~!」
    「…いってきます」
     少々苦しい言い訳に何も言わず快く送り出してくれる様は、まるで全てを見透かされているみたいで照れ臭い。マリオンは3人に優しく声をかけてから、静かにラボを後にした。
     
     *

    「はああぁぁ…」
     廊下を歩きながら、ガストは盛大にため息を吐いた。理由はもちろん、先程までのやり取りが原因である。
    (いや、分かりきっていたことだろ。俺がラボにいたら、マリオンが不快に思うなんて)
     家族思いのマリオンのことだ。誕生日は身内とゆったり過ごすことくらい、ガストにも安易に予想できた。それでも、たまたま廊下で出くわしたジャクリーンたちに直接『お願い』をされてしまえば、マリオンに無下にされると予想できたとしても、それを無視することは出来なかった。
    (そもそも俺からのプレゼントを、マリオンが本当に喜んでくれるとは思ってもいないしな…)
     ジャクリーンは絶対に喜ぶと断言していたが、ガストは今までのことを思い返すかぎり正直、マリオン本人が喜んでくれるとは到底思えなかった。

    『別に他人から祝われても嬉しくなんてないし何とも思わない』

     そして、極め付けにこの言葉だ。遠回しにオマエなんてどうでもいいと言われた気がして、ガストはさらに肩を落とした。
     今までも散々あしらわれてきたが、今回はいつも以上にキツイ。祝いの言葉すら完全拒否をされるとは思ってもいなかった。いや、ガストの誕生日も祝う気はないとハッキリ言っていたくらいだ。きっとマリオンにとって、他人という存在は興味の対象外というレベルの話ではないのだろう。

    「そんなに他人と関わりたくないのかよ…」
    「おい」
    「うおぉ!?」
     そう口にした途端、背後からいきなり声をかけられガストは思わず声をあげた。
    「妙な声を出すな」
    「えっ…マ、マリオン!?」
     振り返れば、そこには先ほどからずっとガストの脳内を支配していた人物であるマリオンが、不機嫌そうにその場に立っていた。どうしてここにいるのだろうか。マリオンは今頃、ノヴァたちと一緒に誕生日パーティを楽しんでいるはずなのに。
    「なんで、」
    「…らない、をしろ」
    「え、…なんて?」
    「ッ、だからっ、!オマエのくだらない話をボクにしろと言っている!」
     唐突にマリオンの口から発せられた単語に、ガストは目を白黒させた。
    「くだらない話って、…もしかしてジャクリーンに聞いたのか!」
    「聞かなくても、それくらい予想がつく。大方ボクにその『くだらないお話』とやらを聞かせてやってほしいってジャクリーンに頼まれたんだろ?」
    「うっ…」
     まさにマリオンが言った通り、ガストは通路でたまたま出くわしたジャクリーンたちに『マリオンにくだらないお話をプレゼントしてあげてほしい』とお願いされたのである。
    「…このままじゃ、オマエにお願いをしたジャックとジャクリーンが悲しむから、わざわざ追いかけて聞きにきたんだ。まぁボクは興味ないけど、2人が悲しむ姿は見たくないから…」
    「いや、でもお前が聞きたくないって言うなら、無理に聞かなくてもいいんじゃないか?」
    「っ、聞きたいわけじゃない、けど、この前の話はくだらなすぎて悪くなかったし…、とりあえずっ!オマエの話を聞くまでボクはラボに戻れないから、早く聞かせろ!」
    「…ははっ、はいはい、分かったよ」
     ジャクリーンが言っていたことは、もしかしたら正しいのかもしれない。全く信憑性がなかったが、今のマリオンの反応を見る限り、これはパンケーキの時と同じようなリアクション。つまり『聞きたくないけど聞きたい』ということなのだろう。まぁ、これはガストの都合のいい解釈ではあるのだが。
    「でも、その前に言わせてくれ」
     まるで憑き物が取れたような気持ちだ。今ならすんなりと言える気がする。

    「誕生日おめでと、マリオン」

     さきほどラボで言えなかった言葉。ガストが微笑みながらそうマリオンに告げれば、マリオンは意表を突かれたかのように固まった後、ふいと顔を逸らした。

    「他人からの祝福の言葉とか…ほんと、くだらない」

     そう言ったマリオンの表情は、今までガストが見たことのないくらい柔らかなもので。そんなマリオンにガストは思わず目を見開いて、その顔を直視していた。
    「オマエ、何をジッと見つめている。言いたいことがあるならハッキリ言え」
    「あ、いや…っ悪りぃ。えっと、くだらない話だよな?」
    「そうだと言っているだろ」
     いつもの表情に戻ったマリオンに、ガストは慌てて話題を元に戻し、彼が所望する『くだらないお話』をし始めた。

    (…言えるわけねぇ〜ッッ!!)

    ──ふわりと笑ったマリオンが可愛くて、目を逸らすことができなかったなんて。

     先ほどの心底嬉しそうなマリオンの表情が脳内にこびりついて、暫くは彼の顔を見ることができそうにない。
     そんなガストの内心など知る由もないマリオンが、ガストの『くだらないお話』を聞きながら無意識に微笑んでいることに、マリオン自身はもちろん、ガストも気づくことは出来なかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    g3*.❁

    DONEガスマリ。ご都合サブスタンス。
    別サイトからの転載。
    ガストアドラーは冷や汗を流しながら考えた。どうしたら今この身に起きている事態を穏便に解決することができるのか。
     自身の身体に巻き付いている血液でできた赤い鞭。規則的に巻き付いてくれているのならまだ解きようがあるが、それが複雑に絡んでいるのだから手の打ちようがない。
     ただ、このような状態であったとしても、自身を縛っているこの鞭の所有者の気が済めば直ぐに解放してもらえることをガストは知っている。だから、無駄に慌てふためいて冷や汗など流す必要は普段なら無いはずなのだ。そう、普段と同じ状況なら。

    「くそ…、サブスタンスの影響か」

     ちょうどガストの首元から聞こえてきた不機嫌を体現したような低い声。いや、正確に言えば男性にしては高めの声なのだが、今のガストにとってそんなことはどうだっていい。

     普段なら絶対にあり得ないイレギュラー。
     それは縛られている理由が『しつけ』ではないということ。そして、絡まった鞭に縛られているのが『ガスト一人ではない』ということ。
     マリオンの右手にはしっかりとグリップが握られていることから、鞭の持ち主は当然マリオンであるはずなのだが、その持ち主もまた自身の 5922

    g3*.❁

    DONEガスマリ。2020年マリオンBDネタ。
    別サイトからの転載。
    「…よう」
     軽い足取りで向かったノヴァの研究室のドアを開けると、そこには薔薇の花を飾っているジャックとノヴァ、そしてクラッカーを持ったジャクリーンと、それから──
    「なぜオマエがここにいる…」
     困ったように空笑いをしながらマリオンに挨拶をする、ガストの姿があった。

     *

     本日9月21日はマリオンの誕生日だ。朝からエリオスタワーにはファンから送られてきた誕生日プレゼントが山積みになっており、それをタワー内のスタッフやジャックがせっせとノヴァの研究室に運んでいる姿が他ヒーローたちから目撃されていた。
     なぜ、マリオンの部屋ではなくノヴァの研究室なのか。それは、送られてくるプレゼントのほとんどが薔薇の花とホットケーキミックスの類だからである。
     マリオン自身は公言していないが、街中でパンケーキを食べるマリオンの姿は何度もファンに目撃されており、そこから『マリオンくんはパンケーキが好き!』という憶測(実際、憶測ではなく事実)がファンの間で広まった、ということだ。
     プレゼントに生物は送れないということで最終手段として、ファンはパンケーキの材料を送ってくるのだろうが、マリオンにとっては 5693

    recommended works