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    ガスマリ。ご都合サブスタンス。
    別サイトからの転載。

    ガストアドラーは冷や汗を流しながら考えた。どうしたら今この身に起きている事態を穏便に解決することができるのか。
     自身の身体に巻き付いている血液でできた赤い鞭。規則的に巻き付いてくれているのならまだ解きようがあるが、それが複雑に絡んでいるのだから手の打ちようがない。
     ただ、このような状態であったとしても、自身を縛っているこの鞭の所有者の気が済めば直ぐに解放してもらえることをガストは知っている。だから、無駄に慌てふためいて冷や汗など流す必要は普段なら無いはずなのだ。そう、普段と同じ状況なら。

    「くそ…、サブスタンスの影響か」

     ちょうどガストの首元から聞こえてきた不機嫌を体現したような低い声。いや、正確に言えば男性にしては高めの声なのだが、今のガストにとってそんなことはどうだっていい。

     普段なら絶対にあり得ないイレギュラー。
     それは縛られている理由が『しつけ』ではないということ。そして、絡まった鞭に縛られているのが『ガスト一人ではない』ということ。
     マリオンの右手にはしっかりとグリップが握られていることから、鞭の持ち主は当然マリオンであるはずなのだが、その持ち主もまた自身の鞭に身を封じられている。

    (おいおいおいおい…なんでこんなことになっちまったんだ!!!?)

     ガストと一緒になって鞭に絡まっているマリオンがジトりと睨みつけてくる。その距離は少しガストが俯けば顔と顔が触れてしまうほどの近距離で。今まで経験したことがないくらい密着しているメンターの身体の温もりを感じ、ガストは心の中で悲鳴をあげた。

     ✽

     時間は少し前に遡る。
     一日オフである今日、ガストは久しぶりに自室に引き籠ろうと思っていた。思う存分惰眠を貪ってから、飾ってあるモデルガンの手入れをし、それらを元に戻す前に少しホコリの被ったラックの掃除をする。
     きっと念入りに作業をしていたらあっという間に日が沈んでしまうだろう。そんなことを思いながらも、久しぶりに訪れるであろう趣味の時間にガストは逸る気持ちのまま一日のスケジュールを頭のなかで整理し、昨夜ベッドへと身を沈めた。


    「…い、…ろっ!…おい!」
    「ん…?なんだ、騒がしいな…、て」
     今朝は目覚ましをかけていないはずなんだが、なんて思いながら目を開けた瞬間、己の視界に入った人物を見てガストは飛び上がるように上体を起こした。顔を少し上げれば見慣れた藤紫の瞳と目が合う。
    「ま、マリオン…!?」
    「ようやく起きたか。全く、ボクが声をかけたら一度で起きて返事をしろ」 
     予想外の人物が部屋を訪れたことに対してガストは困惑していた。自身が忘れているだけで、何か彼と約束をしていただろうか。しかし、思い返してみてもそのような約束をした覚えはない。
     ふと隣の部屋に目をやってみたが、レンの姿は既になかった。オフの日は何やら本を手に持ち、そのまま外へ出かけていくことが多いので、おそらく今日も図書館だろう。
     朝の弱いレンよりも起きるのが遅いということは、もうお昼ごろなのだろうか。さすがに寝すぎたな、とガストがチラリと時計に目を向ければ、時刻は朝の十時。普段に比べればかなり遅い時間ではあるが、休みの日なのだからこれくらい許容範囲だろう。
    「そんで、なんでマリオンがここに…?てか、俺らの部屋に来ること自体珍しいってのに、オフの日にわざわざ起こしにくるなんて、」
    「ボクが部屋にやってきたら何か都合でも悪いのか?」
    「誰もそんなこと言ってねぇだろ…。それより、何か用があるから来たんだろ?」
     マリオンの言葉に苦笑しながら問いかければ、マリオンは素早くインカムを装備し、自身の武器である鞭のグリップを取り出した。
    「え…?いや、待て。俺なにかしたか?そんないきなり武器なんて持って、」
    「違う。この部屋にサブスタンスが侵入したという報告を受けた。オマエは寝ていたから知らないだろうが、先程司令からノース研修チーム宛てに通達がきたから自室にいたボクが駆けつけにきた」
    「え、サブスタンスだって!?」
     予期せぬ言葉にガストは素早くベッドから抜け出した。まさか自室に災害をもたらす恐れのある物体がいるなんて。
    「けど、出現したのはサブスタンスだろ?ドクターはどうしたんだ?」
    「ヴィクターは朝早くからタワーを出ている。ヤツにもサブスタンス出現の報告がいっているはずだから、直ぐに戻ってくるとは思うけど、その前にボクが回収するから問題ない」
     既にヒーロースーツに着替えているマリオンを見て、ガストも直ぐにサイドテーブルに置いてあった自身のインカムを手にし、ヒーロースーツに着替える。
     マリオンによるとレベルは2。大したレベルでないうえに出現場所も本日オフのヒーローの自室であったことから、部屋の持ち主たちである自分たちにのみ伝達がいったのだろう。
    「しかし、どこにあるんだ?サブスタンスらしき物体なんて見当たらないんだけど」
    「そんなのボクのヒーロー能力で四方八方を攻撃すれば済む話だ。見つからないなら視界を遮るものを取っぱらえばいい。ひとまず、オマエの部屋を片っ端から攻撃する」
    「はっ、いやいやまてまて!!さすがにそれは困るんだけど!?俺の部屋が滅茶苦茶になっちまう…!!」
     先程まで自身が身を沈めていたベッドやラックに並べられているコレクションたちがマリオンの手によってボロボロにされるのだけは何としても避けたい。そんな惨状を阻止しようと説得するためにガストはマリオンの腕を掴んだ。
    「ッ離せ、ガスト。鞭で打たれたいのか?」
    「それも勘弁してほしいんだけど…いや、この際打たれて済む話ならいくらでも打ってくれて構わない。だから、部屋で鞭を振り回すのはやめてくれ…!せめて外におびき寄せて、」
    「うるさい黙れ。そんなに鞭で打たれたいのならお望みどおり鞭打ちしてやる。歯を食いしばれ」
    ──バシンッ
     グリップから伸びる真っ赤な鞭が部屋の床を叩く。マリオンが軽く腕を振れば、寸分の狂いもなく鞭の先端がガストの身体を叩きつける。と、振り上げられた相手も振り上げた本人も、当然そう思っていた。
    「…?」
     やってくるはずの衝撃が一向に訪れない。目を瞑って構えていたガストが静かに目を開けると、グリップから伸びた鞭がまるで意思を持っているかのようにグネグネとうねっている。
     鞭を操っているはずのマリオンも、予想外の出来事に困惑しているのか即座に反応できずにいれば、鞭は先端をマリオンに向けてそのまま勢いよく襲いかかってきた。
    「マリオン!」
     咄嗟に声をあげ、鞭から庇うようにマリオンの身体に覆いかぶさるその行動は、ほぼ無意識下からくるものだった。
    「なっ…!?」
     しっかりとマリオンの身体を正面から抱きしめたガストにマリオンが小さく声をあげるが、今はそんな抗議の声に応えるよりもマリオンを庇うことが最優先だ。
     鞭打ちなら嫌というほど慣れている。自分がくらうほうがダメージは少なくて済むだろう。そう思っていたガストだったが、伸びてきた武器はガストたちの想像していたものとは少し違った動きをみせた。
     シュルルと音を立てて二人の周りを回転し始めたマリオンの武器。あっ、と思ったときには既に遅くて、二人はそのままグルグルと身体を縛られてしまった。
    「嘘だろ!!!? って…痛ってぇ!」
     想定していなかった動きに思わず声をあげたガストの右足がズキズキと痛む。どうやらマリオンに足を思い切り蹴られたらしい。
    「うるさい。大声を出すな」
     痛む足を擦ることもできないガストが痛みに耐えていることなど気にもせず、マリオンは冷静に周りを見渡してみる。共有クローゼットの中から僅かに覗き見える青色の物体を見つけ、マリオンは小さく舌打ちをした。
    「くそ…、サブスタンスの影響か」
     どういう効果をもたらすサブスタンスかまでは分からないが、仮に血液に反応するサブスタンスなら、マリオンのブラッディローズではあのサブスタンスは倒せない。
    (だからといって、どのようなサブスタンスなのか分からない状態でヒーロー能力を使わず戦うとなると、それなりのリスクが伴われるな…)
     そんな分析をマリオンがしていることなんて露知らず、ガストは内心気が気じゃなかった。目下に見えるキレイな赤髪に中性的な顔。相手が男であることは重々承知しているが、それでも間近でみるマリオンの顔は女性のように美しく、ガストは冷や汗が止まらない。
    (おいおいおいおい…なんでこんなことになっちまったんだ!!!?)
     そんなガストの内心なんて知る由もないマリオンは突然顔色が悪くなったガストをにらみ、小さく舌打ちをした。なぜ急に顔色が悪くなったのか、少し気になるところではあるが、今はそんなことを思っている場合ではない。
    「…ガスト、風を起こせ。状況を脱却する」
    (不本意だけど、今はコイツの能力でこの拘束を解くのが先決だ。ボクのヒーロー能力が使えないとなると、ボクがガストを従わせて戦う。ホント、不本意だけど…)
    「っ!わ、分かった!」
     マリオンの意図を読み取ったのか、ガストは我に返ったように気を引き締め、風を纏わせた。そのまま風を起こしながら、自分たちを拘束しているマリオンの鞭を風で吹き飛ばすため、範囲を限定させようとさらに意識を集中させる。
    (…よし、これなら拘束を解くことができそうだ)
     しかし、そんな二人の思惑も次の瞬間には風のように吹き飛ばされてしまうことになる。
     当初の予定通り、ガストのナイトホークで風を起こすことには成功した。だが、その風が突然ガストの意志に反して暴れだしたのだ。
    「ちょ、うおぉ!?」
     身体が軽く宙に浮く。慌てて能力を止めようとしたが、とき既に遅し。軽く浮いた二人の身体は体制を整えることもできず、そのまま横倒しになった。
    「っ!」
     幸い倒れた場所がガストのベッドの上だったおかげで、身体を地面に打ち付けることはなかった。
    「……」
     だが、痛みに悶えて思考を停止させていた方がよかったかもしれない…と、ガストは自身とマリオンの体制を見てそう思った。
     体重のせいか、重力に倣うように先にベッドに沈んだガストの上にマリオンがうつ伏せの状態で乗っかっている。サラリとマリオンの前髪が首元を擽り、胸板には先程までとは違いマリオンの身体がしっかりと密着していた。
     正直、それだけでもかなり焦ってはいるが、問題は全く動かない上半身ではなく、締め付けの弱い比較的自由に動かせる下半身だ。
    「くそっ!ガスト、さっさと上体を起こすぞ!」
    「……」
    「おい!聞いているのか!?」
     胸元からマリオンの怒声が聞こえてくるが、ガストはそれどころではなかった。マリオンが藻掻くたびに動く足。その足がガストの足を擦る度に、なんとも言えない感情に脳が支配されてゆく。そんなマリオンの言葉を無視するガストにしびれを切らしたのか、マリオンは強引に自身の膝を立て起き上がろうと、ガストの股下にある片足に力を入れた。グググ、と徐々に股の間に食い込んでくるマリオンの膝に、ガストはハッとし、全力で制止の声をあげた。
    「ま、まってくれ!起こす!起こすから動かないでくれないか!?」
    「オマエ…聞こえていながらボクのことを無視していたのか」
    「それはマジですまないと思ってる!後でいくらでも説教してくれて構わねぇから…とりあえず、膝をもとの位置に戻してくれないか…?」
    「はあ?」
     目が泳ぎまくって一切視線が交わらない上に、なぜか顔が赤く染まっているガストにマリオンは不機嫌な声を上げる。だが、静止したおかげか先ほどまで聞こえてこなかった音がマリオンの鼓膜を響かせる。
     ドクドクと凄まじい速さで心臓が脈を打つ音。その音がガストの胸元から聞こえているのを理解した瞬間、マリオンはゴクリと生唾を飲み込んだ。自身の立てた膝に、何かピクリと動いたモノが当たった気がする。いや、気のせいかもしれないが、一度そう思ったらそうとしか思えなくなり、マリオンは静かに膝を元の位置に戻した。
    「……」
     流れる沈黙。そこに聞こえてくる二つの鼓動。暑いと感じてきた身体は、一体どちらの熱が原因なのだろうか。

     ガストが少し俯けば、心なしか顔を赤く染めるマリオンの姿があった。軽くて小柄な体躯。ほんのり香るローズの匂いは彼の趣味なのだろう。そんな薔薇の香りに誘われるように、ガストはマリオンの頭に自身の腕を伸ばした。
     頭に触れた瞬間、マリオンの身体がピクリと反応したが、とくに抵抗する素振りはない。初めて触るマリオンの髪は想像以上にサラサラで、髪を掬うたびに薔薇が舞うように上品な香りがガストの鼻先を擽った。
     ずっと触れていたい。そう思ったガストだが、ふとこの状況に違和感を感じ、手の動きを止めた。
    ──どうして自分はマリオンの頭を触ることができているのか。
     ゆっくりと自身の腰あたりを確認してみると、いつの間にか上半身を拘束していたはずの鞭が解けていることに気づく。先程までクローゼットにいたはずの、サブスタンスの姿もない。
    「? …っ!」
     手の動きが急に止まったガストを不審に思ったマリオンも、ようやく状況を理解したのか凄まじい勢いで上体を起こし、ガストの上から退いた。
     突然なくなった温もりに声を出すこともできず、スタスタと何事もなかったように出口へと歩いていくマリオンを、ガストは見つめることしかできない。
    「…どうやらサブスタンスが外へと移動したみたいだな。能力の特性を理解したから、後はボクひとりで片付ける」
    「えっ、いや、俺も一緒に…」
    「ついてくるな!」
     扉の前で立ち止まったマリオンの背中に声をかければ、語気の強い言葉を投げかけられた。怒っているのだろうか。確かに、命令を無視したり、急に頭を撫でたりしたことはマリオンの逆鱗に触れていてもおかしくはない。
     振り返ることもなく颯爽と出ていくマリオンの姿を追いかけることもできず、ガストはひとりベッドの脇で佇んでいた。
    (やっちまった…)
     そう心の中で反省はするものの、脳裏にこびりついて離れないのは頭を撫でたときのマリオンの表情で。顔を赤くしながらも、されるがままに撫でられるマリオンがいつも以上に幼く、そしてとても可愛く愛おしかった。
     今夜、眠りにつく前に再び先程の出来事を思い出すだろう。
     そして、それがガストだけでないことを、この時はまだ誰も知らない。
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    g3*.❁

    DONEガスマリ。ご都合サブスタンス。
    別サイトからの転載。
    ガストアドラーは冷や汗を流しながら考えた。どうしたら今この身に起きている事態を穏便に解決することができるのか。
     自身の身体に巻き付いている血液でできた赤い鞭。規則的に巻き付いてくれているのならまだ解きようがあるが、それが複雑に絡んでいるのだから手の打ちようがない。
     ただ、このような状態であったとしても、自身を縛っているこの鞭の所有者の気が済めば直ぐに解放してもらえることをガストは知っている。だから、無駄に慌てふためいて冷や汗など流す必要は普段なら無いはずなのだ。そう、普段と同じ状況なら。

    「くそ…、サブスタンスの影響か」

     ちょうどガストの首元から聞こえてきた不機嫌を体現したような低い声。いや、正確に言えば男性にしては高めの声なのだが、今のガストにとってそんなことはどうだっていい。

     普段なら絶対にあり得ないイレギュラー。
     それは縛られている理由が『しつけ』ではないということ。そして、絡まった鞭に縛られているのが『ガスト一人ではない』ということ。
     マリオンの右手にはしっかりとグリップが握られていることから、鞭の持ち主は当然マリオンであるはずなのだが、その持ち主もまた自身の 5922

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    DONEガスマリ。2020年マリオンBDネタ。
    別サイトからの転載。
    「…よう」
     軽い足取りで向かったノヴァの研究室のドアを開けると、そこには薔薇の花を飾っているジャックとノヴァ、そしてクラッカーを持ったジャクリーンと、それから──
    「なぜオマエがここにいる…」
     困ったように空笑いをしながらマリオンに挨拶をする、ガストの姿があった。

     *

     本日9月21日はマリオンの誕生日だ。朝からエリオスタワーにはファンから送られてきた誕生日プレゼントが山積みになっており、それをタワー内のスタッフやジャックがせっせとノヴァの研究室に運んでいる姿が他ヒーローたちから目撃されていた。
     なぜ、マリオンの部屋ではなくノヴァの研究室なのか。それは、送られてくるプレゼントのほとんどが薔薇の花とホットケーキミックスの類だからである。
     マリオン自身は公言していないが、街中でパンケーキを食べるマリオンの姿は何度もファンに目撃されており、そこから『マリオンくんはパンケーキが好き!』という憶測(実際、憶測ではなく事実)がファンの間で広まった、ということだ。
     プレゼントに生物は送れないということで最終手段として、ファンはパンケーキの材料を送ってくるのだろうが、マリオンにとっては 5693