夜明け前―――それは、湿度の高い夜。
鍛錬中の猗窩座はあることに気がついた。
もわっとした張り付くような空気に混じり感じた血の匂い。
そして、聞こえた声。
「ちっ…」
間に合わない、とわかっているのに助けを求める女性の声に猗窩座は駆け出した。
下級の鬼が、女性に乗り掛かり痛ぶるようにいくつも串刺しにしていっていた。
直ぐには死なないように。
「醜い」
鬼になれたというのに、するのがこんなこととは。
情けない。
そして俺に全く気がつかないあたり、鬼狩りがくればすぐに消されるような鬼。
そんな鬼、いる必要はないな。
そう思い即断した猗窩座は静かに近付くと、指一つでその鬼の首を落とした。
鬼は己に何が起きたかもわからぬうちに消えていく。
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