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    pixivで連載してたフロリド再録本「Devlilshness Boy」の書き下ろし、「“My”Sweetness boy」のフロ視点ver.です。原稿やってるとき結局お蔵入りしたやつなんだけど、データ探してたら出てきたので…気が向いたら書きたい

    “Your”Sweetness boy  視界の隅で黙って光ったスマホを手に取る。他ならぬ金魚ちゃんの部屋で無粋な音を鳴らしたくないがために、オレはスマホをサイレントモードに設定していた。もし画面を伏せっていれば通知に気づくことはなかっただろう。
     スマホに表示されていたのは、アズールからのメッセージ通知。
    【今月にあるモストロ・ラウンジの外部解放日、オープンラストで出勤お願いします】
     差出人はともかく、内容を見たオレはうえぇ、と変な声を出しそうになって、結局すんでのところで堪えた。しつこいようだけど、ここは金魚ちゃんの部屋だし。
    【先日の件、忘れていませんよね】
     まだ既読も付けてねえのに、ダメ押しみたいなメッセージが追加で届く。
     そう、少し前に金魚ちゃんとパンケーキを食べに行くために急遽休みをもぎ取った対価がこれだった。あれからは本当に色々あって、期間が空いたのもありすっかり忘れていたところだった。終わり良ければすべて良し、って言うじゃん。
     しかも今月って言ったってあと何日もねーし。なんかテキトーな理由探してゴネる隙もねーじゃん。それを見込んでこのタイミングで言って来たんだろうけど。
     意を決してルームを開き、「わかった」とだけ入力、そのまま返信する。ついでに時刻を確認すると、消灯時間がすぐそこへと迫っていた。
     ——いっけね。
    「金魚ちゃん。オレ、そろそろ寮に帰るね〜。また連絡するから」
     寝そべっていたベッドから飛び起きて、窓に手を掛ける。
    「ああ……フロイド、気をつけて」
     すると金魚ちゃんはオレを見送ろうと慌てて机を立った。すぐそばにやってきて、どこか寂しそうな瞳でこちらを見つめる。
     それが、あんまりにもかわいくって。思わず抱き寄せそうになったけど——ギリギリガマンして笑顔を作るのに留めた。
     やっと、やっとの思いで振り向いてくれた金魚ちゃん。絶対つまんねえヘマして嫌われたくないし、なによりも大切にしてあげたい。
     そりゃ〜オレだってちょっとだけ、金魚ちゃんとイチャイチャしてみたい気持ちもあるよ。でもそんなの迫って拒否されたらオレ、ショック受けちゃいそうだし。マジカメで繋がる前は避けられまくってたことを思うと、同じ部屋で時間を過ごせるってだけでじゅうぶん幸せに思えるんだよねぇ。
     いつかは一緒に夜を明かしてみたいけど、今日はまだ違う。オレは名残惜しむように手を振って、金魚ちゃんの部屋を出た。
     そこからハーツラビュルの城壁をぴょんぴょん飛び降り、鏡舎までを駆け抜けてあっという間にオクタヴィネル寮の自室に戻る。

    「ただいまー、ジェイド」
     部屋で出迎えたジェイドは眉間に皺を寄せ呆れた顔をしていた。
    「おかえりなさい、フロイド。今日こそ帰ってこないと思っていました」
    「あ?帰ってくるに決まってんだろ」
     凄んで、自分のベッドにどすんと身を預ける。ジェイドもまた自分のベッドにかけて、首を傾げてこう問いかけた。
    「そろそろキスのひとつでもできました?」
    「できるわけねーじゃん。手すら繋いでないし」
     面白がられている気配がしてぞんざいに返すと、ジェイドが息を呑んだ気配がする。
    「……なんだかおままごとみたいですね。ませた稚魚のほうがよっぽど進んでいそうです」
     それから嗾けるように嗤われた。ジェイドがわざと言ってんだとわかってて、嗤い返しつつ肩を回した。
    「オレは金魚ちゃんのこと大事にしてーの……。ジェイド、ケンカ売ってる?買うよぉ」
     狼狽えた様子のないジェイドは顎に手を添え、少しだけ考え込んだポーズをすると首を振った。
    「そうですねぇ……。やめておきます。顔を殴ると色々響くので」
     その言葉に戦意を喪失して、オレもごろんと寝転ぶ。
    「あ〜……それ。マジでだりーんだけど……ジェイド、オレの振りして出てよ」
    「お力になれずすみません。さすがの僕でも当日分裂するのは難しいです」
     オレは深く息を吐いた。やっぱジェイドも駆り出されてるんだ。
    「あーあ、また騒がしい雌がいっぱい来るのかなぁ……?ジェイドはだるくないの?」
    「僕は接客、楽しませてもらってますから。それよりあなた。自分のマジカメのコメント欄を見ていないんですか?」
     ジェイドの声が少しだけ上擦る。
    「あー?見てない。キョーミねえもん」
     天井を眺めたままテキトーに返した。視界の隅にいたジェイドは黙ってスマホを取り出すと、ちょいちょいと操作し寝っ転がってるオレの視界へずい、とそれを差し出した。
     ぱち、ぱちと何度か瞬きしてピントを合わせてからその画面を注視する。
    「うわ〜……なにこれ」
     ジェイドに促されて見つめた先。
     差し出されたスマホに映し出されていたのは——オレのマジカメのコメント欄だった。似たような文面に絵文字で着飾ったコメント。
     スマホをそのまま受け取ってスクロールすると、そんなコメントはひとつやふたつでなくいくつも連なっているのがわかった。
    「あなたにお熱の方から寄せられたコメントです。本当、今の今までまったく見ていなかったんですね」
    「うん、初めて見たぁ……。わ、このコメント、『今度会いに行きます』って書いてる」
    「最近は碌に更新してもないのに、健気なものじゃないですか。ああ、そう。アズールが『たまにはコメントを返して営業努力をしろ』と言っていましたよ」
    「あ?めんどくせーよ、やだ。そんな暇あったら金魚ちゃんとやりとりしたぁい。そうだぁ、メッセージ送っとこ」
     オレが意気揚々とスマホを取り出し、メッセージをつくる。
    「リドルさんとは上手く行っているんですか?」
    「上手くっつーか……今はヘマしねえことに必死って感じ……。でもオレは楽しーよ。金魚ちゃんと一緒なんだもん」
    「そうですか……。……あなたの独り善がりでないといいんですけどね」
    「……どういう意味?」
     尋ねても、ジェイドは笑うだけで答えてくれなかった。
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    MOURNINGpixivで連載してたフロリド再録本「Devlilshness Boy」の書き下ろし、「“My”Sweetness boy」のフロ視点ver.です。原稿やってるとき結局お蔵入りしたやつなんだけど、データ探してたら出てきたので…気が向いたら書きたい
    “Your”Sweetness boy  視界の隅で黙って光ったスマホを手に取る。他ならぬ金魚ちゃんの部屋で無粋な音を鳴らしたくないがために、オレはスマホをサイレントモードに設定していた。もし画面を伏せっていれば通知に気づくことはなかっただろう。
     スマホに表示されていたのは、アズールからのメッセージ通知。
    【今月にあるモストロ・ラウンジの外部解放日、オープンラストで出勤お願いします】
     差出人はともかく、内容を見たオレはうえぇ、と変な声を出しそうになって、結局すんでのところで堪えた。しつこいようだけど、ここは金魚ちゃんの部屋だし。
    【先日の件、忘れていませんよね】
     まだ既読も付けてねえのに、ダメ押しみたいなメッセージが追加で届く。
     そう、少し前に金魚ちゃんとパンケーキを食べに行くために急遽休みをもぎ取った対価がこれだった。あれからは本当に色々あって、期間が空いたのもありすっかり忘れていたところだった。終わり良ければすべて良し、って言うじゃん。
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