さよならフェザー「あれ」は誰にでも等しく降りかかる。
「……思いながらも他人事でー」
北村想楽の呟きに五七五のはじめの言葉はない。声に混ざる羽ばたきの中で、古論クリスは想楽の手を握っていた。
体に羽が生えて飛び立つ奇病に想楽が冒されて数ヶ月、想楽の両手の指はすべて羽ばたいた。突起のない手ではクリスの手を握り返すこともできず、想楽はクリスの感触を受け止めるばかりだ。
「あれ」の発症に伴い、Legendersはクリスと葛之葉雨彦の二人で活動していくことになる。二ヶ月後に控え、練習していたライブに出られないのだと思うと悔しいはずなのに、それよりもクリスの手を握り返せないことが惜しかった。
「……クリス、さん?」
「はい」
目は片方が飛び立ち、もう片方も羽を生やしているのか時おり瞳からはささやかな羽毛が落ちる。羽毛のせいか、片目は残っているはずなのに想楽の白く滲んでいた。
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