どうせ見るなら夏の夢 外向きの声色と笑顔で話す主の後ろに控えている。
「危険な任務であることはこちらとしても重々承知しておりますが、成功すれば歴史に残る偉業となるでしょう」
ここにいたのが俺で好かった。短刀連中なら液晶向こうの男の首は、長く見積もっても五時間以内には飛んでいただろう。この本丸、生憎と規範や規則を守る意識は平均点以下、道徳を知らないわけではないけれど、それよりも守らなくてはならないものがあれば無視できてしまう。欲望を耳障りのいい言葉で包んで、愛みたいに見せかける営みは人類史の十八番だ。ならば模して作られた自分達もやってみせるのが筋というものだろう、と、いつか主に語ったら「本丸にいた人間の先輩が悪かったかな」と眉を下げながら笑っていた。
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