煉炭SS① たっぷりの大根おろしと小口切りの葱が乗った温かい蕎麦を食べ終わる頃には、テレビの歌番組も終わりかけていた。
画面には色とりどりの衣装に身を包んだ大勢の出演者たちが煌びやかなステージに集まり、この歌合戦という名目の勝敗を今か今かと待ち構えているようだった。投票で決まったこの勝負は、どうやら今年は赤組が勝ったらしい。司会の女性が目を腫らしながら感想を述べていたかと思ったら、画面は急に静けさを取り戻し、厳かな鐘の音だけが響いていた。
リビングの壁にかかっている時計にちらりと目を向けると、時刻は23時45分を20秒ほど過ぎた頃だった。
今年も残すところあと15分足らずらしい。
「あ、除夜の鐘…。いい音ですね。」
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