The mirror of your soul 社交季節になると、ヘルマンの機嫌が悪くなる。
彼の立ち居振る舞いはおおよそその出自に相応しい。貴婦人方の社交室で、思想家や詩人と共に語らう姿は、出身階級の異なるアルヴァにとってすら想像に難くないが、しかし彼自身の魂は違うようだった。
「要は、彼女たちにとって、私の求める物理学の建設的な議論などどうでもいいんだ。かわいらしい声でさえずるからくり仕掛けの小夜啼鳥と同じで、賢いふりをするための装飾品でしかない。知的な響きのする室内楽として私たちに話をさせ、さも解ったような顔をして嘴を突っ込んでくる。物理学者でなくてもいい、私でなくてもいい、容貌の悪くない男であれば誰でも構わないんだ」
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