無題――キミがそんなに悲しむなんて思っていなかったんだ。
懐かしい夢を見た。遠い昔々の良き世界だったあの頃の。面倒事に巻きまれたあげく、隣で友人が手を叩いて笑っていた。あの時は、苛々していたのに今では酷く懐かしい。夢の束の間、振り返ればアーモロートが燃えていた。私の執念の始まりの日。もう流す涙も枯れてしまった。厭な夢だ、目を覚まそうと思ったとき、懐かしい声が聞こえた気がした。――ハーデス。久しく呼ばれていな名を、久しく聞いていない声に呼ばれた気がした。
『おはようハーデス。いや、エメトセルクと呼ぶべきかな』
知った声に飛び起きると、ちんちくりんになった友人が立っていた。
「ばかな、何故お前が……」
「キミがあんまりにも寂しそうだったから、ワタシが傍にいてあげなとって願ったんだ。そうして気が付いたらここにいたってわけさ」
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