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    Yuel_Kan

    @Yuel_Kan

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    Yuel_Kan

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    守護天節でアイメリクに吸血鬼の仮装させて野外着衣セッセっていうお題をもらったので書きました。書けました。途中まで読んでもらってOKもらったから多分えろい。
    アイメリクが難しいんだよ―――。
    あとユエルさんがちょっといつもより詩的。

    ##アイ光
    ##R18

    夜道にご用心 今年も守護天節の時期が訪れた。既に施設の子ども達にはお菓子を配り終え、その足でイシュガルドへと向かっていた。仮装は子ども達がするものだから、そう言って普段の戦闘服で行こうとしたら何故かがっしりとアリゼーとヤ・シュトラに肩を掴まれたかと思うとそのままずるずると奥の部屋へと連れ込まれたのだった。
     改めて自分の格好を見下ろしてみる。今は肩から掛けた外套に身を包んでいるが、その下は少し自分には露出が多すぎる衣装だ。肩も胸元もがっつり開いているが、子ども達は喜んでくれたようで助かった。が、次には向かうのはイシュガルド。蒼天街の子ども達にお菓子を配ることは変わらないが、かの地には顔見知りが多い。特に噂好きのエマネランに見つかればあっという間に噂は広がるだろう。彼に限って悪口を言われるということはないだろうが、それでもその噂が彼の人に伝わったらと思うと――ぶるりと身を震わす。穏やかな表情で優しい笑みを浮かべて女性を虜にしてしまう彼は存外欲深い。内に秘めたる熱が強いからこそあそこまで上りつめることができたのだろうと思うが、それは恋人に対しても向けられるらしい。いくら英雄と呼ばれようと一介の冒険者である私に見向きする者がいるかというとそんなことはない。
     依頼を受ければ東西南北離れていようが飛んでいき、戦場にも赴く冒険者と縁を結びたい等と思う人は、利権が絡む以外そうそういないだろう。しかし、そう思っているのは私だけのようで、「君はもう少し自分の魅力を知るべきでは」と苦言を呈された。ルキアまでうんうんと頷くものだから少数派なのは自分の方なのだろうとその場では苦笑いを返すに留まった。
    「ちょっと寒いな……」
     辿り着いた皇都は吹雪いてはいないものの、肌を刺すような冷たさが頬を打つ。イシュガルドの寒さは分かってはいたので懐にはファイアーシャードを詰めた携帯ポーチがあるがそれでも寒いものは寒い。エーテライトから街を見渡せばあちらこちらに守護天節の飾り付けが行われ、冷たい石づくりの街を彩っている。さて、蒼天街へ行こうとエーテライトに手をかざそうとした時、耳に着けたリンクパールが着信を告げた。
    『あぁ、ユエルかい? 僕だよ、フランセルだ』
    「こんにちは、フランセル。ごめんね、遅くなっちゃって。今イシュガルドに着いたから蒼天街に向かおうとしてたところよ」
    『忙しい中来てくれたんだ。君を責めるような真似はしないよ。迎えに行こうか?』
    「ううん、大丈夫。今からそっちに行くね」
     通信を切り、エーテライトに手をかざす。もっと早くに到着予定だったのだが、時間がずれてしまったのだ。予め遅れる予定は伝えていたものの、子ども達をがっかりさせたくないと少しでも早く、その足を進めたのだった。
     
         *
     
    「助かったよ。子どもたちも君にありがとうと言っていたよ。僕たちからも多大なる感謝を」
    「いいって、気にしないで。こういうの好きだから。皆が喜んでくれてよかったよ。仮装も凝ってて驚いちゃった」
     店売りとまではいかないまでも装飾も細かく、各々色んな仮装を披露してくれてこちらまで楽しませてもらったとフランセルに微笑めば、彼も嬉しそうに目を細めた。
    「自分達で作ったんだって。将来は君のように立派な職人になるんだって意気込んでいる子も大勢いたよ」
    「立派だなんて……。でも、向上心があることはいいことだね。……イシュガルドが平和へと進んでいる証拠だ」
    「うん、そうだね。……ところで、その……そろそろ上着を羽織っていた方がいいんじゃないかな? 体も冷えてしまうし」
     歯切れが悪そうに、視線を僅かに逸らしながら告げる彼の言葉に自分の格好を思い出した。
    「あー……ごめん、見苦しかったよね」
    「いや、いやそんなことはないよ! とても似合っているし、素敵だと思うよ。僕だってその、見惚れてしまったぐらいだよ」
    「それは褒めすぎじゃ「おや、少し来るのが遅かったかな」……アイメリク⁉」
    「アイメリク卿!」
     後ろからばさりと大きなコートが肩に掛けられる。慌てた様に礼をするフランセルに顔を上げてくれと告げたかと思うと、何故か後ろから長い腕にすっぽりと包まれた。驚いて見上げるとアイメリクの口から二本の牙のようなものが生えていた。
    「もしかしてアイメリクも仮装してきたの?」
    「あぁ、少し公務が押してしまってね。子ども達に私も菓子を配ろうと思ったのだが……。フランセル卿、これを後で子ども達に配ってくれないだろうか」
     アイメリクが手渡したのは大きな袋だった。中に入ってるものに圧迫されて凸凹している袋にはきっと沢山のお菓子が詰まっていることだろう。
    「明日も配る予定ですが、アイメリク卿は参加できなさそうでしょうか」
    「明日は残念ながら休暇を取っていてね。いい加減休んでこいとルキアに怒られてしまったのだ。それに、守護天節に訪れた可愛らしい魔女をもてなさなければならないのでね」
    「え?」
    「あぁ、なるほど。差し出がましいことを申しました。先程の無礼も申し訳ございません。ごゆっくり休暇をお楽しみください。ユエルも、また来てね」
    「ありがとう。さぁ行こうか」
    「え、ちょっと待って。何で二人納得して……アイメリク⁉」
     では、と一言告げ私の腰に腕を回したアイメリクはさっさとフランセルに背を向けてしまう。首だけ振り返ってフランセルを見ると、にこにこと微笑みながら手を振る彼の姿を見てしまった。
     
     
     人の話を聞かないままアイメリクは私の腰を抱いたままゆっくりとその歩みを進める。辺りはすっかり日が落ちたものの少し離れたところからはまだ子ども達のはしゃぐ声や大人たちの会話が聞こえてくる。皆、この祭りごとに浮かれているのだ。そんな様子を微笑ましく思いながら、長身の歩幅に必死に着いて行くとあることに気が付いた。
    「ねぇ、アイメリク。これどこに向かってるの?」
     ちらっとこちらを見遣る青い瞳。しかし問いに答える気はないようで、そのまま前を見据えると「あぁ、この辺りなら……」と呟いた。
    「えっと、ここ……?」
     少し奥まった路地裏。人通りもないながらも恐らく今日の為に設置されたのだろうストーブが僅かに足元を照らしていた。てっきり彼の屋敷に行くものだと思っていたから何故こんなところで歩みを止めたのか見当もつかない。戸惑ったように彼を見上げると嵌めていた手袋を外し、冷たくなった私の頬を優しく撫でた。
    「このまま屋敷に行っても良かったのだが、君には少し仕置きが必要なのではと思ってね」
    「は? え、何で……んっ」
     頬を撫でていた指はそのまま下に降り、コートの下に隠れた首筋をつつっと辿った。じんわりと指先の熱が凍えた肌を溶かすような、そんな感覚にぶるりと体を震わせる。ゆっくりと首を撫で、そのままむき出しの肩へと降り立った手は数度撫でまわすと鎖骨を指先でなぞった。ぞわぞわとした感覚は寒さからくるものか、それとも。
    「アイメリク、何で……」
    「君のその仮装は魔女かな? とても愛らしいね」
     質問に質問が返ってくる。彼の口角は愉し気に持ち上がっているが、その瞳には暖炉の火のような優しいものではない、じりじりと焼けつくような炎がちらついている。
    「あ、アイメリクはヴァンパイアの仮装なのね」
     視線から逃れるように先程気が付いた彼の口元をもう一度見て、そのまま衣装へと視線を移す。彼も分厚いコートを着ていたものの、その下には見慣れぬ衣装が広がっていた。肩に巻かれたマントはコウモリを模ったブローチを付けており、その下には少し胸元を開けたシャツとベストを着ていた。いつもはかっちり鎧を身に着けており、晒されることはない胸元が眼前に広がり咄嗟に視線を逸らそうとしたのだが、腰をぐっと引き寄せられそれは阻止された。
    「そうだね。ヴァンパイアは生者の生き血を、特に若い女性のものを好むという。君も気をつけた方がいいのでは?」
     顎をぐいっと持ち上げて視線を交わす。あぁこれでは蛇に睨まれた蛙ではないか。
    「若い女性なら誰でもいいの?」
     精一杯の強がりを胸にそう問いかければふっと彼の口から息が漏れる。その吐息さえ首筋にあたり擽ったい。
    「残念ながら私はこう見えて選り好みをするものでね。君のでないと満足出来ないのだ」
     そう言ってアイメリクは首元の飾りを外してみせると、普段よりも少し伸びた牙を私の首に柔く突き立てた。ちくっと痛むも牙が皮膚を突き破ることはない。そう分かってはいても本当に血を吸われてしまうのではないだろうか、そう思う気持ちは果たして期待なのか不安なのか。自分自身にもよく分からない。牙が皮膚から離れていくと今度は熱い舌がその傷跡をべろりと舐め上げた。唾液で濡れた首元は冷気で冷えるものの、彼の柔い唇に食まれてそのままじゅるじゅると音を立てて吸い上げられた。熱い吐息と暖かい舌の感触から逃れられず、響く水音は鼓膜さえも犯していく。まだ首元を吸われているだけだというのに体にかっと熱が灯り、思わず彼の服をぎゅっと握りしめながら声を上げてしまった。
    「だめじゃないか、ユエル。ここがどこだか忘れたかい?」
     唇だけ離して含み笑いをしながら問いかけるアイメリクをきっと睨みつけてもどこ吹く風である。長い指先を私の唇に押し当ててしーっと吐息と共に漏らしたかと思うと、大きく開いた胸元から手を差し込んで胸の飾りをぴんっと弾いた。
    「ひっ! ……んんっ」
    「こんなにもすんなり手が入ってしまうとは……。それに、君はすっかり興奮しているようだが、実はこういうのがお好みだったかな?」
    「そんなわけ……ん、んぁ……」
     きゅっと胸先を摘ままれ、そのまま指先でくにくにと捏ねられる。冷え切ってたはずの身体は徐々に熱を灯し、アイメリクのもたらす快楽に蝕まれていく。しかしすっかり彼に慣らされてしまった体はその程度で満足するはずがなく、いつの間にか彼に体を押し付けていた。
    「そんな物欲しげに見つめて……。どうして欲しいのだろうか、私の愛おしい魔女は」
     首と片方の胸以外わざと刺激を与えてこないくせにそんな意地悪を言うのだ、この人は。言ってごらんと促す瞳に反抗心を覚えるも、今ここで下手げに反抗してみせればどんな目に遭うか分からない。
    「そっちばっかりじゃなくて……こっちも触って……」
     まだむき出しにされていない方の胸に彼の手を誘導してみると、彼本来の白い歯が顔を覗かせた。欲しい刺激が与えられる、その考えが以下に浅慮だったかすぐに思い知らされた。
    「なるほど、君の望みはそれか。そうだな……。恋人からの望みを叶えてあげたいのは山々なのだが。言っただろう?『仕置きが必要』とね」
    「何言っ……ひゃあああっ!」
     胸元に置かれていた手はそのまま下へと降りて、私の尻尾を掴んで勢いよく扱いた。ぞくぞくっと背筋を駆けあがる快感に思わず悲鳴を上げてしまった。慌てて口を押えるも時すでに遅し。
    「あれ、なんか聞こえなかったか?」
    「そうか? どっかでお祭り騒ぎしてるんだろう。すっかり平和になったなぁ」
    「とか言って本当に魔物が現れたりしてな」
    「英雄様が来てるらしいし大丈夫だろ」
     少し離れた通りからそんな声が聞えてきた。まさか彼らも悲鳴の主がその英雄様本人だとは思わないだろうし、ましてイシュガルドのトップでもあるアイメリクと夜に紛れて情事に更け込んでいるなどと思ってもみないだろうし、そんなこと想像もされたくない。
     口を押さえながら止めてくれと首を横に振って見せるもアイメリクは微笑んだまま手の動きを止めてくれない。その上私の腕を片手で一纏めにし、長い足を私の股座に挟み込むとそのままぐっと持ち上げた。つま先が僅かに地面をかするほどの距離に吊り下げられた格好だ。腕を引っ張られると自然と胸が反り、彼の眼前に寒さと刺激でつんと立った乳首が差し出される。身を捩ろうとしても彼の拘束はそう簡単に解けず、体を捻れば敏感なところが彼の太腿に擦れてびくりと身を硬くする。そんな私の体を下から上へと視線を這わせ、やがてじっと見つめ合う瞳はどこか揺らめいていた。
    「君が強いのは十分理解しているさ。例え襲われそうになったとしても君に届く者はこの国にはいないだろう。しかし」
     アイメリクの視線は再びゆっくりと下降していく。視線が辿った場所は触れられているわけでもないのに、まるで熱い指先でなぞられているかのようにじりじりと皮膚が焼け付く。変わらず掌は私の冷たくなった太腿を撫で、時折下着の際を焦らすように撫ぜる。ぎゅっと脚を閉じればひやりと感じる冷たい感覚に、彼の視線ともどかしい手の動きだけで濡れてしまったのだと自覚してしまった。
    「君がそのような視線で見られてしまうことにすら嫉妬を覚える。そう言ったら君は失望するかい?」
     窺うような声音を浮かべながらもその表情を見れば分かってしまう。失望などするはずがない、と思っていることがばれているのが悔しい。ここでわざと失望するなどと言ってみようものなら、彼の好物よりもとびっきり甘く蕩けるような声で溶かしつくされるのだ。だからこう返すしかない。「ずるい」と。
     ほら、彼が綻ぶ様な表情を浮かべる。濡羽色の髪を月夜に照らしながら、恋人をこんな寒空の中で辱めておいてそんな表情をするのだ、ずるくないはずがない。
    「君はもう少し自分の魅力を理解してくれないだろうか。君の、ユエルのこんな姿を知るのは私だけでいい」
    「そう、思うならこんなとこじゃなくて……あんっ、や、アイメリク……んんんっ」
     突然脚を撫でていた手が下着をずり降ろした。服の下から響くぐちゅりという水音で自分がどんな状態なのかありありと分かってしまう。彼の指先はくちゅくちゅと入り口で遊んだかと思うとそのままずぶりと一本侵入してきた。咄嗟に上がってしまった声はアイメリクの唇に塞がれ、舌ごとじゅるじゅると吸い上げられてしまう。苦しくて、でも気持ちよくて体に力を入れれば彼の指をぐっと食い締めてしまう。踏ん張れないからか、快感を上手く逃すことは叶わず、あっけなく私は達してしまった。
     解放してもらえるだろうか。くったりと彼の肩に身を預けながら耳に届いたのは金属がかちゃりと擦れる音だった。
    「待ってアイメリク……っ‼」
     ぐちゅっと押し当てられるもの。それが与えてくるものを十二分に理解している体は期待にふるりと震えた。
    「言っただろう? これは仕置きだと」
    「ん~~~~~~っ!」
     衝撃で息が詰まる。抵抗しようとしてバタつかせた足はまんまと抱え上げられ、より深く彼のものを奥へと迎え入れてしまった。彼の拘束から逃れた腕は不安定な体を支えるために、首へと回し、ぎゅっとしがみつけば結合部からじゅぶじゅぶと卑猥な音が立つ。咥内で絡む舌先に思考ごと絡めとられながら、ただ与えられる快楽を享受するしかない。時折ぶつかる作り物の牙ですら快感を高める要素にしかならず、一瞬ここがどこだかも忘れてしまいそうだった。
    「っは……。今日は、一段と感じてくれているね。非日常的だからだろうか、それとも」
     好き放題にじゅるじゅると唾液を啜っていた唇は糸を紡ぎながら離れ、今度はがぶりと首に牙を立てられた。それと同時に下腹部にじわりとした熱が広がり、中に打ち込まれたものを締め付けてしまう。
    「催淫効果でもあっただろうか」
    「知らない、ば、かぁあっ……!」
    「しー。聞こえてしまうよ」
     鼻先を擦り合わせてそう微笑む彼の表情は先程とは打って変わって至極楽しそうにしてるのだから怒る気すら失せてくる。べろりと目元に浮かんだ涙を掬い上げ、塩辛いねと微笑んで見せる彼の表情は歳より幾分か幼く見える。これが彼本来の姿なのか、それとも私という存在のせいで変わったのかは分からない。それでも本人が少しでも気を抜くことが出来ているのなら、それは悪いことでは――。
    「考え事とは随分余裕だな、英雄殿?」
    「ぁ、ひぃんっ、んんっ、ン!」
     どちゅっと鈍い音を立てながら勢いよく突き上げられる。ミコッテの中では長身でもエレゼン族の彼にとっては子どものように軽いのだろう、簡単に抱えられ、そのまま奥深いところまで怒張をねじ込んでくる。自重もかかりいつもより奥深く、子宮口へとキスをする。乱暴なように見えてしっかりと私を落とすまいと力強く抱き締めてくれるのだから、そういう些細な優しさが愛おしいと思ってしまう私は相当彼に惚れこんでいるのだろう。ぱちゅんぱちゅんと静かで狭い路地裏に響く水音と通りの向こうから聞こえてくる喧噪はまるで二つの世界に分かたれているようなそんな感覚にさせる。こんな場所でこんな行為に耽っているというのにそれが妙に背徳感を呼び起こし、快感へと結びつく。気持ちいいと漏らしたくなる声を必死に噛み殺し、アイメリクの服の上からがりっと爪を立てれば、首に噛み付かれて甘い痺れをもたらす。
    「ユエル……」
    「ん……?」
    「愛してる」
     劣情の青い炎を宿した彼の瞳に射貫かれて再び中を食い締める。
    「愛し、てる……アイメリク、私の心も体も、あなたのものだよ」
    「……君には敵わない、な」
    「~~~~~~~っ!」
     声にならない悲鳴を上げてびくびくと体を震わせながら達する。強烈な快楽でぴんと伸びた尻尾がスカートの裾を押し上げても、とろとろに蕩けた蜜壺に埋め込まれ快楽の渦に呑まれまいといっそうの膨らみを見せながらも欲を吐き出すのをこらえる怒張も、生理的な涙を頬に零して上気した頬を冷やしていく英雄の情けない表情も。夜の帳と彼の外套に覆い隠され、誰かに見えることはない。ここは私と彼の二人きりの世界。
     これが幸せと呼ばずなんと言うのだろう。
     愛してる、それだけじゃ足りない。だけどそれ以上の言葉が思いつかない。だから私たちは陳腐な愛の言葉を吐きながらこうして体を重ねて確かめ合うのだろう。
    「ん、ひ、んぁ、や、も……」
    「ユエル、共に……」
    「ん……」
     大好きな彼の瞳が瞼の向こうに閉じていく。合図とともに重ねられた唇の中に愛の唄を響かせながら共に頂へと達した。
     
         *
     
    「すまない、すっかり冷えていたね」
    「本当にそう思ってる?」
     温かい湯船に浸かりながらそう口を尖らせると、もちろんだとも、と耳に口づけを落とす。水分を吸ってしっとりとした毛触りになったそれを気に入ったのか何度も啄むようなキスを繰り返しながら時折、水滴ごと吸い上げる。きっとひくりと動く反応も楽しんでいるのだろうが。
     あの後零れ落ちていく彼の精を何とか下着の中に納めて、抱えると申し出た彼の好意を遠慮して屋敷までたどり着いた。道中少し変な歩き方をしていたが、幸い誰かとすれ違うこともなく、屋敷の敷地を跨ぐともう聞かぬと言わんばかりに抱え上げられてしまった。歩けると抵抗したものの、下着の中でたらりと零れるものを感じておとなしくなった私をそのまま風呂へと連れてきたのだった。
    「温まったようだね」
    「お陰様で」
     耳に飽きたのか頬をすりっと寄せながら甘えるように肩口に顔を埋める。彼の少し長い髪の毛が頬を擽り、肩を震わせると僅かに顔を持ち上げた。
    「人は欲深い生き物だな」
    「散々思い知ったでしょう」
    「そうなのだが……。今で十分幸せだというのに、私はもっと先を望んでしまう」
    「先?」
     国の事だろうか、と言葉を復唱してみせると「君は相変わらず……」と何故か笑われる。おかしなことを言っただろうか。
    「君を、本当の意味で身も心も私のものにしてしまいたい。等と、無茶な願いを抱いてしまいそうになるのだよ」
    「それは……」
    「あぁ、分かっているとも」
     こうして彼と交際することは出来ているが、じゃあ彼と婚姻関係を結び、子を成し、彼の生活を支えられるかというと、今は出来ない。例え望んでないにしても、力を持つものはそれ相応の責任がある。私や、彼の我儘を言えるほど今の情勢は甘くない。それは痛いほど分かっている。でも。
    「止められないと思っていたあの竜詩戦争を止めたんだよ、しかも竜と人の融和という形を取って。そんな奇跡を叶えたんだから、きっと私達なら叶えられる。そうでしょう?」
    「……君がそう言ってくれると何でも叶えられる気がしてくるよ」
    「これでも英雄なので」
    「それは頼もしい。だが」
     ざばりと湯を零しながら体勢を前のめりにして私に覆い被さって唇を奪う。水も滴るいい男というのは彼のことを言うのだろう、などと思っていると彼の顔は離れて代わりに私が湯船から持ち上げられた。
    「今はただの、私の恋人でいてくれないか」
    「えっと、それはその……」
    「言っただろう、明日は休暇を取ったからね。君と思う存分ゆっくりと過ごせる。湯冷めしないよう上がろう」
    「待って、待ってアイメリク! 一人で歩けるから! んむっ!」
     ぼふっと頭からバスタオルを被せられ、大きすぎるそれで体をぐるっとひと巻にされる。あぁこれは逃がさないつもりだ。
    「愛しているよ、ユエル」
    「……今ほどその言葉が怖いと思ったことはないわ」
    「何か言っただろうか」
    「イイエ」
     明日の私の運命は果たして。
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