こわいもの天蓋を降ろしたベッドの中は薄暗く、外からの音は聞こえない。
さきほどまで熱がこもっていた空間が、夢から覚めたかのように静寂に支配されている。
「こんなはずではなかったのだ」
柔らかな枕に頭をしずめたバンジークスは、告解でもするかのような面持ちで呟いた。
枕元に座る亜双義は、バンジークスの横顔を黙って見下ろしている。
「君から向けられるものは全て受け止める覚悟はしていた。
師事を望むなら応えるし、どうしても許せぬというなら喉笛を差し出そう。
そう思って、傍に留め置いていたのに」
「愛されるとは思わなかった?」
聞きながら亜双義は手を伸ばし、指先でバンジークスの額の傷をなぞる。
少しくすぐったそうに顔をしかめた。
「貴方が今一番恐れることをあててみようか。
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