Your favorite things 名だたる名画をおさめる額縁のようなみごとな鏡の中に
亜双義一真とバロック・バンジークスが映っている。
ここはバンジークスの居室のドレッサーの前。
二人とも礼装に身を包み、これから行われる式典と
その後の交流会に出席するための支度中だ。
式典の参加が決まった際、亜双義はその場にふさわしいドレスコードを
バンジークスに尋ねた。
この国の服装のルールは複雑だ。
昼と夜で着ていい服の色が違うだの、パーティに合わせた格式だの、
平民の亜双義には縁遠くて覚えきれない。
学生の頃は学生服という万能なものがあったが、今は使えない。
検事としての執務服でやり過ごすにも限度がある。
この際、きちんとそろえるべきだろう。懐はいささか痛むが仕方ない。
1219