花は葉に蜜嗅ぐ繁華キミ想う***
暑い。首まで覆う服の中がむしむしとしている。じり、と真上から照らす太陽につい、昨日はあんなに肌寒かったのに、と零せば「ここの初夏とは概してこんな具合さ」と隣を歩くナデシコさんが笑った。
歩きながら目を遣れば、少し前までピンク色の花をつけていた桜の樹が、今はどれも緑色の若葉をつけている。鮮やかな緑に目を奪われつつも、ところどころに少しだけ残っている花が、なんとなく物寂しい。喧騒に紛れて一瞬だけ、そんな気持ちがよぎる。それはマイカの里が沈み、マイカとブロッサムの文化が混ざりあって変化していく様に少しだけ似ている……ような気がした。雑念を払いながら、所謂並木道を通り、多くの店が建ち並ぶ大通りへと向かう。
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