『こら』/『寝癖』の話 窓から射し込む光に、深い眠りに落ちていたリゼルの意識が浮上する。
しばしぼんやりと見慣れぬ煤けた天井を見ていたリゼルは、一つゆっくりと瞬きをして、
「ああ……、そうか」
掠れた声で小さく呟いた。
昨日から足を伸ばして少し遠方の森の中にある迷宮へ潜っていた。そこはジルが既に攻略を済ませている迷宮で、冒険者ギルドにあった依頼にリゼルが興味を惹かれたからだった。二人で迷宮を巡る乗り合いの馬車にほぼ半日揺られて着いた迷宮は、思っていた以上にリゼルの心を浮き立たせてくれた。無事に依頼を終えて迷宮を出た時にはそろそろ夕闇が迫り、乗り合いの馬車は既に最終が出た後。いつもの宿へ戻る事は出来そうになく、二人は森の傍にある元冒険者が営んでいるという宿で一晩過ごす事になったのだ。
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