次の撮影まで時間があるので、食事と休憩にしてください。
そう言われた俺と鉄は、二人揃ってケータリングの並んだ机を眺めていた。
鉄はひとりひとつどうぞ、と書かれたドーナツの箱から目が離せないでいる。
プレーンであろう砂糖のみのもの、チョコレート、イチゴ、クリーム入り、とカラフルなドーナツが並んでいて、鉄の視線はチョコとイチゴを行き来しているようだった。
ふと視線を感じて横を見ると、広報スタッフが笑顔でこちらにスマホを向けていた。
カメラ目線にすると、少しの間のあと、スタッフからぐ、と親指を立てられる。撮ってくれたようだ。
そのまま何事もなかったかのようにケータリングからお茶のボトル2本と、弁当を手にとる。
鉄の皿にはチョコドーナツが乗っていたが、視線はまだイチゴのドーナツに向いていた。そんなに食いたいのか。
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