水龍の涙「香水?」
「エミリエさんの所で調香教室をやっていて、作ってみたそうよ」
「へえ……あの旅人がねぇ。どれ」
水の上の休暇から戻って来たシグウィンが差し出してきたのは、可愛らしい薄紫色の小さな瓶。ルミドゥースベルを模した小さな飾りが飾られており、小瓶の中では橙黄色の液体が揺れている。
リオセスリは手渡された小瓶を軽く揺らし、スタンドの灯りで透かしてみた。とても綺麗だ。色味から察するにマルコット草もブレンドされているのだろう。蓋を外し手近にあった紙へ中身を一滴垂らしてみると、ふんわりと木材の香りが漂ってくる。コウハクジュの匂いだ。
「あっさりとしていて優雅な匂いだな。良い香りだ」
「ふふ、そうでしょう? 公爵へのプレゼントなのよ」
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