Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    haru_ruah

    @haru_ruah

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 9

    haru_ruah

    ☆quiet follow

    ほぼカプ要素ないけど傭探と思いながら書いてるので傭探(?)
    好きな飲み物捏造注意

    真夜中に飲み物 好きな飲み物は何か?

     そう聞かれたならば、ノートンキャンベルは「ビール」と答える。暑苦しい炭鉱所から出た後、酒場で冷えたビールを勢いよく飲み干す快感は何度味わっても良いものだ。深夜にナッツ等のつまみをお供に、ゆっくり楽しむのも良い。
     試合前の待機室で、そんな話を荘園の皆としていたら、無性に飲みたくなってきた。部屋の時計は夜の0時を指している。今から飲むと次の日に障りそうだが、明日の試合は昼からなので、まあ大丈夫だろう。ノートンは寝間着のままベッドから体を起こすと、深夜の食堂に向かってふらりと歩き出した。
    さすがにこの時間になると、皆自室に戻るので、荘園の廊下はひっそりとしていて暗かった。この荘園には不思議は力が働いており、0時を超えると廊下のろうそくは、早く明日に備えろと言わんばかりに全て消えてしまうのだ。ノートンの部屋は荘園の3階。食堂は1階のため歩くと少し時間がかかる。さすがに月明りのみでは転んで怪我をしかねないので、ランプ片手に食堂まで歩いていった。
     立て付けの悪い食堂のドアを開けると、そこは既にランプがついていて明るかった。こんな時間に誰かいるのか?と、確認の声をかける前に「ガタンッ」という物音が聞こえ、人がいることを教えてくれた。
     ドアを閉め、音がした方へ歩いていくと、ナワーブが所在なさげに突っ立っていた。慌てて椅子から立ち上がったようだ。
    「こんばんは。急に入ってごめん、まさか人がいるとは思わなくて。」
    「いや…大丈夫だ…」
     そういうナワーブの視線はどこか覚束ない。結構飲んだ後なのかと思ったが、僕の記憶が正しければ、彼は酒を飲まない。食堂で酒盛りしている時も全て断って、黙々と水や茶を飲んでいる。ならば、なぜ。
     僕が彼から少し視線を外して考えている隙に、ナワーブは机の上に置かれたコップをそっと死角に隠そうとした。いくら傭兵の素早い動きだからって、この距離ならさすがに見逃さないよ。
    「ナワーブさんは何飲んでるんです?」
     隠そうとする手を軽く跳ね除け、コップの中身を眺める。中には茶色の液体が満たされており、なんだ、普通のコーヒーかと一瞬がっかりしたが、漂ってくる香りが酷く甘いことに気づく。

     この匂いは…。ココアだ。

     そんな可愛い飲み物を、ナワーブが何故…?
     疑問が頭に浮かんだが、口に出す前に過去の出来事を思い出す。僕が見ていた中で、彼が断っていた飲み物は、たしかビールだった。食後のコーヒーは断るが、紅茶は砂糖を入れて飲んでいた。まさか断っていたのは、味が苦手だから?
     なんとなく答えに行き着いてしまい、思わず黙ってしまう。そんな僕を見て、ナワーブは一度大きく溜め息をつき、観念したと言わんばかりに頭を掻くと、僕の耳に口を寄せて
    「甘党で、苦い物が得意じゃないんだ…誰にも言うなよ」
     小さな声で正解を教えてくれた。
     そんな彼の顔は、フードに隠れてよく見えなかったので、隙をついて捲ってやろうとしたら死ぬほど怒られた。
     相当恥ずかしかったようで「お前と話していたら、ココアが冷えちまった」と追い打ちをかけられ、僕はビールを飲みに来たのに、ナワーブのためにココアを入れ直す羽目になったのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works