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    Herasaka_k

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    Herasaka_k

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    待ち時間に書いた18歳組。
    帝人がド失礼。
    いろいろ酷いので時間ある時に推敲します。

    向日葵と彼岸花診察を終えて自分のデスクに戻る。
    誰もいないのをいいことに、キャスター付きの安い椅子に深く凭れて座った。
    仰ぎ見た天井。目を焼くような蛍光灯から逃れるように目を閉じる。
    思い浮かぶのは、たんぽぽのような柔らかな女の子。
    同い年の彼女は刀遣いになることを夢見て、この世界に飛び込んできた。
    立派な刀遣いになりたいと言う彼女は、脇目も振らず直向きに研鑽を重ねている。
    普通の家庭で育ったのなら、きっとやりたいことも遊びたいことも沢山あるだろう。それなのに、ほとんどの時間を刀遣いになることに費やしているように見える。
    真っ直ぐ太陽に向かって背を伸ばす姿に春の夜を想起した。
    さして気に留める存在ではなかった。
    ここではそんなものありふれている。夢見て天照に来た刀遣い達が、やがて現実に打ちのめされて諦念の笑みを浮かべるようになる。
    きっと、彼女もそうなのだろうと思っていた。
    息を吐き出す。
    デスクに乱雑に放ってしまったバインダーを手に取る。
    凪鞘班の仕事とは別に必要な情報を書き留めている。内容は何気ない噂話や雑談ばかり。そこから必要な情報を取捨選択し頭を叩き込む。
    螺子目家に不利益になりそうなものは詳らかに報告し、必要であれば自ら手を下す。
    手を汚す覚悟ははじめからできていた。
    美しい花を咲かせるために毒を孕む彼岸花のように。
    螺子目家が、シキさんが望むのなら俺は彼を咲かせるための毒になろうと、そう思っていたのに。
    バインダーに挟んでいた紙を無意識に強く握りしめる。
    練魔区で大量の妖魔が大量発生したあの日。
    俺はただ言われるがまま任務をこなしていた。まだ若い刀遣いができることなんて足を引っ張らないように、上の指示に従うことだけだと疑っていなかった。それだって勿論間違っていない。それも必要であり大事なことだ。
    シキさんの安否を気にしながら、たまに会うたんぽぽのようなあの子が前線にいると小耳に挟んだ。
    怪我人は後を絶たず、目まぐるしく変化する戦場にそんなこと忘れてしまっていた。
    今日、彼女に助けられたという男に会うまで。
    病室のベッドに拘束されている男は裏切者らしい。
    この男は刀遣いを辞めることになるだろう。もしかしたら、後ろ指を指されて生きていくことになるかもしれない。人の口に戸は立てられない。裏切者という事実は男の人生に暗い影を落とすだろう。
    しかし、男は希望に満ち溢れていた。
    自身の未来が険しいことを理解しながらも、そこにあるのは絶望でも虚無でもない。
    到底理解できず、何故と聞いた。
    そこで男がたんぽぽのような彼女に助けられたと知った。
    死にゆく運命だった男の心音を彼女は拾い上げ、もう一度息を吹き込んだのだ。
    医者でも凪鞘班でもない彼女。
    様々な部署で知識を吸収していく同い年の彼女を、俺は確かに見ていたはずなのに。
    男は笑った。
    いつか医者になりたいと。彼女のように、誰かを救える人間になるのだと。
    もう一度、彼女の姿を思い浮かべる。
    しかし、特別気に留める必要はないと思っていた彼女の姿を鮮明に思い描けない。

    「帝人くん?」

    呼ばれて顔を上げる。
    思わず笑ってしまう。ずっとたんぽぽのような柔らかな子だと思っていた。けれど、そこにいた彼女はまるで大輪の向日葵のようだった。
    糸を紡いだような金糸雀色の髪と柔らかな紫苑の双眸。まろい輪郭を描く曲線は柔らかで確かに女性らしいのに、その指に刻まれた女性に似つかわしくない傷は彼女の努力の証だ。
    こちらを見つめる紫苑はただの可愛らしい女の子ではなく、意志の強さを秘めた、確かに刀遣いの双眸だった。
    春の夜のようなたんぽぽではなく、夜を照らす向日葵。
    望月 可音。
    俺と同い年の女の子。そして、刀遣いの一人。
    負けたくないと思ったのは初めてだった。
    俺より先に人の命に向き合った彼女に、手を汚すことなく夢を追い続ける彼女に、負けたくないとそう思った。

    「可音ちゃん」

    春の香りが鼻腔に広がった気がした。

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