来年もきっと手袋を買わない コンビニの中華まんは冬になると無性に食べたくなって、つい買ってしまう。
でも夕飯の前だから買うのは一個だけ。
「また買ったのか?そろそろ店員に顔を覚えられる。面倒だから店を変えるぞ」
「じゃあ、明日は駅の向こう側のコンビニにしよう」
「わざわざ遠回りするのか?……まぁいい。いつもありがとうございます、なんて聞かなくて済むからな」
わたしにはよくわからないけど、彼はコンビニの店員に顔を覚えられるのが嫌らしい。
買った中華まんを半分こして食べながら歩く。でも半分にした中華まんはすぐになくなってしまって、温められていた手もすぐ冷えてしまう。
「最近寒くなってきたね。手が冷たくなっちゃった」
「こんなに冷えるのに手袋を買っておかないお前が悪い」
「自分だって手袋してないくせに!」
「俺は寒くないから別に良い」
そんなことを言っているけど、いつもポケットに手を入れているのはきっと寒いからだ。
「冷え性のくせに今年も手袋を買わないのか。今からでも遅くはないぞ?」
「……手袋はいらないの」
〝だってコンビニの中華まんの底についてる紙が剥がしやすいから″
〝それにこの方がスマホが使いやすいから″
わたしの言い訳は毎年同じ。きっとそんなの一番の理由じゃないって彼ならとっくに分かってる。
分かっているのに指摘しないで、今年も手袋なしでコートのポケットに手を突っ込んでいる。
「毎年手袋を買えと言っているだろう? 仕方のないやつだな」
毎年そんなやりとりをしながら、彼は少しだけポケットの中の手をずらして隙間を空けてくれるのだ。
今年もそんな彼のポケットにそっと手を忍ばせて、手が冷たいと文句を言われながらポケットの中で手を絡める。
冷えた手を温められると知っている。だから、一緒に外にいるときだけなら少しだけ寒い方がわたしは嬉しい。パラパラ降る雪の中でそう思いながら、暖かい家までゆっくりと歩き始めた。