In your palmIn your palm
ねえ、という天からの声に、少年は肩を跳ねさせた。
姿勢を最大限に低くして、周囲に誰もいないことを確かめたつもりでいて不意を突かれた。まさか頭上に人間がいるとは誰も思うまい。しかもこんな時間に。
こぢんまりとした質素な裏門の柵を握りしめたまま反射的に見上げる。少年が気配を消して伝ってきた塀の縁に、彼は立っていた。
「“アトサマ“ってどういう意味?」
「え…」
この状況にそぐわない唐突な質問。動揺した少年は答えることができない。自身の不審な行動を咎められるに違いないと、ありったけの言い訳を考えていた最中だったからだ。彼は寮を取り囲む塀の上に立ち、早朝の陽を直に浴びて外側を眺めていたが、膝を折る。
20049