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    momo

    @_m178m_

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    momo

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    なるちゃんに貰ったまつもも小説を祭り上げておきますありがとうございました😭💖 ※生理ネタ

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    肌触りの良いシーツにいつもより少しだけ重い身体を埋め、枕をギュッと抱きしめる。
    寝室の襖の向こうからわずかに聞こえてくるみんなの声と、かすかに漂う朝食の良い匂いが鼻腔をくすぐった。
    そろそろ近侍が起こしに来る頃かと思いながらもまたシーツに包まった。

    「主―、そろそろ起きとうせ。」

    襖越しに陸奥守の柔らかい声が聞こえた。起きてるよー、起きてる起きてるといい加減に返事をすると、スパンっといい音を鳴らして襖が開いた。

    「起きとらんじゃろ!!いつもいつもその調子でわしが起こさんといかんのじゃ!!」
    「違う違う!!!!起きてる!!ほら!!!!!」
    「起きとらん!!!!!ええ加減にせえ!!布団から出てから起きとるって言うが!!」
    毎朝行われる初期刀との攻防が繰り広げられていると、涼しげな声が聞こえた。

    「今日も朝から元気で楽しそうだね」

    朝から快活な陸奥守と違った、朝が弱いらしくまだ少し眠そうに気怠そうな顔をした松井江が顔を出した。その姿を見るなり審神者の今までの勢いはどこへ行ったのか途端に大人しくなり、慌ただしく布団から身を乗り出した。

    「松井くん!おっ、おはよっ!!」

    余りの慌てっぷりに松井も少し目を見開いたが、審神者の顔を再度見つめると目を細めてクスッと笑って答えた。

    「ああ、主もおはよう。朝餉が出来ているそうだよ。早く広間においで」

    そうだね!!と元気よく答えた審神者の頭を陸奥守が小突いた。無言の圧である。初期刀の目が「わしの時とは大違いぜよ」と訴えている。
    そんなことはどうでもいいと言わんばかりの顔で少し寝癖が付いた髪を手櫛で整えて寝室から出ようと立ち上がったが立ち上がると身体に違和感を感じ、審神者はその場で立ち尽くした。
    下腹部が重く締め付けられているような鈍痛と僅かな頭痛をこの時自覚し、ああ、と一人心の中で頷いた。

    生まれて二十数年毎月訪れる現象だ。女として生まれた宿命ではあるが審神者は人一倍痛みが大きい方の人間だった。
    本丸発足後初の月の物は大変に酷く、布団から起き上がれず真っ青な顔で一日中唸っていた。その様子に気付いた初期刀が大慌てで本丸中を駆け回り、温かい物や身体に良い食事を作ってくれたこともあった。
    その時、時間遡行軍を前にしたような顔をした陸奥守がこんのすけに「主に何かあればわかっとるな?」と詰め寄ったのも良い思い出だ。

    「主?大丈夫かい?」
    「主なんかあったんか?」

    はっ、と二振りの声に引き戻される。心配そうに見つめる二振りを安心させるように極めて明るく審神者は笑った。
    「ちょっとまだ眠かっただけ。大丈夫だよ。でも目覚ます為に顔でも洗ってくるから二人は先に広間に行ってて」

    陸奥守は少し怪訝そうな顔をしながらも、そうかと笑った。隣の松井江はじっと審神者を見つめ、その目がそらされることはない。居心地の悪さから先に目をそらしたのは審神者だった。少しの異変も見逃さないような目から早く逃れたいと二振りを寝室に置き去りにして急ぎ足で逃げた。



    脱皮のように逃げ去った審神者の寝室にぽつんと残された二振りは顔を見合わせて溜め息を吐きながら寝室から出た。








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    鈍痛と戦いながら洗面所までたどり着いた審神者は鏡を見て自分の顔色の悪さにぞっとした。少し体が重いと感じていたのは事実だが朝からこんな顔色だったわけではないはずだ。となるとおそらく勢いよく立ち上がった際に急に血の量が増え、悪化したのだろう。
    血色をなくし、真っ青という表現がよく似合うような顔で広間に行かなくて正解だった。
    だが寝室に居たのは勘のいい初期刀と血の匂いに敏感な松井江だ。
    おそらく二振りには何らかの不調があることは気付かれている。
    本丸の中では大人な二振りなので他の刀達に不調を伝えることはないだろうが存外心配症なので希望的観測ではある。


    「って、そんなことを考えている場合じゃないし!!早く顔洗って広間に行こ!!」
    鏡の中の自分に言い聞かせるように頬を叩き、気合を入れた。
    「へえ、どんなことを考えていたんだい?
    「えー?そりゃ色々、、、、って松井くん!?なにか用事?」

    デジャブだ。
    朝よりも凛とした顔の松井江が審神者の背後に立っていた。
    こちらの様子を伺うというよりは逃がさないぞというような問答無用の笑みで口を開いた。


    「用事はないのだけれどね。それで?貴方はどうかしたのかい」
    「全然!?どうもしていないけど!?」
    嘘が付けない子どものようにしどろもどろになった審神者の返答を聞くなり松井江は笑みを深めて鼻で笑った。鼻で笑ったのだ。
    経験上彼がこんな笑い方をする時は私は白旗をあげてもう完全にお手上げ状態なのだがなぜかこの時ばかりは負けじと言い返した。


    「うるさいなぁ!!!なんでもないって言ってるじゃん!!!用事がないなら早くここから出てってください!!!!!!」
    「あなたがそう言うのならそれでいいけれど後から泣きついてきたって僕は知らないからね。本当にいいんだね?」
    松井江はいつもながら余裕そうに笑みを携えて審神者に問いかける。
    審神者が変なところで意地を張るのは松井江の中ではよくある話で売り言葉に買い言葉なことも理解していた。次の審神者の言葉も松井江にはわかりきっていた。


    「「しつこい」!!!」


    あはは、そうだろうね。と笑い出す松井江に呆気にとられながらも審神者は自身の言葉と松井江の行動の意味を理解するといたたまれない気持ちになり俯いた。
    体調が良くない時ほど人間は欲張りになってしまうものだと思う。
    だが審神者の性格故に困惑と今すぐに謝りたい気持ちでいっぱいだった。
    本当は審神者も初めから体調が悪いと言いたかった。
    しかし毎月のものであるし、本丸を運営する立場の人間として甘えていられないということも事実であった。
    上手く言葉が出てこない審神者をおいていくように松井江は洗面所の扉に手をかけた。



    「ちょっ、、、と待って」

    慌てて伸ばした手が掴んだのは冷たいはずなのに審神者には暖かく感じる大好きな彼の手だった。振り返る彼が目にしたのは不安で揺れる審神者の目。目は口ほどに雄弁で今にも謝罪とともに涙が溢れそうにゆらゆらと宙を彷徨っていた。
    そんな審神者を見た松井江は再度なんだい、と問いかけた。努めて穏やかに問いかける松井江の手に縋り付くようにキツく握り小さくごめんなさいと呟いた。
    だが松井江は聞こえないよ、もう一度とどこ吹く風のようにさらりと言った。

    「ごめんなさい、、さっきは強く言って、嘘ついてごめんなさい。ほんとうは体調が良くなくて、、」
    「嗚呼、そうだろうね。貴方は学ばないからね」
    軽口に突っかかる気力はもう残っておらず、はらはらと審神者は涙を零した。こぼれた涙を指の腹で拭いながら一先ず寝室に戻ろうかと声を掛けたが体調が悪い上に涙を流し到底自力で戻れそうにない審神者をおぶろうとしゃがみこんだ。

    「僕の力じゃこれが精一杯だからね。もうろくに動けないんだろう?早く乗りなよ」
    「えっ、いや私は自分で、あの、ぜんぜん、、、」
    「今更何を恥ずかしがってるんだい貴方は。貴方のことは隅々までもう知っているし今更だと思うんだが?」
    そうじゃないんだよ!!!!と大声を上げそうになっている審神者を埓があかないとスルーし、無理やり背中に乗せようと両手を掴んだ。
    「待って待ってわかった!!!わかったから!!自分で動くから待って!!!」
    松井江は仕方がないなと言わんばかりに仕方なく手を離してまたしゃがみこんだ。寿命が一気になくなるかというぐらいに焦った審神者とは対照に松井江の顔はとても不服そうだった。
    さては私が体調が悪いこと忘れているな?と恨めしそうに見つめていると「忘れていないからここで待っているんだよ、大人しくこちらにきてくれ」と追い打ちをかけられてエスパーなのかと思いながらもごめんとつぶやきおずおずと松井江の背中に乗った。


    しっかり乗ったことを確認するなり、落ちないでねと安定の軽口を叩かれながら洗面所を出た。






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    お腹の痛みに耐えながら松井江の背中に乗ってゆらゆらと運ばれている最中、寝室に向かう道中に立つ桜の木は本丸の大黒柱で今年もきっと綺麗な花が咲くのだろうなと審神者は少しだけ笑みが溢れた。かすかな笑みに気付いたのか松井江はお花見はあたたかい格好で行くんだよと穏やかな声で言った。わかってるよ、なんだかんだ心配性なんだから。



    「あ、そういえば昨日松井くんが好きそうな綺麗な和菓子買ってきたんだ。江のみんなで食べてね」
    昨日は出陣していた彼が誉をとったので万屋に買い物に行き、そこで見つけた松井江の目と同じ色をした綺麗な水色の和菓子をご褒美に買っていた。その和菓子店には色とりどりの和菓子があり気づけば松井江以外の江達にも最近の出陣のご褒美としてあげようと手に取っていたのである。自室の棚の中にあるからねと伝えるとぴたりと松井江が止まった。


    「ありがたいけれどそれは江のものとは食べないよ。貴方と一緒に食べる。きっと貴方がくれたものを食べている僕の顔を見たかったんだろう?」
    「え?どうしてわかったの?」
    「貴方のことを僕がわからないはずがないだろう。また体調が良くなったら一緒に頂こう」


    図星を当てられたのか背中の己よりも小さい暖かなものがより熱くなった気がした。それもそのはずで審神者は恥ずかしさのあまり松井江の肩口に顔を埋め、耳まで真っ赤になっていた。松井江に見られなくてよかったと心底安心しているが見ておらずとも彼にはバレバレだった。


    たわいもない話をしながら廊下を進んでいくと少しずつ審神者の体の力が抜けていき、いつの間にか穏やかな寝息を立てていた。寝息に気付いた松井江は静かに早く体調が良くなりますようにと誰にも気付かれないように願い足を進めた。





    ふと審神者の寝室を見てみると襖が開いており、先ほど閉め忘れたのか両手が使えない今は都合がいい。念の為少し警戒しながら室内に入ると布団とゆたんぽがセットされていた。やはり彼も気付いていたのか今の審神者に必要な準備をきっちりしていてくれたのである。まだ最古参の彼には敵わないかと苦笑いを落とした。


    審神者を起こさないようにそっと布団に下ろし、お腹を暖めるようにゆたんぽを潜り込ませる。少しだけ身じろぎをしたが目を開ける様子はなかった。身じろぎをした際に顔にかかった髪を払ってやり、少し寝顔を見つめた後、ぼそりと無理をしすぎないようにねと言いながらするりと頬を撫でた。
    落ち着いた顔色と寝息にほっと一息つき、ひとまず薬でも取りに行こうかと腰を上げたがおもむろに腰を下ろし、審神者が寝ている布団の中に入り冷えないように審神者を抱きしめて目を瞑った。



    後に審神者がどうして起きたら布団にいたの?と聞くと、貴方にはゆっくり眠る方いいと思っただとか、離れた方が後から悲しむと思っただとか、こちらの心の中を全てわかっているような回答が次々と返ってきてもう一度布団の中に逆戻りしたというのはここだけのお話。















    貴方のことは一番わかっていたい
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