空蝉の日常 消えた草餅を探せその悲鳴が響いたのは麗らかな春の真っ昼間、東雲でもうたた寝をしてしまうような快晴だった。
絹を裂くような、といえば聞こえはいいがとにかく甲高く屋敷の者はみな思わず耳を塞いでしまうような悲鳴。
式神の面々は伸びてきた畑の雑草を3人がかりで抜き切ってしまおう、と集まっていたところだった。
「今の、梢だよな?」
「まあこの屋敷にあんな高い声を出せるのはあいつしかいないからな」
「どうしたのでしょう、まさか敵襲とか……」
「いやぁ、ないだろ」
三者三様に声のした方を伺っていると、しばらくしてどたどたとおよそ可愛らしくはない足音が縁側を鳴らしてきた。
「ねぇ!!誰かあたしの草餅食べたでしょ!!」
足音が三人に辿り着くなり梢は顔に皺をいっぱい寄せて言い放った。
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