レタスチャーハン オイスターソースなんて、以前は名前すら知らなかったのに。
キッチンに備え付けられている棚には、いつのまにか調味料がびっしり揃えられている。中華スープの素、鶏がら、ブラックペッパー。冷蔵庫にも、白出汁、コチュジャン。全てをきちんと使いこなせているわけではないけれど、それでも以前よりはレシピを忠実に再現できるようになった。
「何チャーハン?」
「レタスチャーハン」
作るものだって簡単なものばかりだ。それでも先輩は喜んでくれている。誰かを喜ばせるためにする料理というものは、何たる幸福だろうか。気合だって入るというものだ。
先輩の家で料理をするようになったのは、「泊めてくれたお礼」がしたい、と考えた末のことだった。大学に入ってから一人暮らしをはじめた先輩はだいたい総菜を食べていて、たまにSNSで見つけたすぐに作れるおかずを作って、そんな生活をしていた。俺は使った食器を洗うくらいしかはじめはしていなかったのだけれど、先輩と二人で飯を食うなら、どうせなら美味しい物を食べたいと思ったのがきっかけだ。
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