お題:「夢」「見えてる」6/4 夢のまにまに。
夜眠ると、悪夢しかみることができなくなってもうどれくらい経つのだろう。それでも、夢の襞と襞をかきわけて、その狭間にあの少年を探す。この、目が覚めても眠りのなかにいても悪夢しかみることのできない世界で、何処か、片隅にでも、あの、笑顔をみつけることができたなら。笑うと口からは春に生まれた雛の鳴声よりも生き々とした明るい声が翔びだして、その瞳からは太陽の欠片がいくつも々こぼれた。その声を、聴きながら、こぼれた欠片をこの手いっぱいにあつめて、抱きしめて眠りたい。そうすればきっと悪夢をみることもないだろう。君が在れば、悪夢はすべて失くなる。たとえ、街は炎に焼かれ、人は死に、大地は血に濡れて毒の海となっても、俺の世界から地獄は失える。君が在れば。君さえ在れば、この世界がどうなろうとも、俺の世界は救われる。
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