Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    さわべ

    ツイッターにあげたものの倉庫
    溜まるとピクシブにログあげてます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 219

    さわべ

    ☆quiet follow

    A6(文庫)/60P/700円(通販頒布価格800円)

    3/19HARU COMIC CITY 31 Stellarum Lapsus 4発行

    ミズヒス中心短歌再録本です。
    収録された約90首がウェブで閲覧可能となっております。
    表紙デザインはデザイナー様に依頼(名前非公開)、挿絵はめんたす様にお借りしました。(商品ページに掲載)

    #ミズヒス
    heniochusSingularius

    呼吸瞬き擦過傷  はらからに告ぐ
















    日輪を下す眼(まなこ)がここにあり全ての息が今から絶える



    秋風が揺らす前髪その下に最果てのような夜が広がる





    まつろわぬ狼の種の末ならば待つな駆けろよ遠吠えを聞け


    火は光錆びた世界を踏みつけて笑い遊べよ光の中で


    玉の緒よ絶えなば絶えね絶えたとて消えぬ怒りが稲妻になる





    天国の在り処はとうに知っている閉じゆく門のつんざく音も



    繰り返す痛みが骨に刻まれて息をするたび軋んで疼く





    お優しいあなたがくれたパンは黴び、売り払えずにずっと手元に


    撃鉄に触れて飛び出す弾丸の軌道に落ちる鮮明な影


    てか逆に地獄でチルるオレたちにどうすりゃ勝てるつもりだったの?




    この声が届いているか骨肉も燃やす怒りを覚えているか


    荒れ果てた未踏の野に立ち踏みつける俺らの靴が轍(わだち)を作る


    色のない肌の裂け目に覗くのは錆びることなく赤い寸鉄





    天国の退屈を蹴る極彩の地獄だったらお前らがいる



    ため息をついてカイロを握らせる誰も知らない優しい男






    約束や嘘を吐いたら針千本ついでに小指つけたるからな



    アンタってテディベアみたいそんな顔してちゃんと猛獣






    液晶の向こうに眠る君がいて夜の暗さが今日は優しい



    ここじゃないどこかに行く日は下ろす根が千切れてひどく痛むんだろう





    通う血が同じ温度であると知るライトの下の虚構の中で


    傷物はB級品と弾かれて転がる先を照らす明星


    こぼれ落ち果実は傷み黒んでる似た色の手を伸ばして掴む




    ゆっくりとまばたく目には激情を西日は落ちる夜はこれから


    何もかも忘れていないこの皮膚の下を走るは熱く重い血


    一歩でも退いたら後は落ちるだけ舞台の幕は既に上がった



































    つかのま















    穏やかな眠りのために寄せる身を知って背骨を辿る指先


    目が醒めて全部忘れていればいい浮いた背骨を撫でて見る夢


    眠れない夜に口ずさむデタラメな俺たちだけが知る子守唄





    目を閉じて寄せた体に添う腕と揺らぎもしない躯幹の熱さ



    やがて来るソファのための空白で交わしたすぐに忘れる話





    生命線伸ばせばよくねぇ? 名案の如く手に持つ油性マジック


    いっとうに光を集めた硝子越し見えた世界をすべて教えて


    この声を産まれたときから知っている最初の鼓動とおんなじ響き




    向かい合う瞳の澱の底に見た割れた硝子が弾いた光


    触れる手の骨の硬さが平熱が擦れてひりつく心臓の裏


    何かから隠すがごとく身に絡む腕の密度は命の重さ




    瞬きの音が聞こえて目が醒めて抱いた体の奥の心音


    背に散った丸い火傷が指先になぞられ浮かぶ知らない星座


    隣する熱音重み五感から知る輪郭が確かなすべて





    重ねても溶けず隔てるこの肌を食い破ったらおれにもどれる?



    呻きとか唾を混ぜ合うこの夜でおまえとおれが正しい獣



































      21g ばかりの魂のために焼かれる君という薪





    畜生に極楽は無いここでいま爆ぜる火花の鮮やかな色



    魂と世界が擦れて熱を生み全てを燃やし焼け落ちる肺






    「いいよ」って笑って撫でた我儘も抱いて一緒に向かう明滅



    体温も声も届かぬ遥かにて星は死んでも光が残る























    春待ちの夜



















    ぬるい風咲いた花の香(か)星に月腹を空かせた春待ちの夜







    花を呼ぶ淡い声なら覚えてる白い呼吸と冷たい指と


    待ちかねて咲く花の名に意味はないお前の喉が呼ばないうちは


    ビル風に遊びもつれる毛並みさえ愛しく撫でた白い尾の犬





    いつまでも来ない電車を待っている待合室の冷たい光



    乗り込んだ電車の外は冬の夜環状線のドアは開かない





    染みついたはずの匂いは揮発してざらつく錆に姿を変える


    骨が血がお前の声で編み上がり代謝のたびに細る犬の身


    もう他の道をお前は選べない俺が選んだ山犬の情





    独り寝の布団を抜けて見る星に薄い幕引くタバコの煙



    向かい風吹ける荒野で病む足を引きずり歩く四足の獣






    この臓(はら)に空いた穴へと風が吹き叫びのようなこだまを鳴らす



    血より濃い水は汲めども尽きず満ちいつか肺まで浸し溺れる






    「なぁ、」の「ぁ」の形をさせた口を閉じ飲み込んだ名が胃に積み上がる



    衣擦れに名を呼ばれたと欺かれ返した「なに?」に揺れるカーテン






    花が散り咲くのを何度見るだろう垂れた尾を引き歩く一匹



    葉を落とし一人寂しく立った木が淡く色づき鳴らす舌打ち





    透くほどの腕の白さに目が眩み重ねた手には遠い平熱


    ひとときのうつつにきてははなさきをよせるけもののかわらないねつ


    清潔で明るい部屋に必要なまどろみのため殺した悲鳴




    花嵐過ぎて葉だけを揺らす木の窓を隔てて届くざわめき


    仰ぎ見る遠い舞台が万雷を呼んだ嵐が荒(すさ)ぶ前触れ


    黒々と広がる海を漕ぎ出したテセウスの船の航路は知れず





    なにひとつ欠けるところのない日々を夢見て春待つ獣のつがい



    明けかねる暗がりで待つ手の中にお前ひとりの声だけがある








    ただいまも要らないだから名を呼べよお前の声でそれだけでいい




































    呼吸瞬き擦過傷















    咲き盛る花の名を呼ぶ声がして応じるために吸い込む薄暑


    不随意にまぶたを閉じる一瞬で消えないように絡む指先


    心臓の同じ所に穴が空くお前がいれば擦り傷になる























    エンドロール(仮)




    揺らめいた視界の先のお前なら教えてくれる「それは陽炎」



    削られて歪に欠けた魂の切っ先同士が噛み合った円





    晒された傷をなぞって確かめた上げた呻きで歌が生まれた


    手加減はするな違わず息の根を仕留めるようにこの首を噛め


    冷え白む肌に浮かべた噛み跡に血が通うのを知る夏の夜




    あてどないこの身がここにある理由肩にかかった重みが錨


    名を呼んだ背中に触れただからもう誰かじゃなくてお前になった


    肩を借りもたれて眠るひとときために忘れるいつかの別れ




    窓をうつ冷たい雨の降る夜が明けて滴(しずく)は光に変わる


    同じ夜変わらぬ朝を繰り返すふたりで浴びた朝焼けの色


    夜に星凍る海には水光と向かう舞台に差した照明





    生命が奔り灼け付き残る影目蓋の裏に永遠はある



    おれたちはぜんぶだったねともだちとこいびとなかまきょうだいじぶん








    何度でも同じ轍(わだち)の道を行くお前の声が聞こえる方へ










    ひとりでは立てない場所で息をしたお前がオレに命をくれた










     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works