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    まかろ

    卓絵、SSを投げるとこ
    @trpg_macaro

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    まかろ

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    デート服描いた時に一緒に書いたSS、付き合う前なので百古里がひとりバウムクーヘン状態
    一応ハニビのげんみ❌

    #ひよすが
    days
    #まかろのSS
    ssOfMaroro
    #バウムクーヘン百古里
    baumkuchenHyakkori

    ひよすがデート服SS◆ひよすが◆

     休日の朝。
     静かに読書を楽しんでいた百古里の部屋のドアが突然バーン! と開け放たれる。
    「ひえ!?」
    「すがり! でかけるわよ!」
     楽しそうにやってきた日和の姿に、思わず目が釘付けになる。柔らかいクリーム色のトップスは普段は着ないようなひらひらしたデザインで、襟ぐりが大きく開いているが上品な印象だ。百古里が贈ったネックレスをつけてくれているのがわかり、どくんと心臓が跳ねた。
     ハイウエストのスカートはレースアップをアクセントにしたAライン。日和の動きに合わせて波打つように揺れるターコイズブルーは、この季節の海を思わせた。百古里の好きな色だ。
     とても可愛い。
     その一言に集約してしまうのが勿体ないくらいに、好ましい。
    「すがり?」
    「あ、……あっ、すみません、すぐ支度します」
     どちらも洗濯に出されていた記憶が無い。おろしたての可愛い服で、髪なんかもいつもやらないおさげで、彼女はいったいどこに行こうというのだろうか。
     支度するといいながらも日和を眺めたまま動けずにいると、日和は勢いよく開けたままだったドアから力なく手を離す。
    「やっぱこういうの、変だった、かな……」
    「いえ」
     思わず即答してしまった。百古里はその勢いのままに、少し俯いて表情を曇らせた日和に向き合う。
     想いは言葉にしないと伝わらない。言葉にならない気持ちはやがて消える。それでいい感情もあるけれど、百古里はこの感動をなかったことにしたくない。
    「よくお似合いですよ、日和さん」
    「ほんと!」
    「ええ。あの、すごく可愛らしいと思います」
    「そ、そう?」
    「はい。ボクそういうの、とても好きです」
     一瞬の間があった。
     百古里はその間によって初めて自らの失言に気づき、口元を手で覆う。とんでもないことを口走ってしまった。
    「あーーー、あっ、あの、違うんです、変な意味ではなくって!」
    「じゃあどういう意味よ?」
    「ええと、ごめんなさい、語彙力がなくて…… 違うんです…… なんだかボクの好みだから良い、みたいな言い方になりましたけど、そうじゃなくて、そう、一般論としてです。一般的にとても良いです」
    「ふーーん。ふーーーーんそっか〜〜〜」
    「あのっ、出かけるなら着替えますので、ちょっとお待ちください……」
    「リビングで待ってるね」
     なんだかデートみたいだ、と思って慌ててその思考を頭から振り払う。日和は百古里が例え女の子だったとしても、同じ格好で遊びに誘いに来たに違いない。今日こうして声をかけてもらったのも、本当だったら『運命の人』を誘っていたのに急に都合がつかなくなったとか、そういうことかもしれない。いずれにしろ、きっと百古里を意識したわけでは無い。
     それでも、今日選ばれたのは百古里だ。そう自分に言い聞かせる。
     あまり待たせすぎたら一人で出かけてしまうかもしれない、急ごう。あんな可愛い格好で街に出たらきっとすぐに知らない男性に声をかけられる。それはものすごく嫌だ。
     ならば百古里はいつものように『武装』したほうがいいのだろうが、あの悪目立ちする服装で今日の彼女と並ぶのは何となく気が引けた。
     買ってみたもののずっとしまってあった『普通』っぽい服に着替える。なんだか格好つけているみたいで気はずかしいけれど、これなら年相応の無難な男に見えるだろうか。
    「……お待たせしました」
    「あれ? すがり、そんな服持ってた?」
    「買ってからずっと着てなかったんです」
    「いいね、そういうのも」
    「あ、ありがとうございます」
    「じゃあ行くわよ!」
    「ええと、日和さん…… どちらへ?」
    「映画! あとお買い物! 新しく出来たケーキ屋さんのタルトも食べるわ!」
     デートみたいだ、と瞬発的に考えてしまう。そんなわけがない。おめでたすぎる思考は即座に否定する。
     楽しそうに支度をする日和を見ていると、みのりと三人で暮らした幸せな数日間のことが思い出されて甘くほろ苦い気持ちが押し寄せる。わが子を中心に生活するのは心の底から楽しかった。けれど、待っていると約束したのに、みのりが再び百古里のもとに来てくれる時に日和は隣にいないかもしれない。
     みのりとの約束は破りたくないけれど、日和の幸せを邪魔するのも嫌だ。つくづく難儀で辛い。運命の人なんか存在しなければ全部丸く収まると思う反面、百古里は彼女の幸せな恋が失敗することなんて願えない。ああもう、だめだ、出かけることに集中しよう。
     軽やかな足取りで事務所の階段を先に降りていく日和を追い、階段を降りきったところで思わず手を伸ばす。ほとんど無意識の行動だった。
    『離れて行かないで』なんて言う権利はないけれど、今ここで一緒に歩いているのは百古里なのだ。どこにでも行ってしまうフットワークの軽い日和を安全にエスコートするために、これは必要な措置だと信じている。
     なんの脈絡もなく手を握った百古里に、日和は驚いたように振り返った。百古里は何でもないような風を装って、彼女に笑いかける。
    「かかとの高い靴を履かれていますから。着くまでこうしていますね」
    「えっ!? あっ、そう、そうね、そうだわ……」
     豪華寝台列車に乗る時だって、迷子になった百古里を見つけて手を繋いでくれた日和だ。今更百古里が手を差し出したとして、それを拒むことはきっとない。
     ずるい事をしている自覚はある。勿論申し訳なさでいっぱいだ。けれどもう少しの間だけ、こんなわがままを許して欲しい。
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