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    あるちゅうぼっくす

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    「人の子よ、これをやろう」

    ツノ太郎と仲良くなってよく会うようになってから数ヶ月、突然手渡されたソレはブレスレットだった。とてもシンプルなチェーンに大きめのミントガーネットと言う宝石が付けられている。とても爽やかな宝石の色はツノ太郎の瞳の色を連想させる。綺麗だな、と思ったけどそれよりこんなに綺麗で大きな宝石がついているって言う事はもしかして…。

    「つ、つのたろ…これ…高いやつ…?」
    「気にするな」

    あっこれ高いやつだ。さすがに高いものは受け取れないと思いツノ太郎にブレスレットを返そうと手首についたブレスレットに手をかけると、それに気づいたのかユウの方を少し睨みつけるように目を向けられてしまった。

    「つのたろ」
    「僕からの贈り物は受け取れないと言うのか?」
    「いやあの、そういう訳じゃないんだけど」

    焦って否定する。そういう訳じゃなけれど、高いものは受け取れないというか受け取らない方がいいんじゃないかと思って皆から何か欲しいものを聞かれたりプレゼントされたりする時は必ずツナ缶とか、日常で使う消耗品を要求する。この世界からいずれ消えてしまうかもしれないと常に考えているため、色々と"残ってしまう物"は受け取らない事にしている。それはいくらツノ太郎であっても受け取れない。

    「つのたろ…」
    「気にするな、人の子よ。これはお守り代わりみたいなものだ」
    「ええ…」

    すっと綺麗なブレスレットを撫でる。
    これがお守り代わりだなんて。

    「お守り代わりなんて…」
    「目を離したらすぐ何かに巻き込まれているんだ、これくらいでもしないとすぐどこかへ行くだろう」
    「いやいやそんな子供じゃないんだから…」

    いや、よく考えたらこの世界に来てから色々巻き込まれたり色々なスキルが上がっているような気がする。なんなら軽い傷も怪我も増えたような。

    「片時も外すなよ、人の子よ」

    クククと喉を鳴らしながら、頭をくしゃっと撫でられた。一体何を考えているのか分からないけれどツノ太郎が言うなら仕方ないかなと流れに乗るように右腕の手首にブレスレットをつけたままにした。

    「さて、今日はどこから話そうか」

    温かい飲み物をすすりながら、今日もまた夜遅くまでガーゴイルの話や色んな書物の話をツノ太郎から聞いた。











    「…?」

    あれから数日経つが、自分でも引くくらい調子がいい。調子がいいと言うか回復力が凄いというか、怪我しても気がついた時には傷一つ残らず綺麗に治っている。体力作りの為の走り込みで躓いて膝を擦りむいた時も、ちょっとした切り傷も、全部いつの間にか治っている。
    おかしいな、なんて思うけどそういえば来た時に比べたら最近はツノ太郎のおかげで美味しい物を食べたり適度な運動や睡眠を取っているから人間としての機能が高まっているのかな、なんて変な感じに納得した。

    「ツノ太郎〜!おまたせ」

    ザクザクと土を踏む音を鳴らしながらいつものベンチに座っているツノ太郎の隣へと小走りで近づく。軽く挨拶をした後に、ツノ太郎から明後日は満月だと告げられた。何を突然満月だなんて。
    狼男じゃないんだから、知らされてもな。

    「明後日は部屋から出ない方がいい」
    「えっなんで?」
    「満月の夜は気が昂る奴が多くなる、何をするか分からないからな」

    お手製のホットミルクティーを水筒からコップへと移して、ツノ太郎に手渡す。

    「いくら僕のお守りがあるとはいえ、どこまで守れるかまでは分からない」
    「なるほど…?」

    昔から月には魔力が宿っていて、特に新月と満月にはそれに関わる大きなことが起こるとも言われていた。災害とか気の昂り、身体の作りなど、起こることは様々であり人それぞれでもある。
    そんな話を自分がいた元の世界でも聞いた事があるのをユウは思い出した。

    「…つのたろ」
    「安心しろ、何か怒っても僕が守る」

    優しい微笑みでライムグリーンの瞳はユウを見つめた。どこかで不安に思っていた心が不思議と落ち着く。ツノ太郎は凄いな、なんてつられてユウも優しく微笑んだ。

    「ありがと、ツノ太郎」
    「お礼は焼きおにぎり…?でいいぞ、人の子よ」
    「この間のやつハマったんだね」

    凄いなんて感心していたのに、途端にこれだ。まあなんと言うか、ツノ太郎らしいと言うか。
    とりあえず満月の時に部屋から出ないように気をつけよう。持ってきた夜食のクラムチャウダーをお供に、今日は星の観察をしながら時々それに関した神話や逸話、妖精の話を楽しみながら夜を過ごした。太陽が顔を出す頃には、夜を過ごすお供のクラムチャウダーもホットミルクティーもスッカラカンになっていた。うとうとと今にも閉じそうな目を必死にこじ開けて、持ってきたカバンに全部しまう。

    「ツノ太郎」
    「ん…」
    「朝、だよ 部屋戻ろう」
    「ああ…そうだな」

    ゆっくりと立ち上がったツノ太郎に、何度目かもう分からないけどまた頭を撫でられた。そんなに撫でやすいのだろうか。

    「じゃあ、言った通り満月の日には気をつけること」
    「うん!大丈夫、わかってるよツノ太郎」
    「…何かあったら僕の名前をすぐに呼べ、いいな人の子よ」
    「うん!よぶ!…またね、ツノ太郎」
    「ああ、またな」

    ふわりと笑うツノ太郎の表情と優しい声。何故か落ち着く香りが鼻をくすぐる。魔法で一瞬で移動するツノ太郎を見送ったあと自分も急いでオンボロ寮へ帰った。軽くシャワーを浴びて、乾かしてからふかふかのベッドにダイブする。

    「…ねむ」

    すっと落ちてくる瞼。今日は何かいい夢でも見られるだろうかなんて願うように思い、そのまま抗うことなく瞼を閉じて、眠りについた。途中、首元に痛みが走ったような気がした。けれど確認するために目を開けるのは面倒で、どうせ虫刺されだろう、放っておいていいや。





    「…人の子よ、名前を呼べと言っただろう」

    寝ているユウの呻き声が右から左へと通る。
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