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    いものひと。

    原神倉庫。マイペースローペース。ビビリのへたれの引きこもり。需要なんて知らぬ無駄な供給ヒャッハァ!書きたい時に書きたいだけ。文才なにそれおいしいの?アル蛍尊い蛍ちゃん至上主義ヌヴィフリもたまらん。にわかなので解釈違いやキャラ違いかなりあると思いますのでご了承下さい。何でも許せる方だけどうぞです。無断転載クレクレ等迷惑行為は私にも私以外にもご遠慮下さい。平和に静かに過ごしたい…。

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    POIPOI 13

    いものひと。

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    ドラゴンスパインでデートするアル蛍の話。また公式で冬近くにイベント来ませんか。

    light「はぁ…」
    悴む両手を擦り合わせると、蛍は息を吹きかける。一瞬だけ生まれた温もりは、ドラゴンスパインの冷えた空気によってすぐに元の冷たさに戻ってしまう。
    「使うといい」
    隣を歩くアルベドに差し出された放熱瓶を受け取り、礼を言って両手で包む。手のひらから伝わる熱はすぐに全身に伝わり、ほうっと息を吐いた。
    「オイラもオイラもー!」
    蛍の頭上で期待の眼差しを向けるパイモンにも、同様に放熱瓶を差し出す。「ありがとな!」と喜びながら受け取ると、抱きしめるようにしてパイモンも暖をとる。
    「アルベドは使わないの?」
    「僕は大丈夫。慣れているからね」
    確かに、彼はこの山に拠点を構えるくらいだから、どのような地形か、どのくらい冷えるかなど、理解も対策も万全なのだろう。いつもの服の上に防寒着を着た自分とは違い、アルベドは普段通りの格好なのも、そういうことなのかもしれない。
    それでも、蛍はアルベドの顔をじっと見つめた後、防寒着のポケットへと放熱瓶を仕舞うと、アルベドへと手を差し出した。
    「? なんだい?」
    「手、繋ごう」
    「?」
    「戦闘の時とかは駄目だけど、安全な所では手を繋ごう。
    そうすれば少しはあたたかいと思うよ」
    「…………」
    目をぱちくりとさせてから、アルベドは微笑んで手を取った。彼女の細い手をゆっくりと握ってみると、じわりと手袋越しに温もりが伝わってくる。
    「…本当だ。キミはあたたかいね」
    「アルベドのおかげだよ」
    再び放熱瓶を取り出して見せるのに、「…ああ、そうだね」と曖昧に答えを返す。
    「よし、オイラもアルベドを温めてやろう!感謝しろよな!」
    パイモンも、蛍とは反対側の肩にぴったりとくっついてみせる。放熱瓶の影響なのか、元々なのか、子供体温のような高い体温が服越しに伝わってきた。
    「二人とも、ありがとう。でも敵が来たらパイモンはすぐに隠れるんだ」
    「分かってるって!」
    「頼りにしてるよ、アルベド」
    「うん。キミのことは僕が必ず守るよ」
    「ありがとう。でも、私のことも頼って欲しいな」
    「ふふ。そうだね」
    「拠点まで行ったらお昼にしようぜ!オイラ腹減ってきたぞ!」
    「パイモン、そればっかり」
    「うるさいな、オイラはこんなにもアルベドあたためるのを頑張ってるんだぞ!」
    「はいはい」
    苦笑してみせてから蛍は歩き出し、「行こう」と繋いだ手を引いて微笑みかけた。
    眩しそうに目を細めて、アルベドも頷いて足を踏み出した。


    道中、絵の具に使えそうな鉱石を採掘したり、遭遇したヒルチャールを倒しながら拠点に辿り着くと、蛍とアルベドはパイモンに急かされながら昼食を作った。
    パイモンは大量の料理を平らげると、「オイラ眠くなってきたぞ…」と瞼をこすり空中で横になり、そのまま消えた。
    「パイモンは眠ると消える性質を持つのかな?」
    「うーん…よく分からないね。いつも一緒の部屋で寝るけど、その時は消えないよ」
    「…そう」
    少しトーンの落ちた声に疑問を持つが、すぐに微笑みながら「お昼も済んだことだし」と話しかけられて意識はそちらに向いた。
    「もう少し休憩したら、またこの辺りを探索するのかな?」
    「うん、そうしようかなと思ってるけど、アルベドは?」
    「ふむ。それなら、一緒について行っても良いかな?ここなら案内できると思うのだけれど」
    「良いの?」
    「キミが良ければね」
    「ありがとう」
    答えると、笑みを深めるアルベドに自分の頰も緩むのを感じた。
    それを誤魔化すように拠点を見回すと、実験器具や研究結果が沢山置いてあったりボードに貼られたりしているのは相変わらずだが、少し増えた研究結果の中に、以前協力した自分の記録が貼られているのを見つけた。
    「まだ貼ってるんだ」
    「ん?…ああ、キミの記録か。ここに来たら最初に見たいものだからね」
    「なんで?」
    「一番興味がある存在だからね」
    「……、でも、ここの人達と変わらない結果なんだよね?」
    「そうだね。
    けれど、複数の元素を使いこなすことや、浄化能力、モンドや他の国を救ってみせたりと、キミには興味深いことが多すぎる」
    「たまたまだよ」
    「そう言いながら、キミはこれから先も様々な能力を使ったり、他の国も救い続けていくんだろうね」
    「…そうできたら、良いんだけど…でも、私は…」
    言い淀む蛍に、分かっているという風に「でも、それはキミの旅の目的では無いよね」と続ける。
    「キミはキミの望む通りに進むと良い。
    そして、目的を達成した後は、僕もキミの兄に会わせて欲しい」
    「え?お兄ちゃんに?」
    どうして?と首を傾げる。
    「キミの兄がどんな人なのか興味があるという理由と、会わなければいけない理由がある」
    「会わなければいけない理由?」
    なんだろう?と益々首を傾げる蛍に笑いかけて、答える。

    「僕は、キミの家族に挨拶しないといけないだろう?」

    「!」
    すぐに言葉の意味を理解して、真っ赤になる。
    その様子に満足そうに笑うのを見て、蛍は「…揶揄ってる?」と赤い顔のまま半眼になる。
    「キミはどう思う?」
    問われて、答えに窮する。どう答えてもまた揶揄われそうだと思い、「…お兄ちゃんに興味って?」と質問に変える。
    「ん?…ああ、キミの家族だから、どんな人なのか興味があるし、キミと同じ力を持っているのだろう?とても貴重だし、良ければ話を聞かせて欲しいと思ってね」
    「また実験する?」
    「協力して欲しい気持ちもある。けれどやはり僕はキミに協力して欲しいかな」
    「………」
    その真意を探るようにアルベドを見つめると、目の前に光が弾けた。

    「ふぁー、よく寝た!そろそろ行こうぜ!」

    大きく伸びをしながらパイモンが現れた。
    気付けば、話している間にかなり時間が経ってしまっていた。パイモンに頷いて「アルベド、行こう」と声をかける。
    彼も頷き、周囲を見回してから「行こうか」と並んで歩き出す。

    「ところで、さっきの話。僕が本当に揶揄っていないのか、気にならないのかな?」

    蛍の耳元で囁くように問われて、どきりとしながら「…気に、しない」と答えた。
    その答えに小さく笑って、「聞いてくれて構わないのに」と見透かすように言われたので、そっぽを向いた。
    そうすれば、赤い顔を見られずに済むから。


    山頂に向かってみようと提案して、再び放熱瓶を準備して上へ向かう。後でお礼しないと、と考えながら進んで行くと、宙に浮かぶ円柱が見えた。
    「あれって、何なんだろう?」
    「僕も調べているけれど、まだ分からないことばかりだね。けれど昔、この地に何かがあった可能性があると考えているよ」
    「何か?」
    「国か、技術か、僕達の知らない人…もしくは人では無い何かしらの存在か。
    …世界には様々なものが存在するから、僕達が知らないものの可能性があるね。
    キミや、僕みたいに」
    「…………」
    寒さ対策に繋いでいた手を、ぎゅっと握りしめる。それだけで、彼は蛍の気持ちを察したように微笑んだ。
    「まだまだ山続いてるし、もっと上まで登ってみようぜ!」
    そう言ってパイモンは、空高く飛んで行く。それを追いかけようと、蛍もアルベドの手を引きながら歩き出した。


    ドラゴンスパインの頂上に辿り着くと、もう夜になっていた。
    吹雪の届かない、雲を突き抜けた頂上から空を見上げる。そこには満天の星が輝いている。
    「おおー!すごい綺麗だぞ!」
    「…本当、綺麗…」
    「ここは吹雪の影響が無いからね。乾燥しているからよく見えるんだ」
    「それに、これだけ高い山に来たんだ。星に手が届きそうだぞ!」
    またパイモンは空に向かって飛んで行くが、少しして「届かないぞ!」と嘆きながら帰ってきた。
    「残念だったね」
    「むぅ〜!もし星が取れたら、お前にやろうと思ったのに!」
    「そうなんだ…ありがとう」
    労うようにパイモンの頭を撫でてやると、「子供扱いするなよ〜!」と言いながらも嬉しそうに口元が緩んでいる。
    その様子を見ていたアルベドにふと目を向けると、蛍は空とアルベドを見比べて「あ」と気付いた。

    「アルベドの瞳って、星空みたいだね」

    「………?」
    急に言われても、自分の瞳は鏡を使わないと見えないし、アルベド自身も普段から身だしなみは気を付けていても、自分の容姿がどういう風とは考えていなかった。
    ましてや、自分の瞳が星空のようだと言われるとは考えもしなかった。
    「…んー、そうかぁ?星空はもっと暗い色だろ?」
    「そうなんだけど…ほら、瞳きらきらしてて星みたいだし、色は水色で夜明けの空みたいだなって。
    太陽が顔を出す直前の、星が隠れる前の空、みたいな感じ」
    「…………」
    きょとんとした顔のアルベドは、じっと蛍の瞳を見て、「キミは」と口を開いた。
    「キミの瞳は、月のようだね。夜の闇でも黄金に輝いている。
    けれど昼は太陽の輝きのように明るく眩い。
    どちらもとても綺麗だ」
    「!」
    ぼっと赤くなる蛍に、「キミが先に言ったのに」とくすくすと笑った。
    「…なぁ、オイラどっか行ってるか?」
    「! いい、行かなくて!」
    「ああ、頼んで良いかな?」
    「アルベドも冗談言わなくて良いから!」
    アルベドの返事を聞いてどこかに飛んで行こうとしたパイモンを、慌てて捕まえる。
    「おい!もっと丁寧に扱え!」
    「だって、どこか行こうとしたから…」
    「何だよ、二人の世界作ってるから気を遣ってやろうと思ったんだろ!」
    「二人の世界って…」
    「…………」
    アルベドは、照れながら苦笑する蛍とパイモンを見比べて、ふと思い付いたように口を開いた。
    「キミが太陽と月、僕が夜明け前、ならパイモンは夜空かな?」
    「…夜空か…ふふん、なかなか良いじゃないか…!オイラの瞳が夜空みたいにきらきらしてるってことだろ?」
    「深い闇ではあるけどね」
    「おい!失礼だろ!」
    そう言われて改めてパイモンの瞳を見てみる。確かに真っ黒な瞳にきらきらと星のような輝きが見えて。
    「…?」
    ぞくりとしたものを感じた。
    どこかで見たことがある気がして、………それは………。
    「ん?どうかしたか?」
    表情を暗くする蛍に心配そうに声をかけてくるパイモンにハッとして「…なんでもないよ」と答える。
    …思い出しかけたそれが消えたことに安堵しながら。
    「気分が悪いなら降りようか?」
    「え?…ううん、大丈夫」
    「そう。
    …そうだ、水筒に紅茶が入っているから飲むと良い。あたたまるよ」
    思い出したように水筒を取り出し蛍に差し出すと、礼を言って受け取り彼女は蓋を開き、口を付けた。
    「…ん。美味しい」
    あたたかい紅茶は熱過ぎず、内側からぽかぽかと全身をあたためてくれる。
    「良かった」
    もう一口飲んでから蓋を閉めてアルベドに返すと、彼も蓋を開けて口を付けた。
    「!」
    自然な動作に一瞬遅れてから顔を真っ赤にした。
    慌てる蛍にアルベドは微笑んで「紅茶より効果あったかな?」と言ってくる。
    「……やっぱオイラ、どっか行ってるな」
    言うが早いか、パイモンは蛍が止める間もなく光を残して消えていった。
    「……パイモン……!」
    赤い顔で恨みがましく消えた虚空を見つめていると、アルベドが背後で笑う気配がした。
    「…また揶揄ってる?」
    「どうしてそう思うのかな?」
    心外だとばかりに首を傾げるアルベドを睨む。だが彼は微笑むばかりで、不信は募るばかりだ。
    「寒くないかな?」
    「…お陰様で」
    皮肉を込めて答えると、「それは良かった」と返される。
    「ところで、僕はまだ体が冷えてしまっているようなのだけれど」
    「………え?」
    「少しだけ、失礼するよ」
    そう言うとアルベドは、蛍の体をふわりと抱きしめた。
    「………えっ!?」
    唐突のことに、数秒経ってから大声を上げた。澄んだ空に響いた気がして、二つの意味で恥ずかしくなる。
    「うん。やはりキミはあたたかいね」
    「…あ、アルベド…!?近い…!」
    行き場を求めるように両手をわたわたと動かしながら身動ぎする。けれど回された腕は離れることは無い。
    「…伝わったかな?」
    「………え?」
    「僕の気持ち。伝わったかな?」
    言葉の意味を理解して、どきりとする。けれど羞恥から「…さ、寒いの…?」と先程の言葉を思い出して訊ねる。
    「…………ふむ」
    少し考えるような間を置いてから、アルベドは再び言葉を作る。
    「言葉では伝わらないようだから、態度で示してみたけれど…うまく伝わらないものだね」
    難しいな、と呟いてまた考えているのか、そのまま抱きしめ続けている。
    冷えたといいながらも寒がっているようには見えない。その意味を考えて、一度目を閉じてから、蛍は口を開いた。
    「……それなら」
    そっとアルベドの背に手を回して、ほんの少しだけ、勇気を出した。

    「……それなら、もっと分かりやすく…示して」

    少しだけ体を離して見つめると、夜明けの星と月がぶつかる。やっぱりきらきらしていて綺麗だ、とお互いに見惚れていると、どちらともなくゆっくりとそれらは隠されていき。

    静かに、唇が重なる。

    離れがたいと彼女の体を抱きしめる腕と。
    縋るように彼の服を握りしめる手と。
    どちらが先か、二人にしか分からない。

    吹雪の届かない空の下。
    二人を祝福するかのように、流れ星が一つ流れていった。


    「…気持ち、伝わったかな?」
    「………」
    「…難しいな」
    手を繋ぎながら山を降りる道中の問いかけに、蛍は顔を伏せる。
    耳まで赤くした横顔を眺めながら、アルベドは微笑んでいる。
    「おーい!」
    拠点まで戻るとパイモンが手を振っている。どうやらここで暖をとりながら待っていたようだ。
    「やっと降りてきたな、早く帰って夕飯食べて寝ようぜー!」
    腹減ったぞ、といつものように主張するのに、そういえばもう大分遅い時間だと気付いた。
    「キミと過ごすとあっという間に時間が過ぎていくね」
    先程の時を思い出したのと、同じ事を考えていたのに、また頰が熱くなる。それに気付いたのか小さく笑う声が隣から聞こえて、そっぽを向いた。
    「おい!オイラはもう譲らないからな!早くしろよ!」
    「分かっているよ」
    「ならすぐイチャイチャすんな!それよりご飯が先だろ!」
    「イチャイチャしてない!」
    「自覚無しかよ!」
    思わず反論するとパイモンは目を丸くした。
    (してない筈!だってまだ付き合ってないし…!
    ……………まだ?)
    自分の考えに混乱し始めていると、不意に手を取られ。

    「また、キミと二人きりで過ごしたいのだけれど。
    良いかな?」

    アルベドに恭しい仕草で問われてしまい、固まった。
    「だーかーら!早くしろー!」
    またパイモンに怒られながらも。
    ………辛うじて、アルベドの問いに。
    頷いた。
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