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    kokutani

    絵置き場

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    kokutani

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    自カプを間接的に目撃する「顕」の妄想文。ニアラ亻前の村人視点のト(ム) not夢

    パンが硬いなら、スープに浸して食べよう。(パンが浸してあるとろとろに煮込まれた玉ねぎのズッパを飲みながら、故郷を燃やされ火事の中で己の親をそこに置いてきたままにしてしまったブロンドクラン夕の労働感染者の人格(性別はいとわない)を顕してとあるギルドリーダーの村に助けてもらったときに飲んだスープとして味わったことをここにまとめます。)

    焚き火を囲みながら「なんの役に立てなくても腹は減るものなんですね」と呟くと剣だこが出来た手で背中を叩かれて「食える時に食っときな」明日から働いてもらうぜと着古した外套をたなびかせ己の恩人は自分のテントに戻って行ってしまいます。
    遠くに置いてきてしまった家族を思い返しながら、視線を下に戻すと分けてもらったスープの中に先程まで無かった硬いパンが入っていることに気が付いたその瞬間に泣き崩れてしまいたい。

    数ヶ月後、村にトランスポーターが来てこの村に「トーランド・キャッシュ」という男は居るか?と聞きます。
    いつものように数人の仲間から頼まれ事をしている彼を呼んだ後、カラッとした笑顔で見慣れない客人と挨拶を交わすのを確認して先程まで行っていた作業に戻ろうと斧を持つと見たことの無い表情のリーダーが目に映りました。手に持っている小綺麗な封筒には金の蝋で双頭の馬を模した紋章が付いていました。集中力の切れたような笑いで配達員とのやりとりを済ました彼から目が離せなくなります。自分の中で嬉しさを噛み締めるような、飲み込むのも惜しいくらいに愛おしむそれは長い年月さまよっていた旅人がやっと故郷の味に辿り着いた様な吉報の微笑みでした。
    あの手紙には何が書いてあったのでしょうか。
    村人たちの輪に戻っていった彼が両手を合わせて仲間たちの前で謝りだしたところでふと我に帰ります。置きっぱなしだった斧を持ち薪割りに戻ります。気が付けばすぐに夕飯の時間になりました。
    みんなのリーダーが何かを全体に報告しましたが、薪が炎で燃えるときのぱきぱきとした音しか聞こえません。隣の女の子が「すこし寂しいな」と一言零したのを聞かなかったことにして自分はスープに手をつけます。自分がはじめてこの村に来た時に飲んだものより塩辛くそれはそれは身体中が乾いて仕方がないくらいの味でした。横目にリーダーを見ると焚き火に照らされた顔はいつもよりも柔らかく笑っていました。
    リーダーが出発する準備を終えたのは早朝でした。水を汲みに行った帰りに数人の村人達に指示を出す彼の背中が見えましたがそこに駆けていく勇気はありません。荷物を下ろした後に突然現れた彼に声をかけられてしどろもどろになります。「水を一杯でいいからくれるかい?」と笑う彼の前髪は朝風に揺れて、バケットいっぱいの水が湖面のように彼を優しく照らしていて誰かに歓迎されているかの様でした。
    数人に見送られた彼が誰に呼ばれたのか、いつ戻ってくるのかは分かりません。頭領が居ない村ではみな普段より団結しなければならないので、気合いを入れるために冷水で顔を洗います。
    私が汲んできた水が彼を潤してもそうでなくても構いません。自分が斬った薪が彼を照らしても照らさなくても、それに気が付かれなくたって良いのです。でも彼が本当に手伝ってやりたい人がいるのなら、その人は彼の愛情にどうか気がついてあげてください。と、腫れた目を冷やしながら私はそう祈りました。
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