最後に頭を撫でられたのはいつのことだったろうか。
目覚めと眠りの間を揺蕩う、ここちよい感覚に満たされていると、ふとそんなことを思った。
ふわふわとした心地の中、浮かんだ疑問は泡のように消えていったのに、消える頃になってあたたかな温もりが頭に触れる。
その心地良さに、息を吐き出すと、頭に触れていた手がゆっくりと髪を撫でていくのを感じ、夢見心地だった意識が急速に現実に引き戻されていくのが分かった。
「……なに、してるんです」
瞼を押し上げると、目の前には秋の湖を思わせるような、榛色が見えた。
感情を押し殺した声は、数時間ぶりに言葉らしきものを発したせいか、酷く不格好に掠れて響く。
「つれないね。ベッドの中ではあんなに素直なのに」
984