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    albatrosstale11

    刀剣乱舞は刀×女審神者の夢小説置き場

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    albatrosstale11

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    🎀→さに。明るくはない

    酔う「大丈夫かい?」
    執務室を訪れると、主人が机に突っ伏していた。思わず肩を叩くと、徐に起き上がる。いつもより、とろんとした目が俺の顔を見る。
    「大般若だぁ」
    主はいつもより、幼い表情をしていた。様子が変だなと首を傾げていると、机の上に仰々しい箱を認める。大きさは文庫本ほどだが、その包装は、まるで。
    「日本酒みたいだな」
    「そう、日本酒入りのチョコ。甘いの好きならあげる」
    眠そうな声で、主人はチョコレートの入った箱を俺に押しやった。ひとつつまんでみると、つんと日本酒が鼻を抜ける。チョコレートは口当たりが軽く、甘すぎず、ついもうひとつ、と手が伸びそうになる。
    「うまいな、これ」
    「そう、おいしくて、ぱくぱく食べてたら酔っちゃって」
    でも消費期限が近くなっててね……、とむにゃむにゃ、主人は言う。笑いが込み上げた。
    「あんた、それで酔っちまったのかい」
    「そう、でも気持ち悪くはないんだよ」
    ふわふわしてるだけ、と主人は言って、ふわりと笑った。頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を伏せる。
    「これはバレンタインとやらのチョコなのかい」
    「そう、自分用」
    「ほう」
    もう日付は過ぎていたが、確かそんな行事もあった筈だ。執務室のウォーターサーバーで白湯を作りながら、大般若長光は壁に貼ってあるカレンダーに目をやる。豆まきに追われ、やっとひと息ついた頃だったように思われる。
    「あんたには、想いびとはいないのかい」
    「いないよう」
    主人はふにゃりと笑って礼を言い、白湯を受け取った。ひとくち飲んで、ほうとため息を吐く。
    「私は……好きなひとがいたら、花火とか、イルミネーションとか、流れ星とか……綺麗なものを一緒に見たいなあって思うんだ。それだけいいから」
    「ほう?」
    「つまんないでしょ」
    「そんなことはないさ」
    ──そう、言われたことでもあるのだろうか。それとも、今までに彼女が好いたひとは、それほど彼女を想わなかったか。
    「それで、どうでもいいひとになりたいの」
    その言葉には、思わず笑ってしまった。日本酒入りのチョコレートの酔いはなかなか、さめないらしい。白湯より冷たい水がよかったか、と今さら思う。
    「ふつう、誰かにとって、かけがえのないひとになりたい、と思うんじゃないかい?」
    「ふふ、そうかもね」
    主人は白湯を飲み干して、目を伏せた。俺の知らない、或いは知っている誰かに、想いを馳せているのだろうか。
    「窓、開けていいかい」
    「うん」
    窓を開けるなり、吹き込んできた夜風が頬を撫でる。喉が痛むような冷たさだったが、心地よい。振り返って見たが、主人は目を開けない。眠ってしまったのかもしれない。
    「──やわらかな陽の射す日も、冷たく雨のそぼ降る日も、吹き飛ばされそうな風の日も、雪の降りだす前の曇天の日も、どんな時でも、俺はあんたといたいと思うよ」
    だから、俺が言った言葉は、聞こえていなかっただろう。それでいい、と思った。彼女のこぼした涙が乾いてから、俺は窓を閉めた。
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