目が眩むほどの「主! 行こうぜ!」
朝陽かと思ったら、獅子王の髪だった。空はまだ暗く、本丸はまだ寝静まっている。寝間着に上着を引っかけて出かける、なんて本当に映画のワンシーンだ。
「獅子王、よく起きたね……」
「へっへっへー」
がちゃがちゃと音を立てながら、獅子王は乗れるようになったばかりの自転車を引っ張り出す。
「さ、後ろ乗ってくれ!」
──先日、獅子王と一緒に映画を観た。青春映画だ。進路に悩む女の子が主人公。出会ったときは憎らしかったはずの男の子と、猫や音楽や趣味を通して心を通わせる。男の子は夢がすでに決まっていて、女の子は焦りながらも自分のやりたいことを探すために前に進む、そんな話。
好きな映画だから、獅子王も気に入るといいな、とは、確かに思った。でも、獅子王は私が思ったよりもはまってしまい、その映画のラストシーンを私と真似したい、と言い出すまでになるとは思わなかった。
1955