【原兄ちゃんの孤独じゃない日常】①『第1話:いつの時代も老若男女に愛される男』
~休日の昼過ぎ、駅前広場にて~
原「(映のやつ遅いな···。約束の時間を過ぎたぞ…)」(チラリと腕時計を見る)
モブ男「やぁ、そこの君。ちょっと良いかな」
原「ん 僕ですか」
モブ男「もちろん」
原「あの、道に迷ったとかなら、すぐ近くに交番がありますよ」
モブ男「あぁ、違う違う。いやね、君···、モデルの仕事って興味ある」
原「はい…(何だか面倒くさそうな人に絡まれたな…)」
モブ男「君を一目見てピンと来たんだよ〜 そのクールな表情やルックス、そして惹き付けられる独特なオーラ…。 モデルとして相応しい素質があるってね… ぜひうちの事務所で、働いてみないかい」
原「(なるほど、ただのスカウトか…) すみません。僕、既にアルバイトを掛け持ちしていますし、普段は大学の講義もあるので…」
モブ男「まぁまぁそう言わず 軽く話を聞いてくれるだけでも良いからさ〜」
映「彼にそんな事をしている暇は無いですよ。これからぼくとデートなんですから」(モブ男の背後から現れる映)
モブ男「ん… 悪いけど今立て込んでて──」
原「こちらは貴方に用はありません。連れが来たので、失礼します。…行くぞ、映」
映「うん、待たせてごめんね」
モブ男「あっ、ちょ、ちょっと 連絡先だけでも…」
原「──何度も言わせるなよ、おっさん。これから僕達は用事があるんだ。さっさと失せてくれないなら、警察呼ぶぞ」(ギロりと睨む)
モブ男「うっ…」
――――――****――――――
原「なぁ、映。一緒に映画を観に行くだけであって、デートじゃないだろう…。変な勘違いされたらどうするんだよ」
映「え〜 ああいう時って、恋人のフリして割り込むのが鉄板じゃないの」
原「はぁ…。ドラマとかの見すぎだろ、それ。そもそも、お前が待ち合わせ場所に時間通りに来ていれば、僕はあのおっさん達に絡まれずに済んだかもしれないんだぜ」
映「ごめんってば〜。駅の出入り口を間違えて、道に迷ってしまったんだよ…。ところで、“達“って今言ったけど、他にも何かあったのかい」
原「……女子高生グループに逆ナンされて、地獄だった」
映「うん…、それは災難だったね…。遅れて本当にごめんなさい…」
原「反省しているなら良い。ただし、今度一緒に出かける時、飯代はお前の奢りだな」
映「うぅっ…、わかったよ原くん…」
原「いや、今のは冗談だったんだけど…。まぁいいや。この話はもうおしまいだ。さぁ、映画見に行くぞ」
[完]
〈おまけの補足〉
・映スナはテレビドラマや多ジャンルの映画鑑賞が趣味で、今回映画を見に行こうと誘ったのは映スナの方です。ちなみに高校生。
・原スナは普段物静かで、ほぼ無表情なクール男。本人が冗談のつもりで言ったことを周りは真に受けてしまう、喜怒哀楽が分かりにくいタイプ。怒ると口調が荒っぽくなり、元から低い声もさらにトーンが下がるのでそこは分かりやすい。
なお、大好きな父ヨクサルの話題を振られると弾丸トークが止まらなくなる生粋のファザコン(笑)